2009年6月号
特集  - 産学官連携の新たな挑戦
つくばの目覚め
地域振興の論理とベンチャーの未来

この号(「産学官連携ジャーナル」2009年6 月号)につくば関係の記事を並べるようになったきっかけは、筆者が今年2月24 日、東京・秋葉原で開催された「第2 回つくば産産学連携促進市inアキバ」(つくば市主催)をのぞいたことだった。この催しでは、ロボットスーツ「HAL」を開発した山海嘉之筑波大学大学院教授の基調講演とベンチャー企業13 社の新技術発表が行われた。展示コーナーにはこの13 社のほか、国立環境研究所、物質・材料研究機構、筑波大学など約15 機関が出展した。

見学の狙いは新技術に加え、ベンチャー企業と地域産業の行方を探ることだった。「つくばの研究機関は東京に顔を向けていて地域としてのまとまりはない」と聞いていた。一方で、筑波大学は産学連携に熱心で、同大学発ベンチャー企業数は累積で65 社になり、東京、大阪、早稲田、京都の各大学に次いで5 位*1。これが地域産業をどう刺激しているのか。さらに、つくばエクスプレスが地域をどう活性化しているのかも知りたかった。

自治体は企業誘致を前面に

受け付けを済ませて、主催者のつくば市のコーナーで見たのは「企業誘致に頑張る全国20 自治体の1 つに選ばれた」という趣旨の張り紙。テーブルの上には、それを報じた2007 年12 月の新聞記事のコピー(見出しは「企業立地取り組み評価/経産省 つくば市に感謝状」)、「企業立地のご案内」のパンフレットなど。隣の茨城県のコーナーには、住宅・商業・業務用地をお求めの皆さまへとうたった「つくばエクスプレス沿線土地情報」の資料。そのまた隣の独立行政法人都市再生機構が並べている資料は、企業・デベロッパー向け用地のご案内。

確かに、外部から企業を呼び込むことは産業振興、地域活性化の極めて有力な方法だ。市などは「産学連携」を誘致の旗印に利用しているように見える。だが「ちょっと違うんじゃないですか」というのが第一印象だ。ハイテクベンチャーの新技術発表会と、自治体の「企業誘致」一色のアピールがにわかに結び付かなかったからである。

しかし、会場で取材を進めるうちに、最初の印象とは違うつくばの顔が見えてきた。つくば市は人口20 万人余りなのに、筑波大学発を含む研究開発型ベンチャー企業がおよそ200 社もある。その一部は孵化(ふか)しつつある。産学連携も進んでいる。同市は6 月、他機関のビジネス・インキュベーション施設を卒業し、規模拡大を目指すベンチャー企業を受け入れる施設(6 部屋)を開設する予定という。ただ、地域のこうした魅力、変化に気付いているのはごく一部の人で、情報が全く共有化されていない。

後日、事実関係を確認するとともに、関係者と議論を重ねて論点を整理し、つくば地域における、産学官連携による内発型の産業振興の可能性を探ったのがここに紹介する「つくばの目覚め」の記事群である。

(登坂 和洋:本誌編集長)

*1
「平成19年度大学発ベンチャーに関する基礎調査報告書」(経済産業省)