2010年11月号
特集2  - 復興宮崎 熱く
杉の間伐材から家畜の粗飼料
顔写真

山口 秀樹 Profile
(やまぐち・ひでき)

宮崎みどり製薬株式会社
代表取締役社長


わが国の木材(製材品)市場は、割安な輸入材がおよそ80%を占めるまでになっている。戦後、杉やヒノキの造林が奨励されたが、価格低迷のあおりで間伐が進まず杉林などが荒れている。「杉の間伐材から家畜の飼料がつくれないか」。こんなアイデアからプロジェクトが進められた。

わが国では戦後、杉が積極的に植林された。政策的に拡大造林事業が推進され、全国に広大な面積の杉林が存在している。しかし、価格の安い輸入材に押されて、国産材の需要は減少。健全な育林のためには間伐が必要だが、価格が低迷しているために間伐が十分に行われず、杉林は倒木や裂木、山崩れを起こすなどのひ弱い林相を呈している。

当社(宮崎みどり製薬株式会社)は、新規事業開発でこの杉材の利用方法を検討してきた。

着目したのは、家畜の飼料である。わが国は粗飼料を海外から年間130万トン輸入している。しかし、この輸入粗飼料は、家畜の安全性の点で懸念される諸問題がある。

「委託開発」で取り組む

当社製品の試験研究を依頼していた宮崎大学農学部獣医学科黒田治門教授の指導で、科学技術振興事業団(現在、独立行政法人科学技術振興機構=JST)の委託開発事業に「杉間伐材を原料とする家畜粗飼料の製造技術の開発」の課題名で申請したところ採択された。開発研究申請の前提となる既存の特許(事業化されていない)として、農林水産省と日立造船株式会社が特許権者の「圧扁飼料の製造法」があった。これについては、科学技術振興事業団が占有使用を譲り受け、当社が実施権を得て2000年3月から2003年3月まで研究開発に取り組んだ。

また、農林水産省畜産局長通達「飼料製造届出に添付する資料作成のための試験研究法を定めたガイドライン」をクリアするため、林野庁経由で財団法人全国競馬・畜産振興会の助成を得て、乳牛、肥育牛、繁殖牛で安全性の給与確認試験を2000年度から2002年度まで実施した。黒田治門教授を座長に、宮崎県畜産試験場、宮崎県家畜改良事業団、宮崎県経済連等が参加した検討委員会を組織した。いずれも当初の目的以上の結果を得た。そのデータをもって飼料を製造・販売するために必要な飼料製造業者届けを宮崎県知事経由で農林水産大臣に提出し、2001年7月17日付届出済みの承認を得た。そして、科学技術振興事業団から2003年7月4日付で、木質系粗飼料の開発は成功と認定された。

この製品をウットンファイバーと命名した。

少ない有害物質
写真1

写真1 蒸煮が終わり籠を引き出している


写真2

写真2 チップすりつぶし用リファイナー


写真3

写真3 ウットンファイバー

製造技術は次の通りである。

1. 杉材を皮付きのままチッパーで縦横それぞれ約4センチ、厚さ3ミリくらいのチップに加工する。
2. 物理的条件を緩和するため、蒸煮缶(写真1)を使用し、6気圧下で120~160度で90分間蒸煮する。2本の蒸煮缶1回の蒸煮で約12立方メートル(約6トン)のチップ蒸煮が可能である。
3. リファイナー(写真2)を使用し、牛の嗜好(しこう)に適する繊維状にすりつぶす。リファイナーの能力は2台で1時間に約2トン製造できる。

以上の行程を経てできあがった製品(写真3)は、ガスクロマトグラフによる分析の結果、フルフラール(家畜に貧血・運動障害などを起こす有害な物質)は5検体平均で検出限界1ppm以下の数値を示した。この技術は、JSTと共同で「木質系素材を原料とする家畜粗飼料の製造方法」(特許番号:特許第4353686)として、2009年8月7日に特許を取得した。

家畜ふん尿のゼロエミッション化を図る敷料としての用途も
写真4

写真4 牛の菜食風景

次に製品の特徴について述べる。

1. ウットンファイバーは牛のエネルギー源となるVFA(低級脂肪酸)の生産を増加させ、また、第1胃内の胃壁を適度に刺激し、牛の反すう行動を増加させる。
2. 第1胃内の微生物を増殖し、発酵を促進する働きがある。絨毛(じゅうもう)も発達して健康な胃をつくり、餌をよく食べるようになるため(写真4)、食い止まりが少なくなる。
3. 繊維量が稲わらの約1.8倍あり、第1胃内での分解が遅いため、長時間にわたり胃の中に残留し、ふるい効果を発揮する。第1胃内からの流出分の補充は草の半分ですむため、粗飼料を減らし、コストダウンが可能になる。
4. 地元宮崎県をはじめ、南九州で生産される杉材を原料とする純国産の安心できる粗飼料である。工場生産のため季節に関係なく、年間を通じ定質で安定供給することができる。

最近のウットンファイバーは、牛の餌だけではなく、家畜ふん尿のゼロエミッション化を図る敷料としての用途も広がりつつある。

最後に、宮崎みどり製薬株式会社の主力商品について紹介させていただく。常緑広葉樹の樹皮を原料に、バイオマス変換技術により抽出精製した炭と、木酢液から炭の特徴である多孔質と木酢液に含まれる有効成分を活用した動物用医薬品「ネッカリッチ粉剤」、畜産・水産業用混合飼料「スーパーネッカリッチ」、ほかに野菜栽培での土づくりに特殊肥料「サンネッカE」がある。