2010年5月号
特集  - 高専 新時代
鹿児島工業高等専門学校
焼酎粕利用で地元企業と新産業創出目指す
顔写真

山内 正仁 Profile
(やまうち・まさひと)

鹿児島工業高等専門学校 都市環境デザイン工学科 教授


鹿児島高専が地元企業、公設試験研究機関と連携した事例。サツマイモや麦から焼酎をつくった粕の乾燥固形物を活用した「きのこ培地」を開発し、企業が事業化している。

研究開発の成果の紹介


図1 焼酎粕の地域資源循環システム

焼酎粕(かす)の地域資源循環システムを構築することを目的に鹿児島工業高等専門学校を中心とした産学官・農工商の研究グループは、焼酎粕乾燥固形物を栄養材としたきのこ培地を開発し、高付加価値きのこの安定生産可能な技術を開発した。また、きのこ廃培地が家畜飼料に利用可能であり、かつ高温乳酸菌を活用した廃培地含有飼料を給与することで、肉質改善、家畜環境改善にもつながることを突き止めた。これらの成果により、焼酎粕→食品(きのこ)→家畜飼料→肥料と段階的にその品位に応じた有効利用技術が確立された(図1)。

連携の経緯

筆者らは、焼酎粕培地で栽培したきのこは慣行培地で栽培したきのこより収量・品質・資材コスト面で優れていることを明らかにしてきた。一方、本研究を事業化するにあたり、2 つの課題が残されていた。1 つは焼酎粕を多量に使用することで、培地材料(おがくず+焼酎粕乾燥固形物)の粘性が高まり、従来の培地自動瓶詰め装置では均一に培地を充填(じゅうてん)することが困難であるという工業的課題であり、もう1 つは、使用済み廃培地(以下、廃培地)の有効利用の問題であった。



図2 研究実施体制

これらの問題を解決するために、以前から焼酎粕由来の製品開発を共同で進めてきていた地元ベンチャー企業、株式会社ゼノクロスを介して、地元で有数の資本力を誇る建設ゼネコングループ企業の株式会社ガイアテックと共同で製品化を図ることとした。さらに、2006 年に策定された「食と農の安心県づくり大綱」により、県産農林水産物を活用した新製品づくりやバイオマス資源の有効利用に向けた研究開発、県産農林水産物の特性を生かした製品開発等を支援していた鹿児島県森林技術総合センターを加え、産学官の開発体制が整った。その後、廃培地の家畜飼料の原料としての利用と、高温乳酸菌を用いた短期乳酸発酵法の技術利用を模索していた株式会社鎌田工業および鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場を加え、焼酎粕廃培地を家畜飼料として利用するための技術開発も並行して進めることとなった。これら6 機関のコーディネートは株式会社鹿児島TLO が務め、地域が抱える課題解決のための共同研究グループを構成した。本グループは平成19 年に経済産業省の「地域資源活用型研究開発事業」の採択を受け本格始動した(図2)。研究は各機関が分担し取り組んだが、それぞれの成果取りまとめを進めるにあたっては、外部委員を含めた推進会議を定期的に開催したほか、資金申請段階から研究者同士の打ち合わせを綿密に行い各機関との連携を図った。このように、本グループ化によって、地域固有の課題解決に向けた、食品産業・環境産業・林業・畜産業など異なる分野にわたる産学官・農工商の連携が有効かつ効率的に機能した。

開発の成果と地域産業の現状
高付加価値きのこの生産

現在、県内外の300 社以上の企業から問い合わせがあり、具体的な注文量は1,000 〜1,300kg/ 日に至る。この注文量を賄うために、施設面で県内きのこ生産農家との連携を視野に入れて大量生産体制を検討中である。なお、現在の状況としては、2,000 本/日程度の生産が可能となっている(写真1、2)。


写真1 焼酎粕培地で栽培した
エリンギライフログ表示

写真2 店頭販売風景
ライフログ表示
廃培地の家畜飼料としての利用(要素技術段階)

廃培地を粗飼料、濃厚飼料の一部を代替活用し、作製した発酵TMR 飼料を家畜(乳用牛)に給与することを前提に飼料経費を試算すると、乳牛の50 頭規模(県内平均飼養頭数)における削減額は年間150 万円程度見込まれ、収益性の改善が図れる。また、高温乳酸菌を用いたきのこ廃培地利用短期乳酸発酵飼料を家畜に給与したところ、家畜環境改善(臭気除去効果)、肉質向上(牛の枝肉価格):25% UP、イノシン酸量(牛肩ロース):20mg/100g(対照区の3.3倍)、イノシン酸量(豚肉ロース):89mg/100g(対照区の9倍)の効果が認められ、販売価格の向上にもつながる。

今後の展望

本プロジェクトで構築した「きのこ生産を核とした地域バイオマスのカスケード利用技術」は、焼酎業界、きのこ生産者、畜産農家等の経済効果へと波及するだけではなく、食材への関心の高い消費者に対する地元ブランド戦略にも貢献し得る。さらに、本技術を全国展開可能なビジネスモデルへと発展させるべく、今後は、焼酎粕培地で栽培したきのこの抗酸化作用、抗腫瘍(しゅよう)性作用などの機能性面についても検討を行い、さらなる焼酎粕きのこの付加価値を探りたい。