2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
対象はイノベーションにつながる産学官連携活動 大賞にARECの岡田基幸氏

独立行政法人科学技術振興機構(JST)が創設した「イノベーションコーディネータ表彰」の第1回の受賞者が決まり、10月7日、北海道札幌市内で表彰式が行われた。

イノベーションコーディネータ賞(大賞)は次のような産学官連携活動に携わるコーディネータの優れた成果を顕彰するもの。

技術シーズ発掘および企業ニーズとのマッチング
適切な外部資金の取得支援
知財マネジメント・技術移転支援
企業化支援
後継事業などへの橋渡し―など

イノベーションコーディネータ賞・科学技術振興機構理事長賞は個人またはチームに、また、同大賞・文部科学大臣賞は、その中で最も優れ、ほかのコーディネータの規範となる極めて大きな成果を上げた個人またはチームに授与する。表彰することにより、コーディネータのモチベーションを高めるとともに、コーディネート活動の重要性を社会にアピールするのが狙いである。

文部科学省および科学技術振興機構に所属するコーディネータは、イノベーションコーディネータ賞(大賞)の対象とせず、別に「コーディネータ特別賞」が設けられた。

同大賞・文部科学大臣賞を受賞したのは、財団法人上田繊維科学振興会理事・AREC(浅間リサーチエクステンションセンター)事務局長の岡田基幸氏。長野県上田地域の産学官連携施設ARECを立ち上げ、ここを拠点とした産学官のネットワークで多くの事業化を推進した功績が評価された。

コーディネータフォーラムで表彰式

表彰式は、「全国イノベーションコーディネータフォーラム2009 in 札幌」(JST主催、10月7、8の両日)の中で行われた。

外部有識者からなる「イノベーションコーディネータ表彰選考委員会」の原山優子委員長(東北大学総長特任補佐・大学院工学研究科教授)は、コーディネータという仕事は新しい仕事だが、こうした表彰で「可視化」されることによって広く認知され、プロフェッショナルが増えていく、と述べた。

(登坂 和洋:本誌編集長)

■第1回イノベーションコーディネータ表彰 受賞者(敬称略)
《イノベーションコーディネータ大賞・文部科学大臣賞》
岡田基幸(財団法人 上田繊維科学振興会 理事兼AREC事務局長)
《イノベーションコーディネータ賞・科学技術振興機構理事長賞》
財団法人 川崎市産業振興財団(チーム受賞)
西村訓弘(三重大学 大学院医学系研究科 教授 社会連携担当・学長補佐)
花巻市起業化支援センター(チーム受賞)
間野純一(財団法人 千葉県産業振興センター チーフプロジェクトコーディネーター)
《功労者賞》
(産学官連携に関する地域内、組織内の体制整備、コーディネート活動の啓発・普及、人材の育成などに大きな成果を上げた個人またはチーム)
木村良臣(財団法人 北海道科学技術総合振興センター アドバイザー)
齋藤省吾(九州大学 名誉教授)
山口光彦(須坂市産業振興部 須坂市産業コーディネータ)
《コーディネータ特別賞》
大内権一郎(文部科学省産学官連携コーディネーター 神戸大学 連携創造本部)
松田文雄(文部科学省産学官連携コーディネーター 立命館大学 研究部 理工リサーチオフィス)
《奨励賞》
(今後の成果につながることが期待される優れた活動を行っており、コーディネート職への女性層の拡大を期待して選考委員会が今回設けた特別賞)
芝山多香子(東北大学 研究協力部 産学連携課 産学連携コーディネータ)

原山優子選考委員長の講評

モデルのない職種・コーディネータ
「仕事」の形が見えてきた

入賞者の皆さま、おめでとうございます。審査は大変だなと思いつつお引き受けしましたが、わくわくする楽しい仕事でした。

選考委員会は、コーディネータとは何かというところから始まりました。「コーディネーション(Coordination)をする人」と定義するのであれば、「コ(co-)」、「一緒にやる」ということがカギになります。さまざまな方向を向いたものをある種の方向に束ねていく。個々の力だけでは限界があるものを一緒にし、方向性を持たせることによって、余計力が出るようにする。そのストーリーをつくり、一緒にやるのがコーディネータだと思います。

大学のシーズと企業のニーズに合わせるのが基本的な考え方ですが、もう少し広くとりましょうということになりました。その多面的な活動の中で共通分母として使えるのが「イノベーション」という言葉です。いろいろなフェーズで活躍している方がいますが、ゴールとしてイノベーションにつながるような活動をする方たちすべてを対象としました。チームも含みます。また、次の世代の人たちを育てることに大きく寄与なさった方たちも表彰の対象とさせていただきました。

応募85件の中で女性が何と3件しかありません。これには考えさせられました。欧米ではどちらかというと男性より女性のほうがマジョリティーですが、なぜか日本は逆です。「私もやってみようかな」と思う人が出てくる呼び水とするため今回は女性を対象にした奨励賞を設けました。

コーディネーションという仕事は、既存のモデルのない、新しい職種です。それぞれの現場で試行錯誤を重ねて「仕事」そのものを創造し、年を経て、コーディネータの「仕事」の形が見えてきました。そういう見える形のところまで達成なさった方たちが、きょうここにいらっしゃったと思います。

コーディネータは主役ではなく、縁の下の力持ちですが、こういう仕掛け人がいないと、産学連携、技術移転の機会はなかなかできません。そういう意味で非常に責務の重い仕事です。

可視化する意義

コーディネータの仕事を可視化するという意味で、「イノベーションコーディネータ表彰」は非常に重要な賞です。これは選考委員全員の共通認識です。これを継続することによって、プロフェッショナルの仕事のやり方、仕事の流儀がみんなにわかるようになる。かつ、コーディネータという仕事につく方、プロフェッショナルが増えていくでしょう。また、博士号を取得した方たちの新しいキャリアパスとしても認知されていくことが期待されます。