2009年5月号
特集  - 育て新人 コンテンツ産業新潮流
行政のさらに大きなアクションに期待 企業の自立的な経営の上に連携
顔写真

日野 晃博 Profile
(ひの・あきひろ)

株式会社レベルファイブ
代表取締役社長


福岡を世界的なゲーム産業の拠点にすることを目指している産学官(ゲーム企画・制作・販売会社、九州大学、福岡市)の連携組織「福岡ゲーム産業振興機構」の委員長は株式会社レベルファイブの日野晃博社長。福岡の魅力、大学や行政との連携の意義についてインタビューした。

写真1

     レベルファイブ初のパブリッシャー作品「レイトン教授」シリーズ。国内外累計出荷本数368万本を越える
          大ヒット作となった。

福岡市に本社を置き、ゲームの企画・制作・販売を手掛ける株式会社レベルファイブは、ゲーム文化の草創期に大ヒットした「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」を開発したことで知られ、現在「レイトン教授」シリーズなどヒット商品を送り出している。日野晃博社長は、九州・福岡のゲーム会社の団体GFF(GAME FACTORY’S FRIENDSHIP)の会長、また、産学官(GFF、九州大学、福岡市)で組織する福岡ゲーム産業振興機構の委員長を務める。福岡を世界的なゲーム産業の拠点にしようという運動の先頭に立つ日野社長に大学、行政との連携などについて聞いた。

——GFFをつくった理由は?

日野   福岡市のゲーム企画・制作会社は、かつては統一して何かをやるということはありませんでした。福岡のゲーム会社をPRするため、2003年に株式会社サイバーコネクトツー、株式会社ガンバリオンと当社の3社で初のイベント「GAME FACTORY FUKUOKA 2003」を開催しました。通常1社で行うイベントを「福岡をゲームのハリウッドに」を合言葉に、3社で協力して開催することでインパクトを出しました。

——東京一極への集中が進んでいますが、ゲーム企画・制作では福岡は集積地です。

日野   東京と比べると、時間の流れは比較的ゆったりしている半面、福岡には適度の都市機能があり、住みやすい土地です。大半の従業員は会社から20分前後のところに住んでいて、満員電車にもまれることもありません。環境からくるストレスが少ないことは、ゲームづくりに良い影響を与えています。

——福岡でマイナスを感じたことはないですか。

日野   モノをつくったり、研究するのに何の問題もありません。むしろ、創造的な仕事をするのに福岡はいい環境なのではないでしょうか。個人的に仕事上、福岡-東京間を行ったり来たりしなければなりませんが、東京は好きな都市だし刺激もあるので、仕事にはとても適しています。

——産学官連携の効果は?

日野   「官」が「ゲーム」というコンテンツに非常に協力的になってきました。行政がさらに大きなアクションを起こしてくれることを期待しています。現在のような産学官による地道な活動を続けていけば、大きな成果が出そうな予感があります。大学との連携として、人材面では期待していますが、まだ商品をつくる上でのコスト意識において、大学と企業の間に大きな隔たりを感じますので、これをどう調整していくかが1つの課題です。

——「福岡ゲーム産業振興機構」は人材対策に力を入れているようですね。

日野   当社は、昨年は募集の告知をしなくても1,200 ほどが訪れました。

——―貴社はゲーム業界の大手で、昨年3月からJリーグ2部(J2)に所属するプロサッカークラブ「アビスパ福岡」のホームスタジアム「博多の森球技場」(福岡市所有)の命名権を獲得し、「レベルファイブスタジアム」としました。こうしたことも人が集まる大きな要因かと思いますが。

日野   そういうこともあるかもしれませんが、業界全体で見ても、人材難ということはありません。むしろ、業界の課題はビジネスチャンスを探し出すこと、チャンスを逃さないということではないでしょうか。

——潜在的な市場は大きい。それを開拓できる企業と苦戦している企業があるということですか。

日野   ビジネスチャンスといいますが、今は、その糸口を見つけにくい状況だと思います。今は「運よく当たる」ということはありません。ビジョンがあり、それに基づいた製品を出して「当たるべくして当たる」という時代です。

——行政のさらなる支援を期待しますか。

写真2

パブリッシャー作品第2弾「イナズマイレブン」

日野   いろいろな連携はいいと思います。ただ、本当に支援が必要なところはどこか、落ち着いて考えるべきでしょう。じっくり考えて、ここはというところに経営資源を投入し、そこを応援してもらうのはいい。しかし、工夫の足りないところにお金をつぎ込んでも効果が乏しい。支援してもらうということは、それに対する責任を伴うということです。まず業界、個々の企業の自立的な経営が基本で、その上での産学官連携であると思います。

——ありがとうございました。

聞き手・本文構成:登坂 和洋(本誌編集長)