2009年6月号
特集  - 産学官連携の新たな挑戦
つくばの目覚め
つくば市の内発型産業集積拠点形成に向けた取り組み
-ポストインキュベーション施設の開設-
顔写真

関 武志 Profile
(せき・たけし)

つくば市経済部長



つくば市は今年6月に「つくば市産業振興センター」を開設する。51~145 平方メートルの部屋が6つあり、成長過程にあるベンチャー企業に低料金で貸す。他機関のインキュベーション施設を卒業し、規模拡大を目指す企業の受け皿だ。

経緯

世界有数の科学技術研究集積地である筑波研究学園都市を有するつくば市は、人口21 万人の中規模な都市ながら、ここ数年で研究開発型ベンチャー企業が200 社以上創出されている希有(けう)な都市である。つくば発のベンチャー企業の中には、ロボットスーツHAL の研究開発・生産を行うことで世界的にも有名なCYBERDYNE 株式会社等、将来の成長が楽しみなオンリーワン企業が数多く含まれている。

そのようなベンチャー企業の多くがつくば市内で大きく成長し、研究開発・生産拠点を拡大させ、多くの雇用を生み出し内発型の新たな産業集積を形成することができれば、地域経済の活性化に大きく貢献する。

これまでつくば地域においては、自治体や各機関・団体におけるソフト的な新産業創出支援に加えて、第3 セクターの株式会社つくば研究支援センター、筑波大学、独立行政法人産業技術総合研究所等がインキュベーション施設を提供することで、ベンチャー企業の創出をリードしてきた。

その結果として、200 社を超えるベンチャー企業の創出に結び付いているのであるが、優れた技術・製品を保有し、順調に孵化(ふか)・成長しているベンチャー企業といえども、企業としては経営基盤がまだ脆弱(ぜいじゃく)であることが多い。

また、インキュベーション施設の入居期限の満了後や規模の拡大により、新たな拠点において事業展開をしようとした場合、つくば市内で適当な大きさのオフィスやラボ等を見つけることに苦慮している事例が多く、つくば市を離れて東京都内や千葉県等に転出する事例も確認されている。

ベンチャー企業の支援は、地域経済の活性化に向けた先行投資である。地域がその恩恵を得るには長期的な展望のもと、企業の成長段階に応じた継続的な支援、特にポストインキュベーション施策が必要であると考える。

以上から、つくば市では今年の6 月に、つくば発の将来有望なベンチャー企業の成長の受け皿として、ポストインキュベーション施設の「つくば市産業振興センター」を開設することとした。

ポテンシャルを活かした内発型の産業集積
つくば市産業振興センターの概要
[1] 所在地:茨城県つくば市吾妻2-5-1(TX つくば駅A1 出入口から徒歩約5 分)
[2] ルーム数:6 部屋
[3] ルームサイズ:51m2(1)、約100m2(4)、145m2(1)
[4] 利用料:m2 あたり月2,500 円
[5] ルーム利用期間:利用期間は、1 年以内(ただし、1 年ごとの更新で最長4 年更新可能)。

つくば市産業振興センターは、市内にあるほかのインキュベーション施設より大きめのオフィスサイズの設計とし、市内中心部の利便性のよい場所に位置している。また賃料も安価に設定している。ベンチャー企業が成長期に移行するための橋渡しとして、成長性が高く将来有望なベンチャー企業で、かつセンター退去後も引き続きつくば市に拠点を置き事業展開をしたいと考えているベンチャー企業を対象として、センターに入居している間に安定した経営基盤をある程度つくってもらうことを狙いとしている。

つくばには、知的な環境、都市的環境、および豊かな自然環境が融合した「つくばスタイル」といわれる独特のライフスタイルがある。また、つくばエクスプレス(TX)の開通により都心まで45 分で結ばれたことからも、よいビジネス環境が整っている。そうした環境が気に入り、つくばで末永く操業していきたいと考えている起業者が多く存在していると認識している。このような起業者を支援することは、市としても意義のあることであり「つくばで創業し、つくばで成長する」という内発型の産業創出のサイクルが確立されるものと期待しているところである。

今後の展望

産学官連携による継続的なイノベーションの創出を契機として、それによって生み出されるベンチャー企業を成長させ、内発型産業集積(産業クラスター)を形成するためには、産業振興センターの整備に続く産業振興施策を展開していく必要があると考えている。

企業の成長段階をホップ・ステップ・ジャンプで例えると、インキュベーション施設がホップで、つくば市産業振興センター(ポストインキュベーション型産業施設)がステップ、ベンチャー企業が大きく羽ばたくためのジャンプ台として、ポストインキュベーション型の産業団地(ミニ研究団地)も必要だと認識している。

このため、つくば市では、成長期に移行し、自ら用地を取得し、設備投資を行うベンチャー企業の域を超えたベンチャー企業を対象とした「つくばハイテクパーク(仮称)」の整備を検討している。

これにより、従来型の生産工場など企業誘致等による地域振興のみでなく、外発型と内発型の産業振興を両輪とした新たな地域活性化のスタイルを確立させ、自律的な地域経済の活性化を目指したい。

おわりに

筑波研究学園都市の建設から30 年がたち、やっと新産業創出が芽生え、ここ数年で研究機関と企業との連携や研究機関同士の交流等がいよいよ本格化し、新たな展開が出てきたところである。

これからの5 年、10 年は筑波研究学園都市の成果が真に問われるときであり、これまでの展開を土台として、さらに真に機能するつくばならではの産学官連携の在り方をつくっていかなくてはならない。それにより、継続的に新産業を創出していくダイナミズムをつくり出すことこそ、筑波研究学園都市の果たすべき役割であると認識している。

筑波研究学園都市の科学技術集積の芽が、そこから生まれるイノベーションの花が、世界に向かって開き、筑波研究学園都市が世界から期待される役割を果たせるよう、今後もなお一層の取り組みを図っていきたい。