2010年4月号
特集2  - 図書館のビジネス支援
軽量シャッター補強材の製造販売を事業化
顔写真

沢田 克也 Profile
(さわだ・かつや)

株式会社 沢田防災技研 代表取締役



沢田克也氏はベンチャー企業を起こし、軽量シャッターを内側から補強する製品の製造販売を事業化した。ヒントになったのは、テレビの時代劇などでみる閂(かんぬき)。門扉を内側から角木材で施錠するものだ。事業化を模索していたとき、いろいろと相談に乗ってくれたのが鳥取県立図書館のスタッフ、小林隆志氏だった。

「おじいちゃん、どうしたの?」。私が、医療機器販売会社の営業マンとして各地を飛び回っていた約7 年前のある日、山陰地区を訪れると、農家のシャッターが強風でめくれあがり、壊れている光景を目にした。「ちょっと強い風が吹くと、すぐに壊れてしもうがな」。農家の老主人は嘆いていた。

農家の納屋や倉庫にはトラクターなどの農機具や収穫農産物、肥料等が収納されており、高額な機器類も多い。後で判明したことだが、倉庫やガレージに使用されるシャッターは、風を受ける面積に対する支持部が細いガイドレールのみで、風災害に弱い欠点を持つ。シャッターが強風で容易に壊れるのは、建築士や工務店など専門家の間では通説であり、メーカーも認めていた。

時代劇の「閂(かんぬき)」がヒント

株式会社沢田防災技研(鳥取市、以下「当社」)は、平成19 年4月設立の防災・防犯製品の技術開発を行うベンチャー企業である。当社が開発した、軽量シャッターを内側から補強する製品(製品名『シャッターガード』)は、今では国内を代表する複数の大手企業での販売ルートを確保するに至ったが、開発のきっかけは前述の農家の老主人の嘆きであった。

ヒントになったのは、時代劇で大名屋敷などの門扉を内側から角木材で施錠する「閂」である。「あれを何とかアルミ等の軽量金属で作れないものか」。私は、その後勤務先を退社し、シャッター補強材の研究開発に取り組んだ。しかし、私はそれまで本格的に製品開発や製造に携わった経験がなく、設計、強度実験データの蓄積、特許申請、量産工場の確保、市場分析、会社設立、資金調達、販路開拓等の課題が山積しており、実現までには途方もなく長い道程のように思えた。

鳥取県立図書館 小林氏との出会い

私は「セミナー」と名のつくあらゆる会合に出席した。また、商工会議所や行政機関などの相談窓口にも出掛けた。しかし、私がいくら製品開発へ向けた熱い胸の内を伝えても反応は鈍かった。中には「そんな商品、売れますかね」と冷笑する窓口相談員さえいた。セミナー講師や相談員は、「いつでもお気軽に相談してください」と異口同音にいう。しかし、実態は大きく違った。

そんな暗中模索の中で知り合ったのが、県立図書館でビジネス支援を担当する小林隆志氏(支援協力課長)である。彼は、平成15 年から司書として勤務していた。「そもそもシャッターって、世の中に何枚ぐらいあるんですかねぇ」彼は、そう言うとパソコンで検索を始めた。「図書館なんて、本を借りるところ」と思っていた私には意外だった。数日後、私の手元に多くの資料が届いた。国会図書館や全国の大学・研究機関の資料、中には購入すれば20 万円以上もする大手調査機関の業界情報まであった。

いよいよ製品化


写真1  上 シャッターガード、
下 シャッターの内側に
取り付けたシャッターガード

小林氏は、県産業技術センターのA 氏、弁理士のB氏、司法書士のC 氏、金融機関のD 氏というふうに、個人名を挙げて各界のキーマンを紹介してくれた。不思議なことだが、同じ企業や団体でも、担当者が違うと全く対応が異なるケースがある。

『シャッターガード』は、「女性や高齢者でも簡単に設置できるシャッター専用の防災・防犯機器」として、平成19 年秋に製品化された。製品デザインは、Microsoft 社の人気ゲーム機「Xbox 360」を設計した村田智明氏(鳥取県出身)が担当し、2007 年度グッドデザイン賞を受賞した。山陰の農家の老主人に出会って約7 年、やっと老主人との「小さな約束」を果たせた想いであった。

ベンチャー企業支援とは…

当社は、鳥取県産業技術センターのインキュベーション施設に入居している。これまでに知的財産権9件(うち国内特許6 件、国際特許1 件)を取得、また鳥取大学からの財務・マーケティング戦略支援を受けている。さらに、国内大手企業との販売基本契約締結、地元ベンチャーキャピタルからの出資受け入れなど、着実に成長企業へ向けた歩みを進めつつある。

振り返れば、小林氏をはじめ多くの人々に支えられ、ここまでたどり着けた。「ベンチャー企業支援」とは何なのか、当社の事例が少しでも参考になれば幸いである。