2010年1月号
特集  - 希望の低炭素社会
低炭素社会づくり研究開発戦略
革新的環境エネルギー技術の開発と社会システムの変革
顔写真

谷 広太 Profile
(たに・ひろた)

文部科学省 研究開発局
海洋地球課 地球・環境科学
技術推進室長


地球温暖化は現在国際社会が挑戦すべき最重要課題の1つとなっており、2007 年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4 次評価報告書の発表でその対応の重要性・緊急性が広く共有された。昨年7 月に開催されたラクイラサミット首脳宣言では、温室効果ガスの排出量を2050 年までに先進国全体で80%以上削減するとの目標が支持され、また9 月の国連気候変動サミットの場では鳩山総理大臣が、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提として、2020 年までに1990 年比25%削減を目指すことを宣言した。デンマーク・コペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15 回締約国会合(COP15)においては、法的拘束力を持つ国際的枠組みの合意には至らなかったものの、長期的な指針として産業化以前からの気温上昇を2 度以内に抑えるべく削減行動をとる、先進国全体で2020 年までに年間1,000億ドルの資金動員を途上国に対して行うことを目標とする等の内容を含む「コペンハーゲン合意」に留意することが決定された。

わが国における地球温暖化対策については、地球温暖化問題に関する閣僚委員会を設置し、政府全体の温暖化対策を総合的に検討しているところであるが、文部科学省としても、こうした状況の中で、低炭素社会の実現に向けた研究開発を総合的に進めるため、昨年8月に「文部科学省低炭素社会づくり研究開発戦略」を策定した。本戦略を構成する主な研究開発戦略は次のとおり(括弧内は関連する主な施策、金額は22 年度予算案の額)。

[1] 社会シナリオ戦略

低炭素社会の実現に資する新技術に着目しつつ、人文・社会科学と自然科学の研究者の知見を結集し、産業構造、社会構造、生活様式、技術体系等の相互連関や相乗効果の検討等を行い、低炭素社会実現に向けた研究開発の方向性等を提示する。

(低炭素社会実現のための社会シナリオ研究:3 億円)

[2] フィールド実証戦略

新たな環境対策技術や既存技術の組み合わせによる効果を評価するため、試験的に社会システムの中で実証・適用させるフィールド実験を実施する。

    (気候変動に対応した新たな社会の創出に向けた
    社会システムの改革プログラム:5 億円)

[3] 緩和戦略

温室効果ガス排出量の大幅な削減に貢献する革新的な環境技術の研究開発を実施する。温室効果ガス削減に大きな可能性を有する先端的な技術の発掘、新原理の創出を推進することで、科学的・技術的知見の統合によるさらに大きなブレークスルーを図る。

(先端的低炭素化技術開発:25 億円)

[4] 適応戦略

気候変動に伴う環境変化への適応に関する研究開発を推進する。観測・予測データの収集からそれらのデータを解析処理するための共通的プラットフォームの整備・運用を通じた具体的適応策の評価までを、関係府省・地方自治体・関連研究機関等との連携を取りつつ、統合的・一体的に推進することにより、地域の特性に対応した適応策の検討に資する。

(気候変動適応戦略イニシアチブ:16 億円)

[5] 外交戦略

わが国の優れた環境科学技術による国際協力・科学技術外交を展開し、開発途上国における人材育成や環境問題の解決に貢献する。

(地球規模課題対応国際科学技術協力事業:18 億円)

低炭素社会の実現のためには、革新的な環境エネルギー技術の開発に加えて、社会システムの変革が不可欠であり、大学や研究開発独立行政法人を所管する文部科学省の担うべき役割は非常に大きい。文部科学省としては、大学等のポテンシャルを最大限に活用しつつ、各府省、産業界等との連携・協力の強化を図り、本戦略を効果的、効率的に推進することにより、低炭素社会実現に貢献していくこととしている。