2010年10月号
特集2  - 読むヨーグルト
山梨大と共同開発した大豆ヨーグルト
大豆の発酵臭をワイン酵母で解決
顔写真

榑林 剛 Profile
(くればやし・たけし)

白州屋まめ吉株式会社
代表取締役社長


創業間もない飲料メーカーが大豆を発酵させた飲むヨーグルトの開発に挑戦。試作段階で山梨大学ワイン科学研究センター長の柳田藤寿教授に出会い、その指導でワイン酵母も使うことになった。その開発物語である。

写真1

写真1 大豆で作った飲むヨーグルト

白州屋まめ吉株式会社(山梨県北杜市白州町)は、今年4月に山梨大学ワイン科学研究センターと共同開発した「大豆で作った飲むヨーグルト」(写真1)を発売した。大豆飲料を乳酸菌で発酵させた後に、山梨大学で開発されたワイン酵母(Saccharomyces cerevisiac W-3)でダブル発酵させることにより商品化したものである。

ワイン醸造技術が全く違う飲料に応用されたことから、地元メディアにも大々的に取り上げられ、発売当初用意した5,000本の在庫は2日間で完売というヒット商品となった。

南アルプスの水利用の飲料メーカー

当社は平成17年に設立された飲料メーカーで、地元産の微粉砕大豆をミネラルウォーター生産日本一「南アルプス天然水」で知られる白州名水で仕込む「まるごと大豆飲料」を主力としている。加工技術は山梨県の地域産業資源に認定されている。

また、平成19年には経済産業省の「地域産業資源活用事業」の認定を受け、その一環として20年から大豆を発酵させた飲むヨーグルトタイプの飲料開発をスタートさせた。

創業間もないわれわれにとって、発酵飲料の開発は高いハードルだった。幾つもの試作品を取引先の銀行や仕入業者に依頼してサンプリングを行い、改善点をフィードバックする繰り返しを続けた。展示会にも積極的に参加し、食品バイヤー等のプロの評価にも耳を傾けた。

山梨大の柳田教授との出会い

こうした中で、平成21年7月に開催された「やまなし食のマッチングフェア」で運命的な出会いがあった。たまたま弊社ブースに立ち寄ったのは、山梨大学ワイン科学研究センター長の柳田藤寿教授だった。試作品を飲んだ一声は「まずい!これは売れないよ!」だった。続けて問題点を多々指摘された。それらはうすうす分かってはいたが、初対面でこれだけ明瞭(めいりょう)に否定されると怒りを覚えるほどだった。

このやりとりを見ていた山梨県庁職員が、弊社商品開発の参考になればとの思いから、1週間後に同センターに柳田教授を訪問する段取りを付けてくださった。田舎の零細企業に大学の技術を供与いただけるとは全く思ってもいなかったが、柳田教授から「君らが主体的に一生懸命開発をやるというなら協力するよ」と思ってもみない言葉が返ってきた。感謝の一語である。

60年以上の歴史を持つワイン研究

山梨大学ワイン科学研究センターは、果実酒を専門に研究する機関として60年以上の歴史があり、日本のワイン産業に寄与することを目的とし、ブドウとワインに関する微生物学的、および生化学的研究を地域と密着して行ってきた。現在は世界的視野に立ち、先端的な細胞工学、遺伝子工学を駆使した基礎研究から最新のブドウ栽培ならびにワイン醸造の実用研究までを包括する研究センターである。

柳田教授は食品化学(醸造学)、応用微生物学を専門とする発酵工学のスペシャリストで、ワインのみならず味噌やカルピス様乳酸菌飲料等、発酵にかかわるものに広く、かつ深い見識を持っている。われわれは試作をしてはワイン科学センターに持ち込んで試飲していただくことを何回となく繰り返した。

大豆の発酵臭を解決

当初から大豆発酵飲料の問題点は「臭い」だった。大豆を発酵させると独特の発酵臭が生じて腐敗とも取れる風味になる。改善するためには、乳清(ホエー)を数パーセント添加して発酵させたり、レモン果汁をブレンドして飲みやすくすることが、弊社レベルでは精一杯の手段であった。まさに小手先の改善策だ。柳田教授の指導により乳酸菌の選定、発酵条件の最適化を行い大豆臭も徐々に低減していったが、若干気になる程度の大豆臭が残ってしまう。

策も尽きたかなと思い始めたころ、柳田教授から「ワイン酵母を入れて発酵させよう」との提案があった。意味も分からず言われるままに何種類かのワイン酵母を入れて発酵させたところ、驚くべき結果となったのである。大豆の発酵臭がしないのだ。ワイン酵母により、大豆臭のマスキングと芳香な発酵臭が大豆ベースと分からないぐらいの飲みやすい飲料に仕上がった。柳田教授は開発当初から、最終的にはワイン酵母を使うことを考えていたようである。

Dr.ヤナギダシリーズを検討

これは山梨らしさをアピールできる商品だ。大豆は山梨県産大豆「すずさやか」を、仕込水は南アルプス天然水で知られる「白州名水」を使用している。さらに、おから成分も含まれる「まるごと大豆」製法により1本当たり大豆30粒が丸ごと含まれている。山梨ワイン酵母も言うまでもない。

今後はDr.ヤナギダシリーズとして、果樹王国山梨を代表する桃やブドウの果汁を加えた商品や、地元から酵母や乳酸菌を分離した新商品を展開したいと考え、山梨の新ブランドになりうるよう努力したいと思う。