2010年2月号
単発記事
ソニーと北九州市が協働で実施する小型電子機器の回収実験
顔写真

横山 博史 Profile
(よこやま・ひろし)

ソニー株式会社 調達本部
第1調達部門 機構部品1部
資源循環担当部長

都市鉱山などとも呼ばれるように、不用になった携帯電話など小型電子機器に含まれるさまざまな金属材料は貴重な資源である。この貴重な金属の有効活用を目的にソニー株式会社と北九州市が連携して、小型電子機器回収の実証実験を行っている。

北九州市における電子機器回収実証実験の背景と意義

ソニー株式会社(以下、ソニー)は1955 年日本初のポータブル・トランジスタラジオを発売以来、多数の小型電子機器を世の中に送り出してきた。この小型電子機器の製造においてレアメタルを含む多種の金属材料は小型電子機器に必要不可欠であるが、その多くは輸入に頼っている。2000 年代に入り世界経済が大きく変動する中、資源枯渇、資源ナショナリズム、ならびに環境等の課題が山積みされ、これら金属材料の安定的な確保、代替材料の開発、さらにはリサイクルの仕組みとその技術開発等は、環境負荷低減ならびに資源の確保という観点で企業としても国としても極めて重要な課題となってきた。そのような中、不要となった小型電子機器のほとんどが廃棄処理され資源回収されない事実が動機となって、小型電子機器に含まれる貴重な金属を資源として有効活用するため、2008 年9 月1 日より行政である北九州市と民間企業のソニーが連携して実証実験を開始した。持続可能な社会の実現に向け、官民が共同で環境負荷低減を率先して実践することは有意義だと認識している。

実験の特徴
図1 回収実験全体の構図

図1 回収実験全体の構図

2009年7月、経済産業省「レアメタル確保戦略」が発表され「使用済小型家電からのレアメタルリサイクルモデル事業」の公募が国からなされたが、本実験は公募事業と異なり、基本は民間主体であり、行政のサポートを受けた実証実験である。実験は回収の「社会システム実験」と経済性検証の「回収に当たっての経済性実験」の2つに大別され(図1)、ソニーを含む全メーカーの小型電子機器を対象とした。本実証実験の特徴は次の通りである。

(1) 人口100 万人前後の大都市(政令指定都市)での比較的長期にわたる回収実験
(2) 継続的な実施を前提とした「回収→処理→再生→使用(新製品へ)」の資源循環全体として事業性評価
(3) 事業性検証のための技術開発パートナーとして、非鉄金属リサイクル事業を手掛ける日本磁力選鉱株式会社が参画

実験の基本コンセプトと目的

実証実験の基本コンセプトは2 つある。1つ目は「不要になった小型電子機器は価値ある資源」である。物が溢れ成熟した現在社会でこそ、企業は製品を消費者に使っていただくことのみならず、製品ライフ終了後まで製品に配慮することが新しい文化であり、不要となった製品を生産材料に再生させ、再び新製品に投入する循環を通して生活を豊かにする必要がある。2 つ目は、「経済的に成立できる資源循環」である。資源循環は低炭素社会への1 つの解ではあるが、継続的なシステムの成立条件として経済的に付加価値を創出する必要があり、かつ再生された材料が価格競争力を持つことが要求される。すなわち、市場の経済原理に任せた資源循環を一歩進め、いかに低コストで効率の良いリサイクル・チェーンを構築できるかが実験の目的となる。

行政との協働の意義

実証において得る結果が想定と異なる場合は多々あるが、本実験開始直後に直面した問題は「想定回収量に届かない」という事実であった。経済性検証のために「回収された小型電子機器=資源」ととらえ、相応の回収量が可能と想定したが、「社会システム実験」の重要性を再認識する結果となった。解は「いかに市民の理解を得て協力していただくか」の周知の徹底であり、現在北九州市から全面的協力を頂き、さまざまな手段で市民への周知を図ると同時に、地元ならではの地元企業、市民、および行政の連携を基本にした各種サポートをも頂いている。「社会システム実験」の成立には行政がその地で培ってきたきめの細かい市民とのインターフェースが極めて重要であり、そのようなインターフェースは一企業が一朝一夕で構築できるものではなく、行政との協働の意義をここに強く感じている。

回収実験の経過と展望
図2 回収品内訳(個数比率)

図2 回収品内訳(個数比率)

実験は2009 年3 月でいったん終了後、2009年4 月から延長し、通算約1 年半が経過した。2010 年1 月時点で市内ボックス回収74 拠点のほか、市立大学での回収や地元企業内での回収などの協力を頂き、回収量も漸次増加すると同時に市民の方への周知もなされてきている。回収品目は多岐にわたるが(図2)、データを見る限り携帯電話機の回収個数比率が一番高く、個人情報の保護ならびにその取り扱いに最も注意を払い、鍵付き専用回収ボックスを設置することで携帯電話機の回収から資源化処理工程までの保安に配慮した。また経済性検証は「回収→処理→再生→使用(新製品へ)」チェーン検証のため、回収した金の一部をソニーの半導体工場で小型電子機器用集積回路に使用し、商品に再投入する仕組みを確立するなど、現在も鋭意リサイクル技術開発を中心に行っている。