2010年5月号
特集  - 高専 新時代
石川工業高等専門学校
地元企業と研究会、共同研究で産業活性化
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割澤 泰 Profile
(わりさわ・やすし)

石川工業高等専門学校 機械工学科 教授
地域連携主事・トライアル研究センター長



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越野 亮 Profile
(こしの・まこと)

石川工業高等専門学校 電子情報工学科 准教授



地元企業と研究会をつくり、地域、個別企業の抱える課題解決に取り組んでいる高専は多い。石川工業高等専門学校には15の研究会があり、専攻科の学生も参加させて、企業との交流を進めている。

技術振興交流会との協同教育で元気化

平成14 年に企業との産学交流・連携を深める目的で石川工業高等専門学校技術振興交流会を結成した。参加企業は県内中小企業を中心に130社。石川工業高等専門学校(石川高専)には5 学科(機械工学、電気工学、電子情報工学、環境都市工学、建築)が設置されていることから、参加企業はさまざまな業種にわたっている。共同研究、研究会活動、若手技術者のスキルアップなどの事業を実施している。

研究会活動で元気化

石川高専では以下のような15の研究会が活動している。主に企業や地域から持ち込まれた課題を解決する研究会である。大半が、課題を持ち込んだ企業を随時会員として運営する方法をとっている。また、専攻科学生を参加させ、若い学生と企業人の交流により議論の深堀りと活性化を図っている。

−研究会−

● 3D-CADとCAE利用研究会 ●自然エネルギー利用研究会 ● PLCによる機械制御研究会 ●画像処理の応用研究会 ●技術課題解決法を学ぶ研究会 ● DLC膜利用研究会 ●サーボシステム応用研究会 ●振動エネルギー利用研究会 ● Android研究会 ●数理モデルを用いた舗装のパフォーマンス予測 ●能登産カキ殻の地盤工学的有効利用に関する研究会 ●ダム流量の高精度推定技術の構築に関する研究会 ●津幡町の総合活性化研究会 ●耐震を考慮した木造建築研究会 ●温熱・音環境に関する研究会

協同研究会、共同研究で元気化

−電子情報工学科越野亮准教授の活動事例の紹介−

越野研究室での共同研究

携帯電話に搭載されているセンサーを使って、自動的に人間の行動〔いつ、どこで、だれと、なにをしていたか〕をライフログ(行動記録)として自動的に記録するソフトウエアを開発している(図1、2)。これにより、過去の自分の行動をタイムマシンのように見ることができる。具体的には、GPS(衛星利用測位システム)で位置、加速度センサーで運動、Bluetooth(短距離無線通信技術)で人との出会い、マイクの音量から何をしているかを推測して自動的に記録。また、自動的に記録されたライフログを見やすく表示するAndroid 用のアプリケーションと、生活習慣を見直すためのウェブアプリケーションも開発している。ほかにも心拍の情報からドキドキ感(気持ち)を記録したり、周りの温度や湿度、明るさなどの環境情報も記録できるように独自のセンシングデバイスも開発している。


図1 Androidによる
ライフログ表示

図2 ウェブアプリケーションによる
ライフログ表示

現在、企業3社との連携を進めている。A社とはAndroidによるユーザーの状況推定の研究開発を進めている。B社とはこの開発成果の教育への応用として、組み込み教育のためのセンシングデバイスツールキットを開発している。C社とは、Androidと連携できる、心拍・温度・湿度・明るさなどのさまざまなセンシングデバイスの商品化・実用化を進めている。

なお、これまでに開発したセンシングデバイスについては、多方面からの活用希望が出ている。

Android研究会

Android は、Google が主体となっているオープンソースの携帯電話用のOS で、制限なく自由に携帯用のソフトウエアを開発できるため、現在非常に注目されている。この研究会は日本Android の会の金沢支部主催の勉強会として実施している。株式会社管理工学研究所北陸分室、東京ドロウイング株式会社、InterLap 社をはじめ、多くの地元企業が参加している。



写真1 第2回の勉強会での活発な意見交換

第1 回は日本Android の会の方々による講演会。第2 回はAndroid アプリ開発の入門で、インストール&セットアップの方法、タッチによるアプリの作り方、カメラアプリの作り方、GPS とGoogle マップを使ったアプリの作り方などについて講演を行った(写真1)。第3 回は、Android のアプリ開発を始める方を対象として、ハンズオン形式で、実際にプログラムを作って学んだ。

第4 回は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の2009年度上期の未踏事業で越野らが開発したAndroidによるライフログアプリケーションを紹介した。あわせて、2009 年度下期の未踏事業に採択された、石川高専の学生たちのプロジェクト「GUI ベースによる携帯アプリ統合開発環境の構築」の紹介、2008 年度下期 で未踏事業に採択され、未踏スーパークリエータに認定された山添隆文氏による「Android ではじめるリアルタイム画像処理」に関する講演を行った。4 回の延べ参加者は145 名で、各回とも、形式にはまらず活発で、柔軟な意見交換が行われており、今後の発展が期待される。