2010年11月号
特集1  - 発進 次世代自動車
通勤用の一人乗り超小型電気自動車の開発
-群馬大学次世代EV研究会-
顔写真

松村 修二 Profile
(まつむら・しゅうじ)

群馬大学 客員教授



群馬大学が企業、公的機関などとつくる「次世代EV(電気自動車)研究会」は、通勤などの用途を想定した、一人乗りの超小型電気自動車の開発を進めている。これは原動機付き自転車に分類される。現在は試作2号機の製作を進めており、実証試験として今年度内に群馬県桐生市内で走らせる計画である。

写真1

写真1 群馬大学次世代EV研究会 会場風景

群馬大学ではCO2削減を目指して2009年3月に「次世代EV(電気自動車)研究会」を設立した。研究会には大学関係者のほか、地域企業約100社や公的機関からも参加があり、現在会員は約200名である(写真1)。

電気自動車は、環境問題の観点からガソリンエンジン車に代わる交通手段として有力視されているが、価格やバッテリー性能等に多くの課題を含んでいる。しかし、使い方を限定すれば構造も簡単になり、搭載バッテリーも少なく、そして安くつくることができる。本研究会では、通勤などに限定した軽量の超小型電気自動車(マイクロEV)を提案し、普及の可能性を探る。

本研究会が提案するマイクロEVは原動機付自転車のカテゴリーに分類され、多くのメリットがある反面、制約も多い。

【主なメリット】

[1] 市町村で登録できる(国土交通省の認可は不要)
[2] 税金が安い。車検や車庫は不要
[3] 駐車スペースが小型乗用車の3分の1程度
[4] 燃費が良い(ガソリン普通車の30分の1の費用)

【主な制約】

[1] 長さ2.5m、幅1.3m、高さ2mを超えてはならない
[2] 乗車定員は1名
[3] 定格出力600W以下(ガソリン車は50cc以下)
[4] 最高速度は時速60km
[5] 普通自動車免許が必要

試作1号機「Mag-E1」の製作
写真2

写真2 試作1号機「Mag-E1」

研究会ではこれらの制約の中でいかに魅力ある車をつくるかを議論し、デザインと軽量化に注力した試作1号機「Mag-E1(マギーワン)」(Magはマグネシウム、Eは電気、1は1号機を意味する)を製作した(写真2)。Mag-E1は研究会メンバーによる手作りのため費用は材料費だけで済んだが、商品化するには品質的に不十分である。後述する試作2号機は本格的に企業で製作したので、しっかりとした車に仕上がっている。

Mag-E1は、軽量化のため、シャシーを構成する材料に難燃性マグネシウムを用いた。パワーユニットはインホイルモータとコントローラ、バッテリーだけである。駆動方式は後輪のインホイルモータによるダイレクトドライブであるため、トランスミッションやデファレンシャルギヤが必要ない、非常にシンプルで軽量な構造となった。車体外板はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)とした。以上のような工夫を重ねた結果、車体重量を約150kgに抑えることができた。

試作2号機「μ-TT2」の製作

このMag-E1をデモ機としてマイクロEVの必要性をアピールし、群馬県や経済産業省、環境省、国土交通省などへ助成金の申請を行った。予算獲得には苦労したが、結果として環境省や国土交通省のプロジェクト予算を一部使わせてもらえることになった。科学技術振興機構(JST)研究開発プログラム「地域力による脱温暖化と未来の街―桐生の構築プロジェクト」の援助を受けながら、今年度内に、桐生市内で10台のマイクロEVを走らせる計画である。そのため急きょ、試作2号機「μ-TT2(マイクロティティツー)」の製作準備を進めている。

μ-TT2の製作手順として、まず研究会で構想の共有化を行い、その後3つの分科会に分かれて乗員レイアウトやデザイン、電池等の検討を行った。方針が決まった後は研究会メンバーに製作の参画公募を行った。当初、6社が応募し、μ-TT2のベースとなるプラットフォーム「EV汎用足回りユニット」を製作することになった。「EV汎用足回りユニット」は車両の走行装置を前輪部分と後輪部分に分け、それぞれに必要な機能を集約したユニットである。

写真3

写真3 試作2号機「μ-TT2」用ナンバー付試験車

「EV汎用足回りユニット」を製作する時点では予算のめどは立っておらず、当面の開発費は各社に分担してもらわざるを得なかった。各社分担で短期間に製作し展示会等に出展後、市役所でナンバーを取得した。写真3は公道を走るため、最低限の装備を持ったナンバー付の試験車である。この試験車で公道を走り実用試験を経た後、ボディを載せてμ-TT2を完成させる予定である。μ-TT2の製作に当たっては研究会の中で公募を行い、約10社の企業が参画し製作を進めている。製作予算は確定してないが、ある程度はめどが付いてきており、各社が赤字にならない程度の支払いはできそうである。

今後の課題と展望

マイクロEV は安全性を問題視される。今後は、構造的な安全性向上やIT技術を駆使した安全技術の導入が必要と思われる。また、ガソリンの軽自動車より快適性は劣るため、価格面ではそれらより安くなければ競合できない。少量生産でいかに生産コストを下げるかが大きな課題である。さらに、マイクロEVの制約である乗車定員1名に対し、最低2人は乗れるようにとの要望が強くある。法律改正への働き掛けが必要となり、研究会では2009年11月に内閣府に2人乗り特区の申請をしたが却下された。今年度は他団体と連携して再度挑戦する予定である。

これら多くの課題はあるが、今後は高齢化が進み、手軽なコミュニティカーの需要は増していくと思われる。環境問題と両立しながら社会の需要に応えるには、マイクロEVが最適と思われる。今年度、実証試験としてマイクロEVを桐生市内で走らせ、その有用性を証明し、普及への第一歩としたい。