2009年12月号
特集2  - 酒造りで醸成する連携のこころ
甘い香りを保つ奄美黒糖焼酎の新製法
顔写真

安藤 義則 Profile
(あんどう・よしのり)

鹿児島県工業技術センター
食品工業部 主任研究員


奄美群島で造られる黒糖焼酎に新しい製法が登場した。鹿児島県工業技術センターが開発したもので、甘い香りを保つと同時に労力を大幅に軽減した。

鹿児島県工業技術センターは黒糖焼酎の新しい製法を開発し、メーカーに供与した。

奄美黒糖焼酎は、奄美群島の5島(奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)でのみ製造が許された本格焼酎である。現在、メーカーは27社。主原料は黒糖であるが、その大きさは25cm×15cm×5cm のブロック状が一般的である。従来の製法では、黒糖ブロックが冷水に溶けにくいという理由などから、水を加えて煮沸させながら攪拌(かくはん)し、その後完全に冷めてから黒糖溶解液をもろみに投入していた。すべてのメーカーがこの製法で製造しており、黒糖の溶解作業には大変な労力と時間をかけていた。また、煮沸している間に黒糖特有の甘い香りが消えてしまうため、黒糖の香りを焼酎に付けられないかといったニーズもあった。

図1 開発の概念図

図1 開発の概念図

そこでわれわれは、黒糖焼酎メーカーの試験協力を得ながら、もろみの中に黒糖ブロックを直接投入する新製法について検討した(図1図2)。その中で、黒糖ブロックはもろみの中で徐々に溶解するが、酵母の増殖・発酵に必要な糖は十分に供給され、従来法と遜色(そんしょく)ないアルコール収得であることを明らかにした。また、黒糖がもろみの底部に堆積(たいせき)するため、濃糖条件による酵母の発酵阻害が考えられたが、現在市販されている焼酎酵母にはほとんど影響がないことを確認した。このように、メーカーが安心して導入できるようデータの蓄積を行い、実用化に至った。

酒質の多様化が可能
図2 新製法による製造の様子

図2 新製法による製造の様子

新製法の利点として [1]黒糖香豊かなすっきりとした味わい [2]黒糖溶解作業の労力軽減 [3]黒糖溶解に要する燃料の削減、などが挙げられる。現在、メーカー2社が新製法による焼酎を新商品として発売している。また、ほかの複数のメーカーでも試験製造が行われており、さらなる普及が見込まれる。今後、新旧両製法を使い分けることで黒糖焼酎の酒質の多様化が可能となり、黒糖焼酎の需要拡大が期待できる。