2010年3月特別号
特集  - 産学連携に関する平成22年度予算
文部科学省
研究成果をイノベーション創出につなげる

文部科学省 研究振興局
研究環境・産業連携課


産学官連携は、大学等における研究成果をイノベーション創出につなげていくための重要な手段である。しかしながら、世界規模の深刻な経済不況の影響等を受け、その活動をめぐる状況は厳しい局面を迎えつつある。そのような中、平成21 年12 月に閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」では、イノベーション創出のための制度・規制改革、知的財産の適切な保護・活用や、産学連携など大学・研究機関における研究成果を地域の活性化につなげる取り組みの推進がうたわれている。また同年11 月には、文部科学省科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会において「第四期科学技術基本計画の策定に向けた重要事項(審議のまとめ)」が取りまとめられており、産学官連携の推進に関する今後の重要課題に関する検討・審議の結果が報告されている。

これらの観点を踏まえ、研究環境・産業連携課では、産学官連携の推進に係るこれまでの取り組みを一層推進するとともに、新たなフェーズに向けたその深化を図るため、平成22 年度に以下の施策を実施する。

1. 産学官連携のさらなる推進
大学等における産学官連携機能強化(図1

大学等の研究成果を効果的に社会につなぐため、国際的な産学官連携活動や特色ある産学官連携活動の強化、産学官連携コーディネーター配置等の支援により、大学等が産学官連携活動を自立して実施できる環境の整備を図る「イノベーションシステム整備事業【大学等産学官連携自立化促進プログラム】〔26 億円〕」*1を実施する。

図1 大学等産学官連携自立化促進プログラム

図1 大学等産学官連携自立化促進プログラム

大学等の研究成果の特許化支援・利活用促進

独立行政法人科学技術振興機構(JST)において、特許の海外出願支援や産学のマッチングの場の提供等の各種施策により、大学等の研究成果の技術移転活動や知的財産活動に対する専門的な支援を行う「技術移転支援センター事業〔23 億円〕」を実施する。

大学等の成果を活用した
産学共同研究推進のための総合的支援

大学と企業とのマッチング段階から本格的な共同研究開発段階に至るまで、課題ごとに最適なファンディング計画を設定し、大学等の研究成果を実用化につなぐための産学共同研究を総合的に支援する「研究成果最適展開支援事業(A-STEP)〔166 億円〕」*2(JST)を実施する。特に、平成22 年度は、研究の初期段階にあたる技術シーズにおける小規模の産学連携活動を支援する「探索挑戦ステージ」を創設するとともに、起業意欲のある若手研究者による大学発ベンチャー創出に向けた研究開発の支援スキームを開始する。

イノベーション加速に向けた
産学共創による研究開発力の強化

産学による基礎研究基盤強化や技術開発基盤強化のための研究開発、革新的な基礎研究成果を基にした産学による大規模な研究開発など、特にイノベーションを加速する効果の高い産学による取り組みを支援する「産学イノベーション加速事業〔62 億円〕」*3(JST)を実施する。

2. 新たなフェーズに向けた産学官連携の深化

昨今のオープンイノベーションの進展等に伴い、わが国の産学官連携が新たなフェーズを迎える中、産学双方のスパイラルな連携・発展を目指す新たな連携体制の構築や、「知的財産推進計画2009」等を踏まえたわが国の知的財産政策のさらなる推進が求められている。そのため、研究環境・産業連携課では、平成22 年度に以下の新規施策を実施する。

産学共創基礎基盤研究(図2

文部科学省では、今後、産学連携を基礎研究にまで拡大して産業界が抱える課題の解決に資する知見の創出を支援するとともに、知見を共有するための産学の緊密な対話を促す「共創の場」(「知」のプラットフォーム)の構築を推進することとしている。そのため、平成22 年度は、「産学イノベーション加速事業【産学共創基礎基盤研究】〔3 億円〕」において、産業界における技術課題解決の加速や、産業界の視点・知見のフィードバックによる大学等の基礎研究の活性化を図る。

図2 産学共創基礎基盤研究

図2 産学共創基礎基盤研究

科学技術コモンズ(図4

大学等における知的財産活動の進展により、大学等が保有する特許件数は増加しているが、その一方で、利用率は向上していない(図3)。そのため、大学等や企業等が保有する特許について、研究目的に限り無償開放し、関連する科学技術情報も併せて収集・公開する「科学技術コモンズ〔2.3 億円〕」の運用を「技術移転支援センター事業」内で実施する。これにより基礎研究の活性化を図るとともに、産業界による大学等の知的財産の活用を促進し、知的財産の新たな価値の発掘につなげる。

図3 教育機関(大学等)・TLO等の国内における特許権所有件数及びその未利用率の推移

図3 教育機関(大学等)・TLO等の国内における特許権所有件数及びその未利用率の推移



図4 科学技術コモンズ

図4 科学技術コモンズ

〔(参考)科学技術振興のための基盤の強化〕

先端的な研究開発施設・設備・機器や知的基盤等は、基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般を支える重要な技術基盤である。研究環境・産業連携課では、これらの効果的な利用や戦略的な整備を図るため、大学等の保有する先端的な研究開発施設等を外部利用に開放(共用)するための経費(運転経費、技術支援員の配置等)を支援する「先端研究施設共用促進事業〔14 億円〕」等を実施する。

※〔 〕内は平成22年度予算案額

*1
平成21年度まで実施の「産学官連携戦略展開事業」を地域における組織的連携の強化と地域の主体性を重視する観点から再設計したもの。
〔関連施策〕「イノベーションシステム整備事業【地域イノベーションクラスタープログラム】〔121億円〕」:優れた研究開発ポテンシャルを有する地域の大学等を核とした産学官共同研究を実施し、産学官の網の目のようなネットワークの構築により、イノベーションを持続的に創出する世界レベルのクラスターと小規模でも地域の特色を活かした強みを持つクラスター形成を図る。

*2
平成21年度まで実施の「産学共同シーズイノベーション化事業」「独創的シーズ展開事業」「若手研究者ベンチャー創出推進事業」および「地域イノベーション創出総合支援事業」(いずれもJST事業)の既存支援分を本事業に統合し、さらに研究の初期段階シーズの調査を実施する「探索挑戦ステージ」を創設。

*3
平成21年度まで実施の「先端計測分析技術・機器開発事業」および「戦略的イノベーション創出推進事業」(いずれもJST事業)を産学の連携によりイノベーションを包括的かつ加速度的に促進する観点から統合し、さらに新規施策「産学共創基礎基盤研究」を追加して発展的に再編したもの。