2009年5月号
特集  - 育て新人 コンテンツ産業新潮流
東京都がアニメ産業強化 人材育成で大学に期待
顔写真

布川 郁司 Profile
(ぬのかわ・ゆうじ)

株式会社ぴえろ 代表取締役



アニメーションのプロダクションが集まる東京。産学官の連携が活発になっている。特に、東京都は東京の情報発信力を高める産業と位置付けて、さまざまな支援を行っている。今年8回目の東京国際アニメフェアの意義は?

世界の子どもたちに愛されている日本のアニメーションとそのキャラクター。東京はその文化的な情報発信力だけでなく、アニメ作品のビジネスの舞台としての存在感を増している。その中心が、東京都の支援で実現し、今年8回目を迎えた東京国際アニメフェアだ。同フェアが果たしてきた役割、大学など研究教育機関との連携の可能性などについて、アニメプロダクションの株式会社ぴえろ代表取締役で、有限責任中間法人日本動画協会副理事長の布川郁司氏に聞いた。同社が今まで制作した主な作品は「ニルスのふしぎな旅」「うる星やつら」「魔法の天使 クリィミーマミ」「平成天才バカボン」「魔法のスター マジカルエミ」「きまぐれオレンジ・ロード」「あんみつ姫」「幽☆遊☆白書」「みどりのマキバオー」「NARUTO -ナルト-」「BLEACH」などである。

——例年、東京国際アニメフェアでは「見本市」、クリエイターが作品を競う「コンペティション」、そのほかさまざまなイベントが行われています。3月18~21日に東京ビッグサイトで開催された第8回フェア(実行委員長:石原慎太郎東京都知事)はどうでしたか。

布川     フェアは18、19の両日は商談を行うビジネスデー、後半の2日は一般の人に楽しんでもらうパブリックデーとなっています。今年の見本市には海外からの56社を含む255社が出展しました。4日間の入場者は約13万人でした。

——東京都は「東京都産業振興指針」(2007年12月)の中で、コンテンツ産業やファッション産業を東京の情報発信力を高める産業と位置付け、世界をリードする人材の育成を打ち出しています。アニメフェアを2002年にスタートしたとき(当時は「新世紀アニメ博」)は観光振興も大きな狙いだったようですね。

布川     当初は観光という狙いもありましたが、石原知事に決断してもらったことは良かったです。一昨年の第6回フェアまで事務局を東京都にやっていただきました。プロダクションの90%近くは東京に集まっています。産業の規模としては大きくないかもしれませんが、確かに情報発信力は小さくありません。アニメーションの日本を世界に知ってもらうきっかけになりました。日本のアニメのスケール、関連産業のすそ野が広いことをアピールできました。この4、5年はビジネスの舞台としても定着してきました。

——これまで世界のアニメビジネスはどこで行われていたのですか。

布川     国際映画祭で有名なフランスのカンヌで毎年春と秋に開かれているMIPというテレビ番組の見本市です。ここでアニメ作品も取引されています。東京国際アニメフェアが定着してからはアニメ作品取引の中心がカンヌから東京に移りました。同フェアの意義は極めて大きいです。

——業界の課題は。

布川     フェアの成功の次は人材育成でしょう。産学官連携で制作した「アニメの教科書」もその1つの取り組みです。プロダクションの技術系スタッフの多くは専門学校の出身です。ビジネスモデルをつくれるプロデューサーを育てるのが業界の役割ですし、東京と地方のギャップを埋めることも重要です。地方で活躍するクリエイターが増えることが日本のアニメの足腰を強くします。地方の大学にはコンテンツビジネスと連携しているところがあります。私自身、東北芸術工科大学客員教授として学生たちを指導しています。しかし、東京はこうした産学連携がまだまだです。人材育成で大学の研究成果、教育に期待するところが大きいです。

——貴社は昨年、創立30周年だったそうですね。

布川     その間、制作したテレビタイトルは70を超え、30分の番組の数は3,000本以上になります。映画も20タイトルを上回る作品を制作してきました。それらの作品は国内だけでなく海外にも多く放送されており、現在制作している「NARUTO -ナルト-」は30カ国近い国で大反響をよんでいます。今後も独創的で、時代を映し、それに対応した作品づくりを目指していきたいです。


——ありがとうございました。


聞き手・本文構成:登坂 和洋(本誌編集長)