2009年10月号
巻頭言
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平井 伸治 Profile
(ひらい・しんじ)

鳥取県知事




産学官連携で未来を開く

産学官連携は、地域活性化への重要な鍵です。鳥取県は人口60万人規模の県であり、顔が見えるネットワークが今も生きています。これを活用し、大学や研究機関等を活用することで、新製品・サービスの開発や地域課題解決への道が開かれるポテンシャルがあります。

県内には、大手液晶パネルメーカーをはじめとする電機電子関連企業や、全国有数の水揚げ量を誇る境港の魚介類等を原料とする食品関連企業が多数集積しており、これらが本県経済をけん引してきました。しかし、米国発の金融危機に端を発した世界不況の影響を受け、県内産業はいまだ厳しい状況に置かれています。

この未曾有の不況を乗り越えるため、鳥取県では産学官が連携して産業振興にチャレンジを始めています。例えば、電機電子関連産業の技術者を育成する「液晶人材育成プログラム」を、県内の大学・高専・高校と県内企業が連携して開発・運営しています。このプログラムでは、企業の技術者がカリキュラムを開発し、講師として大学や高校の教壇に立つことで、より企業の現場に近い教育を行っており、非常に実践的な人材育成であるとして産業界からも教育界からも高い評価を受けています。

また、大学のシーズを基にした新産業創出もわれわれのテーマです。本年度から本格的に取り組む「とっとりバイオフロンティア構想」においては、鳥取大学医学部で研究・開発されたヒト型遺伝子マウスを中心として、マウスの生産や薬品・健康食品の安全性・機能性評価等を行う企業の誘致に取り組み、現在は白地地域であった本県にバイオ産業の集積形成を図ろうと考えています。

産学官連携の波及効果は、産業振興のみにとどまりません。鳥取県は山海の豊かな自然に恵まれる一方、中山間地域を中心として、過疎化、高齢化や耕作放棄地の増加等、さまざまな課題を抱えています。これらの課題は、人口減少・後継者不足等の複合的な原因に起因するものであり、一朝一夕に解決できるものではありません。

このような社会的重要課題の解決に向けて、農商工と産学官が連携して取り組む事例が生まれ始めました。近年県内では休耕田を利用した高級淡水魚「ホンモロコ」の養殖や、中山間地で栽培したハーブからアロマオイルの精製に取り組む大学発ベンチャーが起業され、産業振興とともに中山間地の抱える諸問題を解決する一助になると大いに期待されています。本年度新たに立ち上げたサポート網「とっとり農商工こらぼネット」など、鳥取県もこうした産学官連携による地域おこしを精力的に支援しているところです。

産学官の連携で開く未来。その原動力となるのは、既存の産業分野の枠を超えて活躍することのできる人材です。産学官が連携し、県内産業の高付加価値化や地域の活性化に取り組むとともに、次世代をリードしていく人材の育成に向けて、地域の産学官ネットワークが力強く動き始めました。