2010年8月号
編集後記

3 年ぶりの本誌編集委員。この間、日本の産学官連携の焦点は、制度や体制づくりから、研究成果の事業化やイノベーションの実現に移ってきたと認識している。有力な事業化主体として期待されてきたのは大学発ベンチャーであるが、大学等のライセンスで新たに起業したのは米国が555 社(2007 年度)に対し、日本は19 社(2008 年度、大学技術移転協議会編「大学技術移転サーベイ」)。人口比、GDP(国内総生産)比、大学等における研究費総額比のいずれで見ても極端に日本の起業数が少ない。わが国は1986 年以降、一貫して企業の廃業率が開業率を上回っている。本ジャーナルでは、起業家や起業家精神を持った研究者・産学官連携実務者にとって励ましとなり、役に立つ情報を発信したいと意を強くしている。

(編集委員・伊藤 伸)

各地の地域・産業活性化のキーパーソンと現場で会い、ノウハウを学ぶ(≒盗む)ことを心掛けている。佐藤利雄氏もそのひとり。今月号の記事では紹介できなかった事柄も多いので、ぜひ岩手で佐藤氏と会い「佐藤飲み」を堪能されたい。キーパーソンに共通のキーワードを10 個挙げると、理念、覚悟、執念、スタミナ、センス、継続、地域愛、やじ馬根性、矢継ぎ早、遊び心である。年齢、性別はもちろん、専門的能力の有無もあまり関係ない。日本では卓越した感性や行動力が、組織からは変人扱いされ疎まれることもある。サッカーのワールドカップ日本代表のように、「個の力」を「組織の力」にするトップマネジメントがあれば日本の将来は明るい。いよいよ夏真っ盛り。皆さま、夏バテしないようにご自愛くださいませ。

(編集委員・岡田 基幸)

今月号の「『大学は美味しい!!』フェア」のレポートに興味深い指摘がある。筆者の松元氏が雑誌モニターに「理系で思い浮かぶ学部」を尋ねたら、最後まで名前が挙がらなかったのが「農学部」だったという。それがこのプロジェクトのきっかけになったそうだが、「食」の最前線で研究に従事する大学人がこうした形で“社会”と触れることで、より開かれた大学になることが期待される。大学間で刺激し合い、地域、産業界との連携も進むだろう。一方、東京都三鷹地域のSOHO(Small Office、HomeOffice)のインキュベーションを紹介する連載を始めた。大きな成果を挙げており全国的に知られる取り組みだ。ベンチャーを取り巻く環境が厳しいなか、「起業」のヒントを期待したい。

(編集長・登坂 和洋)