2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
コーディネータ特別賞 大内権一郎氏
文化・環境の異なる教員・企業間の翻訳者
顔写真

大内 権一郎 Profile
(おおうち・けんいちろう)

文部科学省産学官連携コーディネーター/
神戸大学 連携創造本部
産学連携コーディネーター、客員教授

●受賞理由
神戸大学の産学連携の起点となった「アンケート調査」「一日神戸大学(シーズの出前)」「シーズコンペ」など実践してきた取り組みは特筆できる。今日の神戸大学の産学連携の基盤をつくった。

今回の特別賞の受賞に当たり、まず関係者の皆さま方に厚く御礼申し上げます。受賞を契機に、8年前の大学に配属されたころを振り返ってみました。RSP事業*1にかかわっていた財団法人新産業創造研究機構(NIRO)在籍中は、お付き合いいただいた企業はもちろん、教員も産学連携に熱心な方々がほとんどでした。ところが大学に実際に配属されてみますと、それは氷山の一角どころか、一握りの方たちであり、多くの教員は良くて無視、ともすれば反対を明確に意思表示される方もおられました(今は産学連携は当たり前の時代になりましたが)。そういう環境の中でもこの仕事を続けてこられたのは、多くの人たちの協力・支援のおかげと深く感謝するとともに、1人でできることの限界と、ネットワーク・人脈の大切さをあらためて認識させられました。

産学連携の主役はあくまでも教員と企業です。コーディネータはその間をつなぐ橋渡し役であり、文化・環境の異なる両者に対する翻訳者です。両者に気持ち良く、それぞれの役割を演じていただく環境づくりをすることが大きな業務であり、そのためにもフットワークの軽さ、聴く耳、立場を理解する姿勢、仲間と協力する態度が必要だと心掛けてきました。

強まるシステム化の要求

大学のシーズは、そのままでは世の中に役立つようなレベルにないのですが、磨けば光る原石はたくさんあります。だからこそ世の中のニーズを知り、製品化・実用化に優れている企業との産学連携で磨き上げていくことが必要なのだと思います。技術・シーズが社会の大きな流れ・ニーズの中にどう位置付けできるのかを見極め、そのためにどんな手法で、どんなアプローチをすれば良いのか、教員・企業両者と十分意見交換しながら、時にはリードしていくこともコーディネータには必要です。

これからは従来型の1対1のマッチングでは成し得ないシステム化の要求が従来以上に強まり、そのために複数の機関が参加するプロジェクト型がますます増え、コーディネータの役割はさらに大きくなります。今回の表彰式が1つの契機となり、コーディネータの必要性・重要性が世の中の人たちに認知され、その業務がビジネスとして成り立つことをも期待しながら、多くの方たちと手を結び、後継者育成も含め、これからも微力を尽くしていきたいと思います。

*1 :RSP事業:
地域研究開発促進拠点支援事業は、都道府県が地域の科学技術活動の活発化を図るために設立した財団等をコーディネート活動の拠点として整備するに当たり、国全体の科学技術基盤形成の視点から、科学技術振興機構が科学技術コーディネータを委嘱し、かかる拠点の活動を支援するもので、平成8年度に開始し平成17年度に終了した。