2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
イノベーションコーディネータ賞・科学技術振興機構理事長賞 財団法人 川崎市産業振興財団
大学研究室の「ニーズ」に着目
●受賞理由
大学のシーズだけではなく大学研究室の「ニーズ」に着目。大学の研究機器、実験機器等を中小企業の技術力で開発し、研究シーズの具現化を推進するなど、企業とのマッチングの新たな方法を切り開いた。

川崎市産業振興財団は、中小企業・ベンチャー企業支援を目的に各種事業を行っている。支援メニューの紹介、技術相談、ビジネスマッチングなど、“川崎型” ワンストップサービスの拠点である。

特徴的な取り組みは、起業家・中小企業の新製品・新事業のビジネスプラン発表の場「かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場」の開催。年間6回開催(通算61回、2009年10月現在)し、日本全国からビジネスプランを募り、起業、事業化のチャンスに応えている。

また、若手エンジニアの登竜門として「かわさきロボット競技大会」を開催している。今年も全国の企業や大学から250チームが参加し、ロボットの熱き戦いが繰り広げられた。

このほか「出張キャラバン隊」を組織し、当財団職員・コーディネータのほか、関東経済産業局・川崎市の職員等で、企業訪問活動を行っている。

産学連携・試作開発促進プロジェクト

表1 川崎市産業振興財団がコーディネートした主な開発事例

・東京農業大学「福祉農業作業車」→大学発ベンチャー企業誕生
・東京都市大学(旧武蔵工業大学)「インターネット・モバイルロボット」
・東京工業大学「小型エアコンプレッサー」
・横浜国立大学「スパイラルモータ」
・東京工芸大学の技術シーズを活用した「太陽光発電学習システム」(写真1
・日本医科大学「リハビリ用電気刺激装置」(写真2
・東京都市大学「神経活動電位チャンバー」「生理食塩水流量計」など

産学連携といえば「大学のシーズを中小企業に移転する」、あるいは「中小企業のニーズに大学のシーズを活用する」ことが定石とされているが、発想を逆転して、大学のシーズだけではなく大学研究室の“ニーズ” に着目、大学の研究機器、実験装置等を中小企業の技術力で開発する取り組み「産学連携・試作開発プロジェクト(以下:試作PJ)」を2004年に発足した。

写真1

写真1  東京工芸大学の技術シーズを活用した
     「太陽光発電学習システム」



写真2

写真2 日本医科大学「リハビリ用電気刺激装置」

大学研究室では、加工・製作が難しい部品や機器、理論的には完成しているものの実証データを得る手だてが無く、実験装置を試作したいなど、大学にも“ニーズ”がある。

そのニーズに対応できる技術力・シーズのある中小企業が、川崎に集積していることから、両者を結び付ける仕組みとして「試作PJ」を組織し、24大学、中小企業21社のコアメンバーを中心として活動を続けている。

顔の見える産学連携をキャッチフレーズに、企業による大学研究室の訪問だけでなく、中小企業の現場に、大学研究者・コーディネータが訪問する「大学キャラバン隊」を実施するなど、大学・企業双方向の交流活動を行っている。大学の研究者・コーディネータ・職員との密な情報交換を通じて、開発ニーズを発掘・コーディネートし、具体的な研究成果を生むとともに、その技術シーズを中小企業に移転し、新製品開発へとつなげる事例が生まれている(表1)。

(執筆:櫻井 亨)

財団法人川崎市産業振興財団
設立:昭和63 年4 月(川崎市産業振興会館の開館:昭和63年7 月)
事業開始:昭和63 年8月1日(かわさき新産業創造センターの開設:平成15 年1 月)
所在地: 【川崎市産業振興会館】川崎市幸区堀川町66 番地20
【かわさき新産業創造センター】川崎市幸区新川崎7番7号
理事長:君嶋 武胤
基本財産:1億円(全額川崎市出捐)
<産学連携チーム>
新産業振興課長 櫻井亨、産学連携担当主任 酒井賢二、産 学連携担当 落合謙二、クラスターコーディネータ 愛英夫