2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
コーディネータ特別賞 松田文雄氏
実用化へ向けたシナリオづくり
顔写真

松田 文雄 Profile
(まつだ・ぶんゆう)

文部科学省産学官連携コーディネーター
立命館大学 研究部
理工リサーチオフィス

●受賞理由
技術シーズとニーズのマッチング、研究開発から企業化までのシナリオづくり、資金の導入など一貫した総合的コーディネート力と多くの実績を高く評価した。

文部科学省産学官連携コーディネーターに着任してから約7年間。仕事は多岐にわたり、忙しくも楽しく、毎日走り回っています。その中で、電気二重層コンデンサ型瞬時電力低下補償装置、高効率バイオレメディエーション装置(微生物を使った石油汚染土壌浄化システム)や有機土壌診断システム、植物活性剤などの実用化を達成しました。しかし実用化につながらないままで終わったケースの方が多いのも事実です。なぜ、そうなるのか? 3年目あたりで考えました。いろいろな要因があるでしょうが、少し長いスパンで、研究シーズの発掘・育成の段階から、実用化へ向けたシナリオを十分に描けていないという問題があるのではないか―。

そこから「シナリオづくり」に取り組んできています。2007年度は「ビジネス・イノベーション・コミッティー」(BIC)を理工リサーチオフィス内につくり(メンバーは当オフィスのスタッフ)、研究シーズの実用化について検討会を数回行いました。テクノプロデューサー(当オフィスではコーディネータをこう呼んでいます)が、「自分としてはこの先生のこのシーズをぜひ実用化させたい」と説明し、どういうアクションが必要かを検討し、SWOT分析によってそのシーズの弱み・強みを総合的に分析する・・・といったブレインストーミングです。

実用化へ向けた道筋・シナリオ

2008年度は、これと科学技術振興機構の「シーズ発掘試験」の申請活動を連動させました。過去のシーズ発掘試験の不採択課題や科学研究費補助金のテーマなどから、テクノプロデューサー1人当たり10件を先生方と一緒に申請することを目指しました。10件の中で、「これをぜひ採択へつなげたい」と思う1件についてBICで論議しました。シーズ発掘試験は実用化へ向けた道筋・シナリオが描かれているかどうかがポイントの1つですので、そこを中心に論議しました。その結果を先生に還元。こうしたことにより、2009年度のシーズ発掘試験には本学から108件申請し、36件が採択されるという好成績となりました。

2009年度は、文部科学省産学官連携コーディネーターの「目利き・制度間つなぎ担当会議」の世話役を仰せつかったのを機会に、全国のコーディネータの皆さんと一緒に、研究シーズの「目利き」や、各種競争的資金の整理、実用化シナリオ、人材育成などに関する「ツール」をつくろうとしています。

最近、私自身は、次世代のエネルギーシステムとしての自律分散型直流スマートグリッドやアンチセンスRNAの機能を活用した新たな核酸医薬の研究、さらに農業・食糧生産、琵琶湖など、社会的な要請が大きくかつ異分野融合でないと解決できないプロジェクトの立ち上げにもかかわり始めています。これらは、非常に未来的であると同時に、幅が広く、かつ奥が深いテーマであり、その成功へ向けては長期のシナリオづくりがいっそう必要となってきています。