2009年7月号
巻頭言
顔写真

濵口 道成 Profile
(はまぐち・みちなり)

名古屋大学 総長




グローバル化時代の大学と学生教育

昨年、名古屋大学の卒業生である益川敏英先生、小林誠先生がノーベル物理学賞を、元助教授の下村脩先生がノーベル化学賞を受賞されました。3名の先生方に先立ち、2001 年には理学研究科教授(当時)の野依良治先生がノーベル化学賞を受賞されています。先生方の受賞は、名古屋大学の若い人材を大切に育て上げる「自由闊達(かったつ)な学風」を特徴づける成果であると自負しています。21世紀にノーベル賞を受賞された日本人は7 名おられますが、その過半数の4 名が本学の関係者であることに、私どもは誇りを持っております。

名古屋大学は、1939 年に名古屋帝国大学として設立されてから本年で70 周年の節目を迎えました。本学は、日本の基幹大学・総合研究大学として、また日本の産業の心臓部である中部地区にある基幹大学として、次世代の人材を養成し、新しい科学・産業技術を開発していく責任を負っています。

「近ごろの若い者は…」という議論はいつの世にもありますが、少子化時代を迎え、しっかりした人材を育成することは、高等教育機関にとってますます重要な使命となりつつあります。本年度の学部入学式で、私は新入学生たちに3 つのお願いをしました。「自立すること」「しっかり語学を学ぶこと」「大学時代にたくさんの友人をつくり、サークル活動、社会活動に参加すること」です。言ってみれば当たり前の言葉でありますが、グローバリゼーションが加速する中で、社会に蔓延(まんえん)するマニュアル頼りの風潮を見るにつけ、若い人たちの自立を促し、国際化を加速する教育の必要性を痛感しています。語学については、本年度から英語に新カリキュラムを導入しました。入学者全員に英語プレイスメント・テスト(TOEFL-LTP 試験)と小論文を書く試験を実施し、3 段階の習熟度別授業を行っています。この改革は、教養教育充実の一環です。20 歳前の年ごろは、社会で活躍するための人格の骨格をつくる時期であります。自立心の高い、厚みのある人格を形成させるためには、幅広い教養を身に付けさせることが重要であると考えています。また、大学時代にさまざまな機会をとらえ、学生に異文化体験をさせたいと願っています。日本では無意識でやっていたことを、異文化の中では自分で考えてやらなければなりません。この体験を通じて、学生は自我を再構築し、自分の適性を確信することができます。また、この体験は自分の中に眠る潜在的な可能性に気付く機会ともなることを、自身の教育の中で実感してきました。

膨大な情報の洪水の中で核心をつかみたいと苦闘している若い人たちが、大学での教育・体験の中で自分のよって立つ価値観を確立し、グローバルな視点を持って羽ばたいていく——本学の歴史的、地理的な特徴を大事にしながら、そういう教育環境の整備に努力したいと思います。