2010年10月号
編集後記

ベルリンの壁が崩壊し、中国が市場経済に本格参入して約20年。中国は日本のGDPを抜き去った。先進国が、新興国、発展途上国に対して、産業競争力の差別化を生み出す源泉が科学技術だ。政治主導での予算編成プロセスが議論される中、第4期科学技術基本計画策定に向けた基本方針に「2020年度までに官民合わせた研究開発投資GDP4%以上」という表現が記述された。しかし“官民合わせた”という表現にあいまいさを感じる。研究開発投資に及び腰の国家が20年後に生き残れるのだろうか?

(編集委員・西山 英作)

中小企業振興のための産学官連携を始めて10年余りになるが、リーマンショック以降、支援した企業のうちで業績不振に陥った企業も数多く、果たして私たちの支援が本当に役立っているのだろうかと悩むこともしばしばだ。研究開発に成功しても、事業展開で失敗したり、社長の病死と事業承継者不在という不運に見舞われた企業もある。それでも、頑張って業績を上げている企業は、総じて社長がニーズを把握する洞察力に優れており、有言実行型で情熱と独立不羈(ふき)の精神を有している。彼らは、本当に必要な時以外は補助金や委託金は使おうとしないし、使った外部資金は必ず成果に結び付けるように不断の努力をしている。そんな所にも、成功と失敗を分ける要因があるように思う。

(編集委員・間野 純一)

大学発ベンチャー企業を取り巻く環境は厳しさを増している。とりわけ資金面だ。8月号まで5回連載した「ニュービジネス創出・育成に向けた銀行界の役割」(全国銀行協会金融調査部)の中に「キャッシュ・フローのないステージにおける資金提供は、銀行を含めた金融機関のリスク許容度を超えている」とある。要は、リスクを取れないという宣言だ。かつてバンカーは、この技術は面白いし経営者は信用できるとみれば、ぽんと事業資金を出した、と歴史は教えているのだが…。一方、設立して数年たつ、ある有名大学のベンチャー企業のホームページに、当面は研究開発に専念すると書いてあった。こちらは、企業なのにビジネスはしないという宣言でもある。

(編集長・登坂 和洋)