2010年6月号
連載  - ニュービジネス創出・育成に向けた銀行界の役割
第3回
銀行の産学官連携への取り組み状況(その2)

全国銀行協会 金融調査部





連載第3回目は、第2回目に引き続き、全国銀行協会(全銀協)正会員*1へのアンケート 結果から、銀行における産学官連携の取り組み状況を概観する。今回は、銀行から見た 産学官連携の課題、銀行が連携において期待されていると考えている役割、および銀行 が連携の中でできると考えている対応等について紹介する。

産学官連携の課題

銀行が考えている課題としては、アンケートにおいて産学官連携の取り 組みを行っていると回答した銀行(109 行)のうち、半数以上の銀行から 「大学のシーズが分かりづらい」(84 行)、「専門的技術や当該技術の事業価 値を評価する者が不足している」(77 行)という点が挙げられ、連携を推進 する上でのハードルとなっていることがうかがえる。

また「共同研究後の事業化が難しい」という回答も56 行からあり、上述 のハードルを越えて連携がスタートしても、事業化にはもう1 つ越えるべ きハードルがあることが分かる(図1)。



図1 銀行が考えている課題

銀行に期待される役割

銀行が「銀行に期待されている」と考えている役割は複数回答であるもの の、「産と学の仲介」が82 行から挙げられており、1番多くなっている。そ の内容は、連携の窓口となって橋渡しの役割を果たすことのほか、ニーズ とシーズのマッチングや目利きなどであった。

また、金融面の支援に関する期待や、企業経営に関する支援などの期待が示された。

銀行等の対応
(1) 銀行の対応

銀行が自ら「期待されていると考えていること」と、銀行が「対応可能と 考えていること」を比較すると、「産」と「学」の仲介(マッチングなど)、顧 客ニーズの把握、人材育成、ビジネス創出の支援、事業販路拡大支援、金 融面の支援など、おおむね一致しているように見えるが、個別銀行の回答 を比較すると、「期待」と「できること」は必ずしも一致していない。

例えば「産」と「学」との仲介については、「期待」と「対応可能」の双方に挙 げる銀行が比較的多かったものの、回答内容をより詳細に見ていくと、「対 応可能」という回答の中でも、シーズ・ニーズ双方に関する高度な専門知 識が必要なマッチングやコーディネートを可能とする明確な回答は多数で はなく、「産と学が直接コミュニケーションを取る場の提供」等が念頭にあ る回答も含まれている。

そのほかの項目については、例えば金融面の支援(資金提供)では、可能 という回答と困難という回答が混在しており、銀行の取り組み状況によっ てまちまちであることがうかがえた。

アンケート結果からは、産と学をつなぐ立場で産学官連携を推進してい くことが可能と考えている銀行が多く、まずはこうした仲介の取り組みを 地域の実情や銀行の方針に従って着実に拡充することが、産学官連携のす そ野を広げる上で重要であると考えているようである。

(参考)産学官の関係者に対する銀行の期待

今回のアンケートでは、産学官それぞれの活動主体に対して、銀行がどのようなことを期待しているかについても聞 いている。回答は個別の事情が明らかではないことなどから、やや抽象的で一般的に指摘のある内容かもしれないが、 実際に何らかの連携に係る取り組みを行っている銀行が現場で感じていることをお伝えする機会もあまりないので、本 誌面を借りて、ご参考までに紹介したい。

(1)各主体への共通の期待

銀行が各主体に共通して期待することは [1]中長期的な視点をもって産学官連携に取り組むこと [2]情報発信および [3]連 携推進に必要な人材の育成、となっている。

このうち[2]と[3]は、前述の「◆産学官連携の課題」において銀行が考えている「大学のシーズが分かりづらい」等の課題 解決につながるものでもあり、関係者が意欲的に協力することによって、ニュービジネスの創出・育成に向けた産学官 連携が推進される可能性が示されている。

また、産と学に対して「積極的・意欲的な取り組み」という姿勢・意識の変革も挙げられており、産学官連携は広がっ てきているものの、産学当事者の積極的な取り組みがあれば、さらなる連携拡大の可能性が示されている。

(2)企業への期待

企業に対しては、課題の明確化、新技術・新商品開発、技術力の向上、マーケットニーズの反映、などが挙げられて いる。これらは、産学官連携に特有の課題ではないものの、産学官連携による事業の成功のために必要な事項であると 考えられる。なお、これは主として地域銀行から出されており、中堅・中小企業に向けた期待であることがうかがえる。

(3)大学等への期待

大学等に対しては、相談窓口の一本化、学内連携体制の充実、事業ビジョン策定への積極的関与、事業化を意識した 研究、などが挙げられている。大学等は、企業の目線にも配慮することにより、連携への可能性が高まり、有望なビジ ネスの創出につながっていくと考えられる。

(4)政府等への期待

政府・関係機関に対しては、助成金・補助金制度の運用改善、税制措置の拡充などが挙げられている。現在の諸制度 を使いやすく改善することや、さらなる措置を行うことにより、産と学との取り組みを後押しすることへの期待が高い。

(2) 業界団体の対応

全銀協として行うことができると考える取り組みとしては、銀行から「連 携事例の情報発信」「広域的な連携支援」および「関係省庁への要望活動」な どが挙げられている。

全体的に、インフラ整備に係る要望活動や、会員銀行への情報発信に関 する事項が多く挙げられている。


次回は、有識者へのヒアリングやアンケート結果等を踏まえた、ニュー ビジネスの創出・育成に向けた産学官連携における銀行の果たすべき役割 について見ていくこととしたい。

*1
都市銀行、地方銀行、信託銀行、第二地方銀行協会加盟銀行など。