2009年10月号
単発記事
養成講座で内部の知財人材を育成
福井大学産学官連携本部の知財戦略

高島 正之 Profile
(たかしま・まさゆき)

福井大学 産学官連携本部長・
教授

吉長 重樹 Profile
(よしなが・しげき)

福井大学 産学官連携本部
専任教員・准教授

福井大学は知的財産活動の自立運営を目指し、学内で知財人材を養成する講座を開講している。特徴は学内の教職員や研究者を対象としていることである。将来的には、県内各大学にも参加を呼び掛け、地域知財の高度化を進めていく。

福井大学では、学内の知的財産の管理・運営のため、産学官連携本部に知的財産部を設置している。技術価値の高い知的財産を継続的に創造し、活用・社会還元していける体制を構築するためには、研究の源流に近い場所で研究シーズの探索やその展開を行う知的財産(IP)活動が必要である。

これまで、IPに関する業務は知的財産部専門職員のほか、弁理士や専門家など学外の人材に依存してきた。しかし、外部人材では研究者との隔たりが大きく、研究の源流まで立ち入ることが難しいことが多い。また、予算等の考慮はもとより、IP活動の自立運営を目指すためには、学内人材で対処することが望ましい。

平成20年度から初級のアドバイザーコース

このような問題意識のもとに、福井大学では、学内でIP人材を養成するために、平成20年度よりIP人材養成講座を開講している。講座には次の2つのコースを設定している。

「IPアドバイザーコース」(初級コース)
IP を産業財産と考えて学内でIPアドバイザーとして活動ができる人材を養成。
「IPコーディネータコース」(上級コース)
ビジネスプランの構築や技術のマーケティングに至るまでの、特許技術の事業化に関する実務的なスキルを身に付けた、産学連携の場で活動できる人材を養成。  

「IPアドバイザーコース」を開講したのは平成20年度。平成21年度は「IPアドバイザーコース」と同コース受講者を対象にした上級の「IPコーディネータコース」の2コースを開講している。1コースの受講生は15~20名程度で、弁理士や企業のIP業務に携わる専門家を外部から講師として招き、各コースとも数回の講座をシリーズで実施している。

本養成講座の特徴は、学内の教職員・研究者を対象としていることにある。各学部・学科にIP活動を実行できる教員を1人以上配置できるよう、活発に産学官連携活動を行っている教員を選出するとともに、意欲のある若手教員・研究者の参加を募っている。

本講座を受講してもらいたいと考えている事務職員は、主に産学官連携室などの共同・受託研究をサポートする事務組織の者だが、その他各部署の職員からも参加者を募っている。さらに、本講座は、博士研究員(ポスドク)も対象としており、ポスドクのスキルアップにつないでいる。

研究者のキャリアアップが条件

一般に、ポスドクは教員等の研究を補助するために雇用される場合が多い。これまで本学においても、教員の要請に応じてベンチャービジネスラボラトリー(VBL)でポスドクを雇用し、教員の研究推進を支援してきた。しかし、研究業務を懸命に推進しても、ポスドク自身のキャリアパスとなることは少ない。

現在、福井大学産学官連携本部では、教員の要請に応じる形ではなく「自身の研究をベースにして事業化を目指した研究の推進」と「雇用期間中の自身のキャリアアップ」を条件としてポスドクを雇用している。

採用に際しては、全国公募とし、自身の研究の事業化とキャリアアップに意欲的な博士研究員を広く受け入れている。産学官連携本部が実施している産学官連携活動への参加や各種セミナーの受講もポスドクの業務としており、ここで築いた人的ネットワークや習得した知識・経験を研究の事業化に向けた活動に生かし、ポスドク任期終了後には、その成果を持って企業に就職、あるいはベンチャーを設立するなど、次のステップへのキャリアパスとなるよう人材育成を行っている。その一環として、IP人材養成講座を積極的に受講してもらい、キャリアアップにつなげている。

平成20年度の「IPアドバイザーコース」は、教員12名、事務職員4名、ポスドク3名の計19名が受講した。現在、この受講者は、平成21年度の「IPコーディネータコース」を受講している。さらに、平成21年度の「IPアドバイザーコース」では、教員7名、事務職員5名、ポスドク3名の計15名が受講しており、来年度の「IPコーディネータコース」受講候補生となる。

福井県内各大学に呼び掛ける

両コースの研修を終了すると、受講者は「知財エキスパート」となるべく産学官連携本部に登録され、実践的に活躍することとなる。今後、本講座は福井大学内だけでなく、福井県大学連携リーグを通じて、県内の他大学にも参加を呼び掛けていく予定である。

図1

知財戦略と知財人材養成

また、福井県には大学TLOなどの技術移転に直接かかわる組織がなく、大学の知財の技術移転活動がシステマチックに進められているとは言い難い。福井大学では、本学の知財の技術移転を積極的に推進するため、同知的財産部の中にTLO機能を持った「技術移転推進室」の設置を進め、合わせて、金沢大学KUTLO-NITTや徳島大学TPAS-net、ひょうご神戸産学学官アライアンス等との広域連携を強化していく。また、地域の知財のプラットフォームとして「ふくい知財フォーラム」を組織し、地域の知財の高度化を進める計画である。

福井大学では、地域のさらなる活性化のため、長期的知財戦略の下、ここに紹介した施策のみならず、種々の新たな取り組みを実行中である。