2010年3月号
特集  - 環境都市 5つのアプローチ
森林を活用する
北海道下川町 森林バイオマスを利活用

樋口 知志 Profile
(ひぐち・ともゆき)

北海道下川町 地域振興課地域
振興グループ 環境モデル都市
推進室 主事

人口約3,800人、町の面積の9割を森林が占める北海道下川町は森林と共生する低炭素社会を目指している。伐採と植林を繰り返す持続可能な循環型森林経営が基本だが、適正な森林管理の認証取得、木質バイオマスの利用、早生樹「ヤナギ」の試験栽培など積極的なCO2 吸収・削減策を進めている。

下川町の概要
写真1 下川町の森林

写真1 下川町の森林

下川町は、北海道北部に位置し、面積は644.2km2で、そのうち約9 割を森林が占めている(写真1)。夏は30℃を超え、冬は— 30℃を下回る日もあり、年間の寒暖差が60℃を超える地域である。かつて1 万5,000人を超えた人口も銅山の休山、JR 線の廃止、林産業の衰退、少子高齢社会の到来などにより、現在は約3,800人となっている。

主な産業は、農業、林業・林産業であり、氷で作ったランプ「アイスキャンドル」発祥の地である。また、スキーのジャンプ競技では多くのオリンピック選手を輩出している。

循環型森林経営と地域の活性化
図1 循環型森林経営

図1 循環型森林経営

町の基本財産の形成と自主裁量が可能な森林を確保するため、昭和28 年、国有林野整備臨時措置法により1,221ha の国有林を取得し、本格的な町有林経営を始めた。

しかし、翌年の洞爺丸台風によって森林全体が壊滅的な被害を受け、天然林択伐施業から皆伐による人工造林施業に経営計画の変更を余儀なくされた。

森林管理の基本的な考え方は、伐採と植林を永久に繰り返す持続可能な循環型森林経営である(図1)。伐期を60 年ととらえ、毎年50ha の植林と伐採を繰り返すには3,000haの面積があれば循環型森林経営が実現でき、機会あるごとに森林を取得し、現在、天然林約1,500ha、人工林約3,000ha を町有林として所有している。

継続的な森林整備は、雇用の場の確保、木材の安定供給、林道網整備による公共事業の創出やCO2吸収量の増大にもつながっている。

低炭素社会の構築に向けた「環境モデル都市」
図2 次世代型「北の森林共生低炭素モデル社会」創造プロジェクト

図2 次世代型「北の森林共生低炭素モデル社会」
     創造プロジェクト

平成20 年7 月、国が低炭素社会への転換を進めるため、先駆的な取り組みにチャレンジする「環境モデル都市」に認定された。

これは、長年にわたる循環型森林経営を基盤として、適正な森林管理の証しであるFSC 森林認証の取得や木質バイオマスの利用、早生樹「ヤナギ」の試験栽培などによって、大幅なCO2吸収および排出削減など、地球環境を守る鍵である森林バイオマスの総合的な利活用やこれまでの地域づくりが評価されたものである。

環境モデル都市の具現化に向け、これまでの取り組みをさらに発展させるとともに新たな取り組みにチャレンジし、「北の森林共生低炭素モデル社会」の構築を目指している(図2)。

バイオマス資源の活用

豊富な森林資源を背景に木質バイオマスボイラーの導入を進めており、平成17年3 月、公共温泉へのボイラー導入以降、幼児センター、トマトの育苗施設にも導入している。今年3 月には、複数の公共施設を1 つのボイラーで結ぶ「地域熱供給施設」が完成する。

燃料は、河川などの支障木や林地残材など未利用だったものであり、チッパー機やストックヤードを備えた木質原料製造施設の整備も行った。

また、近畿大学の井田民男准教授が開発した「バイオコークス」は、植物由来のバイオマスを低温高圧によって製造する固形燃料で、平成20 年2 月、経済産業省の実証モデル事業の採択により、近畿大学を中心とした産学官連携によって、車載型バイオコークス製造装置と農業用ハウス加温用のボイラーを開発した。雑草のイタドリを原料としてバイオコークスを製造し、町内の農家の協力を得て、冬期間のトマト栽培を行っている。

化石燃料の代替としてバイオマスを利用することにより、CO2排出の大幅な削減が図られる。

山村と都市との連携による「カーボンオフセット」

森林が持つ多面的機能が注目を集める中、北海道内の足寄町、滝上町、美幌町の3 町と「森林バイオマス吸収量活用推進協議会」を平成20 年7 月に設立し、地域資源である森林バイオマスのCO2吸収機能などを活用して地域の活性化を図ろうと、専門家7 名による制度設計委員会を設置し、カーボンオフセットの制度設計に取り組んでいる。

CO2の吸収・削減量を資金化するには、より高い信頼性の確保が必要なことから、国のオフセット・クレジット(J-VER)制度に準拠することとし、森林吸収系の「間伐促進型プロジェクト」と排出削減系の「木質バイオマスへのボイラー燃料代替プロジェクト」にそれぞれ事業が登録されている。

昨年4 月には、音楽家の坂本龍一氏が代表を務める一般社団法人moretrees と、また7 月には株式会社ジェーシービーと「森林づくりパートナーズ基本協定」を締結した。

森林が持つ「新たな価値」を地域資源と活用し、森林整備を加速させ、CO2の吸収量増大を図っていく。

持続可能な循環型社会の構築を目指して

森林を核とした産業創造は、平成10 年から始まった産業クラスター創造活動の推進によって実践されており、循環型森林経営を基盤に産業間の連携と人的ネットワークを形成し、持続可能な地域社会の創造による自律的発展を目指すものである。

また、環境モデル都市を具現化する原動力は、循環型森林経営を背景に森林資源を無駄なく活用しようとするところにある。

将来にわたって豊かな森林資源を次世代に引き継ぎ、環境モデル都市関連事業を各種施策と連動させ、産業の創造と雇用の創出を図り、地球温暖化対策を地域の活性化に結び付け、持続可能な循環型社会の構築を目指していく。