2010年8月号
連載2  - 学生の力を活用した地域の国際化と活性化
後編
留学生向けガイダンスで国際交流の質向上
顔写真

村田 陽一 Profile
(むらた・よういち)

立命館アジア太平洋大学 事務局次長



世界98 の国・地域から来ている立命館アジア太平洋大学の留学生たちは、地元である大分県内の小中学校の国際交流教室や外国語活動で活躍している。同大学は県、別府市との公私協力で設立されている。このため、学生と地域との交流は大学の使命と位置付けられている。留学生の出身国・地域の文化を分かりやすく伝えるため、同学は留学生を指導している。

18の自治体と連携

表1 協定先の自治体および協定内容

表1

前号でご紹介したとおり、立命館アジア太平洋大学(APU)は大分県、別府市、学校法人立命館の「公」「私」三者の協力により設立されたため、県や別府市の国際化と活性化に寄与することを重要な使命と位置付け、開学(2000 年4 月)前から、大学と地域とのネットワークづくりを進めてきた。2010 年7 月現在、18 の自治体と交流協定や連携協定を結んでいる(表1)。交流の内容はさまざまであり、地域と学生双方のニーズをくみ取りながらコーディネートしているが、圧倒的に多いのが各自治体の小中学校の国際交流教室や外国語活動を通じた地域の子供たちと本学留学生との交流である。

本学留学生を派遣する国際交流教室や外国語活動の質を高めるには、担当される小中学校の先生の経験やコーディネート力に加え、留学生の経験やコミュニケーション力とプレゼンテーション力によるところも大きい。このため、2009 年度には、本学学生からの発案により、APU 留学生による国際交流教室の質を上げることを目標とするプロジェクトが立ち上がった。このプロジェクトでは、小中学校への交流派遣を希望する留学生を対象とし、3 回のガイダンスと1 回のワークショップを実施した。

紹介ツールの作成方法などを指導

ガイダンスでは、留学生の出身国・地域の文化に小中学生が、楽しみながら理解してもらえるよう、紹介のツールの作成方法、子供が興味を示すトピック、注意点などを事例も交えなが小冊子にして、派遣する学生がいつでも配布できるようにした。アンケート調査によると、参加した留学生の満足度が大変高く、この参加をきっかけに積極的に小中学校へ行きたいとの声も多く聞かれた。

小中学校側からも、このAPU 留学生による国際交流教室の評価は高い。家庭で夕食時に子供たちが目を輝かせながら、その日に体験した留学生のお兄ちゃんやお姉ちゃんの国のことや覚えた英語の話をするらしく、児童の父母からも取り組みの継続や拡大を望む声が学校に多く寄せられているようである。

次のような新たな課題が浮上している。

単発の派遣ではなく、自治体との交流協定の枠組みの中で、比較的長期間にわたって定期的な交流活動ができないか。
これまで事務局職員が担ってきた業務について、学生を組織して、自治体との協議やマッチングに一部従事させ、マネジメント・スキルやコミュニケーション・スキルを身に付けさせる成長支援ができないか。

こうしたことへの対応も考えているところである。

協定自治体ウィークの開催

本学の開学10 周年記念企画として、2010 年5 月24 日(月)~ 28 日(金)の5 日間、協定する10 自治体が参加して「APU 協定自治体ウィーク」を開催した。会場は本学キャンパス内のカフェテリア。通常のメニューに加えて協定自治体から食材とレシピの提供を受け、各自治体の郷土料理を提供した。自治体ブースを設けて、自治体職員からのパンフレット配布やビデオ上映などにより、観光案内をするという企画である。

本学の学生数は、世界98 カ国・地域からの外国人留学生が2,921 名と、日本国内各地からの3,310 名の合計約6,200 名であるが、キャンパスは別府市郊外の高原にあるため、まわりに食堂やお店はなく、全ての学生と教職員がキャンパス内カフェテリアで食事をする。そのため、ほぼ全ての学生と教職員が協定自治体の郷土料理や観光案内に接したことになり、大きな広報効果があったと見ている。

参加者アンケートの結果も予想以上に高い評価であり、「今後は、☆☆自治体との交流にぜひ参加したい」「地元に住みながら、知らない観光資源がたくさんあることが分かった。大分県は素晴らしい」「卒業までに、大分県内の多くの場所を観光し、郷土料理をもっと食べてみたい」などの意見が寄せられた。また、今後の自治体との交流内容についての多数の提言があった。「学園祭で地域の特産品を集めた出店をする」「学生が市長の一日密着体験をする」「学生による町おこしコンペティションを行う」「学生に町おこしキャッチフレーズを募集する」といったユニークなものも含まれていた。

本学では、今後とも世界中日本中から集まる多様な学生の力を活用して、地元の大分県や別府市をはじめとする協定自治体の国際化と活性化に貢献していく所存である。