2009年9月号
特集  - 「起業」の心得
ソフトイーサ株式会社 代表取締役会長
登 大遊 氏
グーグル並みの付加価値生産量を目指す
顔写真

登 大遊 Profile
(のぼり・だいゆう)

ソフトイーサ株式会社
代表取締役会長


聞き手・本文構成:登坂 和洋 Profile

(本誌編集長)


通信の「自社開発ソフト」を手掛けるソフトイーサ株式会社は筑波大学発ベンチャー企業だ。代表取締役会長の登大遊氏が学生時代に開発したソフトが出発点。会社設立から5年余り、順調に業容は拡大し、無借金経営だ。登氏が重きを置くのは、従業員に支払った給料と会社の純利益を合わせた「付加価値」。当面、グーグル並みの高い付加価値生産を目指す。

―筑波大学の学生の時に起業しましたね。

  2003~2006年、大学から有形無形の恩恵を受けました。教授に質問すると的を射た答えが返ってきましたし、技術的に高度な知識も得られました。ディスカッションする機会もたくさんありました。とにかく技術的に細かいことを学べましたし、高い性能を追求できたのも学生時代だからだと思います。私が学生時代に開発したものを、一般の企業が通常のビジネスとして取り組もうとしたら、大変なコストがかかるのではないでしょうか。

大学の設備、ネットワークも存分に利用しました。大学1年の時、学内LAN の仕組みを勉強する機会がありました。地下の共同溝の中を見て、光ファイバーの回線がどこへどうつながっているかを知ることができました。これがその後のビジネスにも大変役立っています。

2005~08年度の4年間は大学のインキュベーション施設に入居していました。産学連携を求めていろいろな企業が訪ねてきて、外部との付き合いの幅が広がりました。

―技術と経営の分離が経営上の強みと言われますね。

  「分離」と一言で言い切ってしまうのは正しくないでしょう。まず、何を開発するかは技術者に任せています。自由にやっていいんです。ただし、責任をもって。もうけはそうしたプロジェクトに投じます。できたものを営業に回します。技術者の自由度が高いのは、当社の事業形態が影響していると思います。当社が手掛けているのは通信の「自社開発ソフト」です。1つ開発して市場に出すと3万とか4万人のお客さまが使うわけです。要するに「既製品」です。営業部門が、お客さまから言われたことを技術畑に伝えることはあっても、それに強制力はつけません。営業部門の要望に応じるかどうかは技術者が決めます。

―元月刊アスキー誌副編集長の原さんを社長に迎えています。

  大変力になっています。われわれの業界の専門家は、ITメディア、インプレスなどのニュースサイトを見ています。新聞の報道は遅いのです。企業にとっては製品などの情報を、ニュースサイトなどを通じてどう発信していくかがポイントになります。

―無借金経営ですね。ベンチャー企業には、バイオ分野のようにベンチャーキャピタルなどの資金に支えられてある程度時間をかけて開発に取り組むタイプと、事業化できるところから始めて収入を得て、それを開発資金に当てるタイプなどがあります。

  当社は起業時にはすでに売るものがありました。私は筑波大学第三学群情報学類1年だった2003年12月、「IPA未踏ソフトウェア創造事業未踏ユース部門」において開発したVPNソフトウェア「SoftEther1.0」のベータ版を公開。これをもとに翌年春、事業をスタートしました。その後、いろいろなソフトを売り出しましたが、その都度、どんなに悪くても赤字にはならないだろうという勝算がありました。その通りになりました。それに、当社は本業以外はやりません。資金運用することなどを考える時間があったら研究開発に向けます。

―昨年12月からサービスを開始した、ギガビット広域イーサネット専用線サービス「ハードイーサ」にはかなり期待されているようですね。

図1

       図1  ギガビット広域イーサネット専用線
            サービス「Hard Ether(ハードイーサ)」

  ハードイーサ(図1)は2拠点をギガビットで接続する専用線サービスです。専用線というと、NTTが提供しているものが有名ですが、ギガビットで市内2拠点を接続すると月額50万円くらいかかります。ハードイーサであれば月額20万円前後で接続でき、通信品質もNTTより良いです。

特に中小企業対策基本法に該当するベンチャー企業等に対しては、さらに支援するという意味で、月額5万円を割り引いています。ソフトイーサのようなベンチャーであっても、安価にビジネスに利用できる高速な専用線は、ほかにはなかったので、そのようなサービスを提供できることは大変良いことだと考えています。

目標は東京都内で50~300回線程度です。

―当面の目標は。

  会社の利益を大きくすることではなく、付加価値の生産量を高めることです。付加価値とは、従業員に支払った給料と会社の純利益の合計です。現在、1人当たり約1,000万円です。グーグルは4,000万円、任天堂に至っては1億6,000万円と驚異的です。ちなみにある自動車メーカーは800万円、ある大手電機会社はマイナス100万円です。次の目標はグーグル並みの付加価値です。

―ありがとうございました。

ソフトイーサ株式会社の概要
本社:茨城県つくば市
設立:2004 年4 月
代表者:代表取締役会長 登 大遊
資本金:4,430 万円
事業内容:[1]ネットワーク通信・セキュリティーソフトウェア製品およびハードウェア製品の研究開発 [2]電気通信事業 [3]ネットワークサービスなどの提供 [4]その他ソフトウェア、ネットワーク通信およびセキュリティに関する研究開発 [5]展開している業務に関するコンピューター専門書籍や雑誌記事などの執筆・出版