2010年10月号
特集1  - 水素プロジェクト
山梨県
山梨大学を核に「燃料電池バレー」目指す
顔写真

高根 明雄 Profile
(たかね・あきお)

山梨県 商工労働部
産業立地室 産業立地推進課長


燃料電池の先進的な研究で大きな成果を上げている山梨大学。山梨県は、同大学を核としながら、産業界とも連携し、燃料電池の研究開発、人材、産業集積の拠点「燃料電池バレー」を目指している。

はじめに

世界人口の増加や経済活動の活発化に伴うエネルギーの大量消費による化石燃料の枯渇、CO2排出などによる環境破壊が深刻化する中、発電効率が高く、次世代の新技術である燃料電池の普及・実用化の取り組みが進められている。

山梨大学は、文部科学省の「次世代型燃料電池プロジェクト」や「都市エリア産学官連携促進事業(一般型)」において大きな成果を挙げ、さらに研究成果の実用化を目指している。平成20年度からは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託研究として「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発」に取り組み、燃料電池の普及に必要な製造コストの削減や、性能、耐久性、信頼性の向上を目指した研究開発を進めている。

このような中、山梨県としても大学と連携しながら、燃料電池の実用化と関連産業の集積・育成の推進に向け、積極的かつ体系的に施策の展開をスタートさせたところである。

山梨県と山梨大学との連携

山梨県では、山梨大学の「燃料電池ナノ材料研究センター」で実施されるNEDO委託事業の研究開発を支援するため、旧知事公舎の敷地を研究センター用地として、かつ、旧知事公舎や部長公舎を改修し、研究関連施設として無償貸与している。

また、研究員の派遣を行うとともに、産学官連携シンポジウムやセミナーなどを開催して、燃料電池技術の普及啓発にも努めている。

産学官の連携による山梨燃料電池実用化推進会議
写真1

写真1 山梨燃料電池実用化推進会議

平成21年6月、山梨県では、県外の燃料電池関連メーカーや県内機械部品企業、国、大学および学識経験者で構成する「山梨燃料電池実用化推進会議」(写真1)を設置した。

この会議は、本県が取り組むべき社会実証の方向の検討や関連産業の集積・育成に向けた戦略を産学官の連携により推進することで、本県が環境に優しい水素エネルギー社会の構築の先導役となることを目的としている。

平成22年度の取り組み
写真2

写真2 緊急時の車両取り扱い講習会


写真3

写真3 エコスクール

今年度は、燃料電池自動車「トヨタFCHV-adv」を導入し、県内企業の経営者等を対象とした試乗会や、消防関係者等を対象とした緊急時の車両取り扱い講習会の開催(写真2)、児童・生徒に対して、エネルギーや環境問題を考える機会の提供(写真3)など、県民の理解向上に向け取り組んでいる。

また、燃料電池自動車の走行に不可欠な水素ステーションを早期に整備するための「水素ステーション設置可能性調査」を行っているほか、山梨県を中心に中央自動車道沿線に所在する企業を対象として、技術セミナーを4回、合計8講座を開催し、技術力の向上と人材育成を図っている。

展望

このように、山梨県では、山梨大学を中心に行われている燃料電池の研究開発を核としながら、研究活動の支援や山梨から技術情報を発信することで、燃料電池関連産業の集積・育成に取り組み、地域経済の活性化を図っている。

また、米国の西海岸にあるシリコンバレーのように、「燃料電池バレー」となるべく、研究開発、人材育成、産業集積の拠点を形成し(図1)、太陽光や水力、バイオマスにより製造した水素を活用するクリーンで豊かな未来を築くことを目指している。

図1

図1 燃料電池関連産業の集積促進に向けた施策展開