2009年6月号
特集  - 産学官連携の新たな挑戦
企業が技術ニーズを大学側に発信
新しい産学マッチングの場 「産から学へのプレゼンテーション」の狙い

佐藤 比呂彦 Profile
(さとう・ひろひこ)

独立行政法人科学技術振興機構
イノベーション推進本部
産学連携展開部 産学連携担当
主査

科学技術振興機構(JST)が平成20年末から実施している「産から学へのプレゼンテーション」は、企業が技術ニーズを大学に向けて発信し、産学のマッチングを図る場である。大学の研究成果=シーズ主導型の技術移転支援を50年にわたって行ってきた同機構にとって、極めて新しい試みだ。

独立行政法人科学技術振興機構(JST)は平成20 年12 月に産学連携を促進する活動の一環として、産と学のマッチングを図る新たなかたちの発表会「産から学へのプレゼンテーション」(以下、産プレ)を開始した。産プレの1 番の特徴は、企業が技術ニーズを発信することだ。企業からのニーズ発信は困難だというのが常識の中、開催を続ける「産から学へのプレゼンテーション」について紹介する。

産から学へのプレゼンテーションとは

オープンイノベーションが競争力強化、新産業創出・新事業創出への有効な手段になるという認識が広がり、産業界は大学の「知」の活用に対して積極的になってきた。そのような中、産と学が出会うきっかけづくりとして、大学側から企業側へ研究成果情報を発信するシーズ主導型の発表会が、これまでに多数開催されてきた。産プレは、こうした従来の発表会とは逆に、企業側が、短期的な解決を求めている課題(技術ニーズ)や中長期的なアライアンスについての展望などのニーズを大学側に向けて発信する。

JST は、この会をきっかけとした、企業ニーズ主導型の「事業化指向が明確な産学連携」が行われることで、大学等から創出される研究成果の社会還元がより促進されるものと期待している。

◆開催スタイル
○プレゼンテーション
・時 間: 10 分から30 分
(プレゼン企業と調整。他の企業の聴講はなし。)
・聴講数:30 名から100 名程度
・会 場: 主に、JST 東京本部 JST ホール(東京都千代田区)
今後は、札幌、名古屋、大阪など地域開催も予定
個別相談会
プレゼン企業ごとに別室にて実施/ 1 件10 分(入れ替え制)
秘密保持について
プレゼンの場、個別相談会における秘密保持の考え方は、プレゼン企業の意向に添い調整。

特徴
企業がプレゼンテーション
大学・公的研究機関・TLO(技術移転機構)が聴講
プレゼンテーション後に、企業個別の相談会を実施

1 番の特徴はその名の通り、産からのプレゼンテーション(プレゼン)である。聴講側は大学等に限定している。プレゼン後に、個別の相談会を行うことで、産と学が連携するきっかけの場を提供する。

マッチングの仕組みは次のようなものだ。企業による「ニーズ情報の発信」は困難であり、開催告知に掲載するプレゼン情報、当日のプレゼン情報の量は制限されるという前提で産プレの企画を行い、聴講者としては大学等におけるコーディネータ等産学連携担当者が中心となる、と想定した。聴講者(コーディネータ等)は、個別相談の場で、名刺交換による当該企業の窓口の把握、プレゼン情報の補完、学内シーズ情報を元にした意見交換等を行い、学内・機構内で展開するための情報収集に努めることとなる。その後、大学側は、得られたニーズ情報に関係する具体的な研究者・シーズ情報を企業に紹介し、企業側、大学側の各関係者・研究者による面談・会議等を経て、新たな産学連携(マッチング)へと発展するものと期待している。

産プレのきっかけ

大学の研究成果(出願特許に基づく技術シーズ)の企業への発表の場としては、新技術説明会がある。平成16 年度から開始し、本年度2 回目の開催となる「電気通信大学 新技術説明会」で通算100 回を迎えた。本年度も45 回の開催を予定している*1。昨年度に引き続き、開催の集中する時期には、毎週や週2 回の開催頻度となる。

