2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
功労者賞 齋藤省吾氏
起点は大学の研究成果のあらわな姿を知ること
顔写真

齋藤 省吾 Profile
(さいとう・しょうご)

九州大学 名誉教授



●受賞理由
平成8年に地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業*1の初代コーディネータとして着任以来、プロジェクトの提案・構築、事業化までの一貫したコーディネート体制を構築するとともに、公設試験研究機関(公設試)の研究者をプロジェクトコーディネータとして養成するなど永年に渡り人材育成に貢献した。

5年半も前にRSP事業を終えたOBの私が思わぬ賞を頂き感謝しています。コーディネータ賞を受賞された現役で若手の方々の喜びを目の当たりにして、この表彰制度の意義を実感しました。

この機会に、若手とベテランの役割について一言述べたいと思います。このような問題意識を持ったきっかけは、産学官連携の成果として商品(コモディティ)技術分野の小粒なものが増え続けることに気が付いた点にあります。これは悪いことではないのですが、大学本来の成果を活用したものとしては少し寂しいと思います。この分野は本来、公設試が得意とした分野ではないでしょうか。少し前に科学技術振興機構(JST)が設けた地域ニーズ即応型支援事業では、公設試が主役に位置付けされています。

専門家が整理したデータベースは有効

申し上げたいことは、大学の研究成果のあらわな姿を知る必要があるということです。私どもの仲間では、科学研究費補助金やそのほかの基礎研究支援で実施された研究の成果、できれば研究経過の姿を知りたいと考えています。JSTのデータベースが存在していますが、これは研究者自身がスマートに整理した申告を基にしています。研究者の生の報告書を専門家が評価し、整理した形のデータベースがあれば、独創的な技術の芽や将来の中核技術の候補を見つけるのに非常に有効なはずです。これに近いデータベースをシンガポール国立大学は公開し、この第2部には個々の研究者が産学連携に参加できる分野、課題まで公開しています。表彰式を兼ねたフォーラムのパネル討論で、ERATOやCRESTの研究成果をコーディネータに公開することをJST にお願いした理由はここにあります。

独創的な技術の芽や近い将来の中核技術の候補の抽出に有効なデータベースを作るには、少なくともベテランのコーディネータの参加が必要です。これだけでは不十分で、評価された研究者のOBの手助けが必要です。大掛かりな作業になりそうですが、できるところから手を付けて、それを若手コーディネータに渡して一緒に仕事をすることがOBの役割の1つと考えています。

*1 :RSP事業:
地域研究開発促進拠点支援事業は、都道府県が地域の科学技術活動の活発化を図るために設立した財団等をコーディネート活動の拠点として整備するにあたり、国全体の科学技術基盤形成の視点から、科学技術振興機構が科学技術コーディネータを委嘱し、かかる拠点の活動を支援するもので、平成8年度に開始し平成17年度に終了した。