2009年4月号
単発記事
医療現場のニーズ吸い上げ、機器を開発
顔写真

山脇 憲一 Profile
(やまわき・けんいち)

神戸バイオメディクス株式会社
管理部 主幹


医療機器販売会社の神戸バイオメディクス株式会社(神戸市)は、地域の「医療用機器開発研究会」に参加していた企業などが共同出資で6年前に設立した。特徴は医療現場のニーズを吸い上げ、それを機器開発に生かしていること。具体的には同社がニーズを収集し、その中から市場の見込めるテーマを絞り、開発企業を募って選定している。

はじめに

当社(神戸バイオメディクス株式会社)は、神戸市がポートアイランドで推進している「神戸医療産業都市構想」に呼応して設立され、本年6月に7年目に入る。事業の現状、課題を紹介する。

設立経緯

「神戸医療産業都市構想」は、構想着手から10年。その取り組みの中で、社団法人神戸市機械金属工業会が平成11年11月「医療用機器開発研究会」を発足させた。研究会の主な活動は、薬事法や医療産業についての勉強会の開催のほか、先端医療センターの研究者や神戸市立医療センター中央市民病院の医師や医療関係者から医療機器開発に関するニーズを収集するヒアリングを実施し、寄せられたテーマを基に、神戸市の補助金制度を活用しながら研究開発を進めること。

そのような中で、医療機器に関する情報収集・研究開発・マーケティング・販売機能などの強化を図るため、平成15年6月に医療用機器開発研究会の会員企業が中心となり、共同出資で設立した医療機器の販売会社が「神戸バイオメディクス株式会社」である。

当社の事業展開・製品開発
図1

           図1 神戸バイオメディクスの
               連携ネットワーク
              (産・学・官ならびに医・工連携)

当社の事業運営は、医療現場のニーズを当社会員企業に情報として発信し、そのニーズを製品化する企業を募り、発注企業を決定する。研究開発等で時間や開発資金を必要とする内容の場合、補助金の応募や研究開発の取りまとめを当社が幹事企業として行い、開発企業と共同で製品化を進めていく(図1)。

これまでに開発した製品としては、非磁性手術用鋼製器具をはじめ、後述のKBMガットクランパー(腹腔鏡下手術用腸管結紮器)、KBMイーコレ(形状保持クッション)、KBMツイストドリル(整形手術用ドリル)、KBMペクタスフック(漏斗胸手術器具)、スキャンサポートパッド(MRI用画像診断補助固定具)等がある。

当社の製品開発方法の特色

当社の母体である「医療用機器開発研究会」の会員企業は、重厚長大産業の造船・鉄鋼等の下請け企業が多く、最新の加工技術や豊富なノウハウを有し金属加工を得意とする。

医療現場のニーズを、当社会員企業の持つシーズに組み合わせ製品化を行っている。会員企業の特性から、研究開発から行う企業と製造のみに専念する企業に分類登録して、案件に応じて対応している。1社で困難な場合には、複数の企業でそれぞれ役割を決め研究開発を行う場合もある。いずれの場合も、当社が幹事会社となり事業の取りまとめを行っている。

KBMガットクランパーの開発について

本品の開発は、平成16年3月神戸大学医学部から「腹腔鏡手術デバイス」の開発ニーズがあるとの連絡を受け、発案者の医師から直接お聞きしたのが始まりである。

当社内の運営委員会で開発担当企業を株式会社大野社に選定し、以後神戸大学、大野社、当社間で、開発資金、特許の件を協議しながら、研究開発を進めた。

開発資金は、当社が幹事会社となり、神戸市の補助金(神戸医療・健康・福祉分野開発研究費補助金事業)に応募し、半額を補助金で賄うことができた。特許は、神戸大学、大野社、当社の3社で共同特許出願契約書を締結し、平成16年9月24日出願、平成20年3月7日成立した(特許第4090058号)。

写真1

写真1 KBMガットグランパー
     (製造元:株式会社 大野社)

製品開発は、製造元の大野社が中心となり、試作品で医師の評価を受け改良を重ね、ようやく製品化のめどが立つのに1年余り要した。その間滅菌処理については、γ滅菌が最適であると判断し、滅菌業者と交渉を行った。

このほか、医療機器の販売には薬事法の許可が必要であるので、当社は平成18年5月、高度管理医療機器等販売業許可を受け、平成18年11月、初の自社ブランド製品として「KBMガットクランパー」の発売を開始した(写真1)。製造元の大野社は、平成18年2月に医療機器製造業許可を得ている。

今後の展開

当社の特徴は、医療現場のニーズを収集し、その中からマーケットのあるテーマを絞り、開発企業を選定すること。その上で、産学連携で研究開発を行い、製品化していく。こうした製品開発の方法は、大変有効な手法であると考える。ただ、有効に機能するには次のような課題がある。

忙しい医療現場の中からニーズを収集するにはマンパワーが必要
マーケットがあるかどうかの判断には、長年の経験を要する

当社会員企業の大半は、新薬事法に対処し必要な人材や社内管理体制を整えるのは大きな負担となっているので、当社が会員企業の窓口として新薬事法の製造販売業許可を取得し、会員企業は製造に専念するという仕組みの実現を目指している。

その方針の一環として、当社は平成20年3月第三種医療機器製造販売業許可を取得した。今後は、社内体制の整備を図り、第二種、第一種とステップアップを計画している。