2009年5月号
特集  - 育て新人 コンテンツ産業新潮流
京都で産学官の連携 映画産業振興と撮影所を活用した人材育成
東映、松竹の撮影所がある京都で、映画会社、京都府、大学の連携によりさまざまな地域振興策、映画人材育成の取り組みが行われている。リニューアルした松竹京都撮影所には立命館大学映像学部の学生用の施設もあり、4月から映画づくりを学んでいる。

松竹京都撮影所に立命館大学生用のスタジオ、編集室
4月から「京都太秦恋物語」撮影の授業

京都府、立命館大学と連携した松竹京都撮影所(京都市右京区太秦)*1のリニューアルが終わり、産学官(公)連携による人材育成、映像技術の研究が平成21年4月1日より本格的にスタートした。それに先立ち、3月10日、同撮影所で竣工式・レセプションが行われた。

今回のリニューアルでは、クライアントであるプロデューサーの利便性に重点を置いた。従来の6つのスタジオに加え、新たにスタジオ2棟を増設し、併せて最新鋭のデジタルプロジェクターを装備した試写室の新設、IMAGICAウェストの誘致などにより、撮影から編集作業、試写までを一貫して行うワンストップサービスを提供できるようにした。また、同時に立命館大学映像学部の学生用の施設として実習用スタジオ2棟と、教室、編集室を設けた。

松竹グループ、立命館大学、京都府は平成19年9月に産学公連携を発表。松竹と立命館大学の連携の柱は[1]山田洋次監督の映像学部客員教授就任 [2]デジタル分野の共同研究 [3]松竹グループでのインターンシップ実施 [4]京都撮影所内への立命館実習施設の設置 [5]撮影機材の貸与、講師の派遣・あっせんなど実習協力―の5つ。発表以来、上記の[3]や[4]を推進してきた。京都府は19年8月、映画関連産業の集積促進計画を策定。企業立地促進条例に基づいて、松竹京都撮影所リニューアルに平成21年度立地補助金を交付予定であり、松竹・立命館の産学連携を支える。

[1]については、昨年4月から山田洋次監督監修による「京都太秦恋物語」(仮題)のシナリオの授業を行い、今年4月からは撮影の授業に移っている。また、松竹京都撮影所では、[5]の窓口として専従者1名を置いた。

さらに4月18日公開の映画「鴨川ホルモー」(配給:松竹)のキャラクター商品(劇場販売グッズ)の企画・製作を、立命館大学映像学部の学生と松竹の担当者が共同で行い、最終的に「あぶらとり紙」を商品化した。

京都府などがベルリン映画祭タレント
キャンパスと提携し、若手作家育成
写真1

時代劇班の撮影風景

京都府は、松竹、東映、ドイツ文化センター、京都文化博物館等と連携して、映画振興に力を入れている。昨年9月、若手映像作家たちを対象に京都市内の撮影所などでシナリオや演出、撮影を学ぶ機会を設けた。この催しはドイツのベルリン国際映画祭タレントキャンパスと提携したもので、参加者の中から2人を国際的な若手育成プログラムである同映画祭タレントキャンパスに派遣した。今秋も同様の企画を行う。世界に通用する若い才能を発掘・育成することで京都の映画文化を再構築しようという戦略だ。

産業規模縮小への危機感が動かす

松竹京都撮影所竣工レセプションのあいさつで、山田啓二京都府知事は次のように語った。

「文化産業の粋である映画をつくり続けてきた松竹京都撮影所が、撤退するのではないかという危機感がわれわれを動かした。それを維持できたばかりか、新しい撮影所は映画人育成の拠点にもなる。人を育てることができるのは素晴らしいことである」

10年前に5,000~6,000人いた太秦周辺の映画関連産業従事者は現在、1,800人程度まで減少しているといわれる*2。行政にとって放置しておけない問題だ。映像の世界でも東京への集中が進んでいることや、デジタル化が背景にあるようだ。こうした危機感が、次世代の映画産業活性化を目指す産学公そして住民との連携へと突き動かしているのである。

プロの監督の指導で撮影の実習

昨年9月13~15日に実施したこのプログラムの名称は「若手才能育成ラボ」。全国から応募のあった30人の中から18人を選び、3班に分かれて映画制作の現場で学んだ。時代劇は2班に分かれ、松竹撮影所の長屋セットと居酒屋セットで、ドキュメンタリー班は東映撮影所内スタジオでそれぞれ実習した*3。夜は京都西陣町家スタジオで合宿形式のセミナーを行った。

参加者からは「京都開催がよかった」「世界に向けて公募すべき」といった声があり、指導者からは「よい作品をつくる心を持つことを覚える」「京都の撮影所やプロの職人の持つ力を感じてほしい」という評価があった。

この実習に参加した斉藤勇貴さんと深田祐輔さんが、今年2月に開催されたベルリン映画祭の「タレントキャンパス」に参加した。100カ国を超える地域から集まった350人の若い映画作家を対象に、国際的な映画監督によるレクチャーや参加者同志のネットワークづくりなどのプログラムが実施された。

京都府は「若手才能育成ラボ」や海外の映画祭などとの連携を通じて、映画人材の育成の機運を醸成したい考えだ。また、京都市内の大学には、相次いで映画・映像に関する学部・学科が新設されており*4「平成21年度は大学や映画関連企業などで『映画人材育成会議』(仮称)を組織し、産学公連携で若手クリエイター、映画職人の養成・育成の取り組みを軌道に乗せたい」(商工労働観光部ものづくり振興課)という。

(登坂 和洋:本誌編集長)

*1
法人名は「株式会社松竹京都撮影所」

*2
東映、松竹などの京都における映画映像制作業、具体的には制作、美術、技術(セット、照明)、編集、音響、衣裳・メーク・結髪などの業界が縮小している。また、観光拠点になっている東映太秦映画村は全国のテーマパークなどとの競争が激しくなっていて、その周辺の観光、物販、飲食、交通などに影を落としている。

*3
指導者は次の通り(当時)。
時代劇班1:井上泰治監督(水戸黄門監督、東映中心に活動)
時代劇班2:石原興監督(必殺シリーズ監督、松竹中心に活動)
ドキュメンタリー班:バウダー監督(ベルリン・タレントキャンパスOB)
その他: 東映・松竹 助監督、役者、照明、美術担当の協力
セミナー:林海象監督(京都造形芸術大学映像学部長)
舩橋淳監督(米国在住、タレントキャンパスOB)

*4
京都精華大学芸術学部メディア造形学科映像コースが18 年4月開講、立命館大学映像学部映像学科、京都造形芸術大学芸術学部映画学科、京都嵯峨芸術大学芸術学部メディアデザイン学科の3つが19年4月開講