2009年11月号
編集後記

「有効性」をうんぬんする前に、産業界で「活用しよう」という意識が先決―産学官連携は有効か、大学知的財産部は必要かなどの話が時折聞こえてくる。平成20年度の大学の技術移転収入は24億円、前年度に比べて25%前後の増加となっているものの、財務を預かる役員等からは、組織そのものの存在の是非をうんぬんする発言もあるとか。日本セラテックの川田会長は、講演の中で「上場できたのは産学官連携のおかげ」と言い切っておられる。「大学の成果はすぐに活用できない」などという前に、川田会長のように「産学官連携により会社の業績向上を図りたい」という強い意識を産業界が持つことが先決ではなかろうか。これまでの科学技術政策が無駄と言われないためにも、大学側の意識改革のみならず、産業界の意識改革も推進する必要がある。

(編集委員・高橋 富男)

大型の産学官連携事業にかかわって間もなく4年になる。アカデミアのシーズを育成して実用化を目指す事業を内側から眺めていると、過去に経験したことのないさまざまな事柄が見えてくる。詳しくは、いずれ記事に取り上げるつもりだが、この種の事業の成否が、企業が主導する事業化シナリオをいかにして描き出すかにかかっていることを知った。

ここでの自らの役割を振り返ると「おせっかい役」と位置付けて良いかもしれない。立場にとらわれずに、ありがた迷惑にならないぎりぎりのところで、おせっかいを焼くことを実践してきたように思えるのだ。“ノイズ!” と忌み嫌われることも恐れず、適度なノイズはかえって情報を際立たせると開き直って創発を促す。こんなところが勘所だろうか。事業も残すところ1カ月、さて成果のほどは。

(編集委員・谷田 清一)

ワクチン接種が始まり新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)についての報道がにぎやかだ。豚肉消費への影響を懸念する関係業界の要望などから「新型」と呼ばれているが、英語圏では「スワイン(豚)フルー(インフルエンザ)」が一般的。国立感染症研究所感染症情報センターは「新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況」を公表している。マスメディアは「豚」と表記できなくても、せめて「H1N1」は使えるのではないか。不思議なのは、こうしたことを研究者らが強く主張しないことである。「学」の発信力が弱いこと、また「学」と社会のコミュニケーションが上手にできていないことはこんなところにも表れている? 「新型」という呼び方と「理科離れ」は関係ないのだろうかと、ふと考えた。

(編集長・登坂 和洋)