2009年9月号
単発記事
伝統ブランド植物「吉野クズ」からおしゃれなリキュール
顔写真

柴田 修 Profile
(しばた・おさむ)

財団法人奈良県中小企業支援センター
奈良県地域結集型研究開発プログラム
企業化統括

吉野クズの葉を漬け込んださわやかなお酒ができた。おしゃれなスリムタイプのボトルに入れ、中に八重桜を浮かせた。伝統的な地域の農産物を活用して食品を開発する産学官連携のプロジェクトから誕生した。

吉野ブランドを生かした食品開発へ

奈良県には歴史ある有名な地域産物が数多くある。特に奈良県南東部地域「吉野」をブランドとする「吉野杉」「吉野クズ」などの農林産品は、全国的に人気があり地域の主要な産業である。また、観光ブランドでもあり、春の桜のシーズンになると50万人以上の人が吉野山を訪れる。この揺るぎない「吉野ブランド」を活用した食品を開発しようと、奈良県では平成17年度から地域結集型研究開発プログラムの1テーマとして、吉野クズの機能性を研究するとともに商品化を進めてきた。

吉野クズ研究の取り組み―地上部位の研究と栽培実験

吉野クズの根には多量のでんぷんが含まれており、古くからクズでんぷんとして利用されている。また、各種有効成分を多く含む生薬として知られ、葛根湯(かっこんとう)など漢方薬の原料となっているが、残念ながら食品への活用は限られていた。しかし、根にこれほどの有効成分があることから地上部位の蔓(つる)や葉にも機能性があると期待され、近畿大学と地域結集型共同研究コア研究室が中心になり研究を進めてきた。さらに実用化に向けて、安全性と機能性の高い食品を目指し研究を進めている。

一方、加工品原料の安定供給と、安全・安心な素材を提供することを目的に、全国で初めて県農業総合センターがクズの栽培技術を確立し*1、その技術を普及するためにJAならけんや農家と共同で遊休農地での栽培実証を始めた。開始してみると、予想以上に湿度の高い土地に弱いことが明らかとなり、適地の検討や雑草対策など、試行錯誤を繰り返しながら続けている。

クズリキュール商品開発へ

そのような中、クズ地上部位を活用した商品づくりに積極的に取り組んでいただいたのが、吉野町の酒造メーカー株式会社北岡本店である。目指すのは、焼酎にクズを漬け込む「クズリキュール(酒)」である。奈良県工業技術センターが開発したその製造方法*2に基づいて、部位の違いによる風味テストや、漬け込み実験を繰り返し、葉を利用したクズリキュールのベースができた。女性をターゲットとした商品に仕上げるため、これをベースに桜の花を浮かべて杉の香りを加え、ブランドイメージ「吉野」を前面に押し出したおしゃれなリキュール「まるごと吉野」(写真1)が完成した。

写真1

写真1 クズの葉リキュール「まるごと吉野」

そして本年4月、吉野山の桜シーズンに2,000本の限定販売を行い、ほぼ完売することができた。

さらに今、この吉野クズの葉リキュールをベースに、とろみのある「ジュレ」のリキュールを開発中で、大和茶や柿・梅などの地域産品を加えたシリーズ展開を目指している。これは近畿経済産業局の「地域資源活用売れる商品づくり支援事業」の支援を受け、平成22年の早い時期に販売するのが目標である。

古都奈良の新世紀植物機能活用技術の開発

奈良県地域結集型研究開発プログラム事業では、平成17年度より「吉野クズ」「大和マナ」「大和トウキ」「大和シャクヤク」「大和茶」の計5つの植物をテーマに機能性の活用等に関する実用化技術の開発を行い、新商品の創出を目指している。

*1
特開2009-77679(2007.9.27出願)「クズの栽培方法」

*2
特開2009-5607(2007.6.27出願)「クズリキュール及びその製造法」