2010年3月号
特集  - 環境都市 5つのアプローチ
家庭部門の省エネ
横浜市 環境家計簿でCO2を可視化

岩間 隆男 Profile
(いわま・たかお)

横浜市 地球温暖化対策
事業本部 地球温暖化対策課
担当係長

横浜市の部門別CO2 排出量の比率を見ると、家庭部門が22.7%で全国平均(13.5%)を大幅に上回っている。さらに運輸部門(22.4%)の半分はマイカーなので市民生活による割合が大きい。省エネ家電への買い換え、太陽光・太陽熱利用システムの導入、エコカーへの乗り換えなどが促進されるには、市民1人ひとりがライフスタイルを見直すことが必要である。啓発事業では、市民が日常生活でどれくらいエネルギーを消費しているかに気付いてもらうため、環境家計簿を導入してCO2 の可視化を進めている。

横浜はCO-DO30(コードサンジュウ)

平成20 年1 月、横浜市は「横浜市脱温暖化行動方針:CO-DO30(コードサンジュウ)」(以下CO-DO30)を策定し、平成37 年度までに市民1人当たりの温室効果ガスを30%減らす(平成16 年比)目標を掲げた。人口367万人を抱える横浜市内のCO2排出量は、産業部門と比べて、家庭部門およびマイカー(運輸部門の排出量の半分をマイカーが占める)など市民生活を起因とする割合が大きいことから、産業部門の排出量削減に向けた取り組みとともに、市民1 人ひとりがいかに排出量を減らすことができるかが目標達成に向けた課題となっている(図1)。

図1 横浜市と全国の部門別C02 排出量(2005年度)

図1 横浜市と全国の部門別C02 排出量(2005
     年度)

家庭部門の排出量を減らすためには、省エネ家電への買い換えや太陽光・太陽熱利用システムの導入、運輸部門ではエコカーへの乗り換え等を進める必要がある。国は家電のエコポイントやエコカー減税等により、買い換え需要を喚起している。横浜市も太陽光・太陽熱利用システムに対しての補助を行っているが、限られた財源の中で補助できる件数は限られている。そもそも、普段から省エネルギー等の必要性を認識していなければ、省エネタイプへの買い換えには結び付きにくい。まずは市民の皆さまに日常生活でどれくらいエネルギーを消費しているか気付いていただき、ライフスタイルを見直すことを第一歩と考えている。本稿では家庭での省エネを進める啓発事業を中心に紹介する。

家庭の省エネにチャレンジ

平成20 年2 月、東京大学大学院松橋隆治研究室との協働取組として「エコハマ省エネチャレンジプロジェクト」という実験を行った。これは4 週間にわたり、家庭にある照明や自動車、エアコン、給湯器などのエネルギー消費機器の使用時間やごみの排出量などについて、毎日記録を行うもので、134 世帯のモニターが取り組んだ。前半2週間は今までと同じように生活し、後半2 週間は省エネを意識して生活するという方法をとった。自分たちが、毎日どのくらいエネルギー消費機器を利用しCO2が排出されるかを把握することにより省エネ意識を高めたところ、参加世帯平均で15.4%ものCO2排出量削減につながった。

これらの取り組みを踏まえ、平成20 年の11 月から翌年2 月にかけて自治会・町内会を通じて約4,000 世帯に「エコハマ環境家計簿」を配布し取り組んでいただいた。これは省エネ行動と合わせて、月に一度電気・ガス・水道の検針票から、今年と前年同月の使用量データを読み取り、環境家計簿に記録し比較するものであった。この方法は検針票さえあれば、省エネ行動の成果を前年比較によりひと月からでも確認することが可能であり、市民への負担感は少ないと考えられた。うち前年と比較可能な約1,300世帯のデータを分析したところ、4 カ月間の平均CO2排出量削減率は5.6%となった。取り組んだ市民からは「環境家計簿をつけることでこまめな消灯や節水など気を付けて行うようになった」という声が寄せられた。

前述の「エコハマ省エネチャレンジプロジェクト」は、環境への意識が高いモニターが短期間集中的に取り組んだのに対して、「エコハマ環境家計簿」では一般の市民が4 カ月間取り組むという違いがあり、削減率には差がある。しかし、CO2の「可視化」により、家庭での省エネ意識が高まり、着実にエネルギー消費を減らせることが明らかになった。「エコハマ環境家計簿」は、平成21 年度で市内の約1 万世帯に配布し取り組んでいただいている最中であり、平成22 年度にはさらに1 万5,000 世帯に広げようと考えている(図2)。

図2 エコハマ環境家計簿(結果例)

図2 エコハマ環境家計簿(結果例)

小学生も省エネにチャレンジ

平成16 年度からは小学生を対象とした「子ども省エネ大作戦」にも取り組んでいる。これは夏休み期間中に市立の小学3~6 年生の児童が各家庭のリーダーとして省エネ行動を実践することにより、子供から家庭での省エネ意識・行動を広げようとするものである。夏休み終了後には各児童が「エコライフ・チェックシート」で取り組み度合いを自己評価し、CO2の削減効果も試算している。初年度の参加者は約8,000人であったが、平成21年度は、過去最高の約3 万1,000 人にのぼり、削減効果は約615t-CO2に相当した。この事業には東京都市大学中原秀樹研究室の学生のご協力により、地球温暖化問題から省エネを取り組む意義について、学生ならではの楽しい出前授業も行っていただいている。

エコ運転の普及「E1グランプリ」

家庭からのCO2排出量削減を考えるとき、照明・家電製品と並び、自家用車に対する対策も重要である。平成21 年8 月に本社を創業の地である横浜に移転した日産自動車株式会社と横浜市は、電気自動車の普及をはじめとする総合的な自動車交通施策として、「YOKOHAMA Mobility “ProjectZERO”」を協働して推進している。この取り組みは、単なる自動車単体対策にとどまらず、ITS(高度道路交通システム)を活用した交通流対策や交通需要マネジメントなども組み入れた総合プロジェクトであり、一部の取り組みには東京大学からの協力も得ている。

図3 E1グランプリ

図3 E1グランプリ

プロジェクト期間は5 年を予定しているが、事業化されたものの1 つが「E1 グランプリ」である。これは、市民へのエコ運転の本格的な普及を目的として、満タン法や燃費計などを用いて誰もが参加できる「燃費競争」、日産のカーナビゲーションシステムを応用したエコ運転簡易診断装置を用い「エコ運転診断」などを行うサービスである。これまで、横浜市のイベントや自動車教習所などで、実際の講習が行われている(図3)。

市民の力で脱温暖化

横浜市は平成20 年7 月に「環境モデル都市」に選定されている。その理由は「CO-DO30」という大幅な削減目標を掲げ、再生可能エネルギーの利用を10 倍に普及するなどの先進的な温暖化対策を目指していることに加え、全市のごみ排出量を30%削減する「ヨコハマはG30」を5 年前倒しで達成した実績がある市民の力によって、低炭素都市を実現していく姿勢が評価されたからだと受け止めている。

今後は、市民の力を原動力に、事業者、大学、行政が一体となって目標達成に向けて取り組む横浜の姿を、「環境モデル都市」の大都市型モデルとして内外に発信していきたいと考えている。