2010年8月号
巻頭言
顔写真

晝馬 明 Profile
(ひるま・あきら)

浜松ホトニクス株式会社
代表取締役社長



光技術の重要性

光技術には、科学技術の根底にある問題を解明する可能性が秘められています。21 世紀は光子の時代と言われ、電子が20 世紀の人類社会に役に立ったように、光技術を使えば、地球環境、食糧、健康、戦争など人類が抱える多くの問題を解決する可能性があります。

光子については、分からないことがたくさんあります。光の本質は、波と粒子の2 つの性質を同時に持っているとされていますが、光と物質の相互作用や光同士の相互作用についてはまったく分かっていないのが現状です。当社は、光の専業メーカーとして、光の粒を数えるフォトンカウンティング技術や光をピコ秒という1 兆分の1 秒以下で観測する極限計測技術を開発して、幅広い分野で新しい知見探求の一翼を担っています。しかしながら、それらの計測技術をもってしても、宇宙の起源や人間の脳などはほとんど未解明で、これらを知るには新しい光技術が必要です。

光の未知未踏領域を切り開けば、いま想像できることだけでもさまざまな分野での応用が考えられます。例えば、人体に無害な赤外光を超微弱で超高速に計測できる技術を開発して人体を常時測定すれば、病気になる前の予防が可能になり、生涯健康な状態を保てるようになると考えられます。光の干渉、非線形光学により情報処理技術が開発されれば、多数の要因と多数の結果との間の関連が見えて、人間の脳と同等のコンピューターが実現するでしょう。ボーズ粒子の性質を利用して光を微小空間に高密度に集積する超高強度レーザーが開発されれば、物質改変、核融合などが実現し、日本にある資源で国の基盤となるエネルギーをはじめ各種工業、医療など幅広い分野での応用が期待されます。

このように、光は無限の可能性を持っていると言っても過言ではありません。新しい光の応用によって、いままで考えられなかった新しい産業を生み出すことが可能です。当社は、光技術の専門メーカーとして、これらの新しい産業の創成に向けた研究に自ら取り組んでいます。また、その一環として、光技術を使って新しい産業創成を目指す、これまでにない概念の大学を当社が中心になって2005 年に開学しました。ビジネスプランをもとに学生は自ら実際に会社を起業し実践しています。

光はあらゆる分野で応用が期待されていて、光技術が本領を発揮するのはこれからです。欧米の発明による既存産業の応用だけでは、もはや中国などの新興大国群に勝てません。わが国は、世界に先駆けて光の重要性を認識し、光技術を使って、この日本から世界に発信する新しい産業を創成することが生き残る道と考えます。