◆プレゼン企業(平成20 年度)
万有製薬株式会社
・Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N. J., U.S.A(. 米国メルク社)
株式会社アプライド・マイクロシステム
昭和電工株式会社
株式会社テクノスルガ・ラボ
株式会社セラバリューズ
ジーンフロンティア株式会社
旭化成株式会社
TMC システム株式会社
財団法人衛星測位利用推進センター
株式会社資生堂
スルガ株式会社
レキットベンキーザー・アジアパシフィック・リミテッド

こうした中、連続して何度も参加し個別相談もよく利用される企業の方が目立つようになった。また、発表する大学からも「企業のニーズが分かれば研究成果を権利化でき、効率化や研究推進に生かせる」「この場で発表する技術の選択に役立たせることができる」などと意見をいただいた。

これを受け、新技術説明会とは逆に、企業がプレゼンを行い、大学が聴講、個別相談に並ぶという会の可能性が見え、産プレの企画が生まれた。企画を行ったのは平成20 年2 月。ここから企業に対し企画に対する率直な意見をいただくとともに、プレゼンをお願いする活動を行った。しかし、企画に関心はあるが参加を決断する企業が現れない、という時期が長く続いた。決断できない理由としては「やはりニーズは外に話せない」「シーズを探すのは自らの仕事である」「シーズを探す活動は行っており足りている」などが多かった。こうして9 月となり、万有製薬株式会社と出会い快諾を得た。これを弾みとして、12 月4 日を第1 回開催日と決め、すでに1 社決まっている条件として他社を募ったところ、数社が希望することとなった。その後、毎月1 回の開催を行う規模で企業が集うこととなった。参加を決断した企業には「参加への決断が速い」「シーズを探すことは行っているが、それに加えて行いたい」という点が共通した。

開催状況(平成20 年度より)

              表1 開催結果概要
              (平成20 年度末時点)

表1

平成20 年度は4 回開催した。会場はすべて、JST東京本部(東京都千代田区)のJST ホール。開催結果の概要は表1 の通り。12 社がプレゼンし、延べ664 人の大学・TLO 等からの聴講があった。個別相談数は106 件で、1 社平均8.8 件となる。最も多かったのは1 社で15 件というケースで、プレゼン後2 時間30 分にわたって、個別相談が行われるなど大学等聴講者の積極性がうかがえた。

聴講者の所属内訳は表2の通りである。平均約39機関から聴講があった。4 回の開催で、重複を除いた機関数は84 機関である。大学(高専含む)が1 番多く60機関で7 割を超える。延べ聴講数を地方別に見ると、図1 の通りで、関東が1 番多い。中でも東京が1番多く全体の45%を占める。このように、開催地により聴講者の動向は左右されるので、今後は各地域での開催を検討している。

表2 聴講者所属の内訳(平成20 年度末時点) 

表2
平成21 年度開催予定
図1

図1 聴講者の都道府県分布 
  

平成21 年度についても定期的な開催を計画している。開催予定は次の通り。8 月以降の開催については、プレゼン企業を募集している。いずれも新技術説明会の開催日と前後した日程とし、集客・来場の相乗効果を狙っている。





開催予定日
5 月20 日(終了)、7 月30 日、8 月24 日、10 月21 日、
11 月19 日、12 月21 日、1 月28 日
(8 月以降はプレゼン企業募集中)

おわりに

シーズを発表する「新技術説明会」に加え、ニーズが発表される「産から学へのプレゼンテーション」を定着させることで、産学連携が促進され、新事業・新産業の創出へと発展することを期待する。

*1
新技術説明会:http://shingi.jst.go.jp/

○お問い合わせ先
科学技術振興機構(JST)産学連携展開部 産学連携担当
TEL:03-5214-7519
e-mail:scett@jst.go.jp