2010年11月号
特集3  - 続 地域金融・新モデル
山梨中央銀行
大学教授の研究成果を行員がレポートに

込山 紀章 Profile
(こみやま・のりあき)

株式会社山梨中央銀行
営業統括部 公務・法人推進室
調査役

山梨中央銀行は、地元大学の研究者の研究内容をより多くの中小企業に知ってもらうことに取り組んでいる。その1つが「山梨大学発“ビジネスチャンス”直行便」というレポート。同行行員が教授に面談し、「どんな分野で活用できるのか」といった視点でその研究内容を平易にまとめている。

はじめに

地域金融機関と地元経済とは一心同体であり、地域が元気でなければ、銀行の成長もあり得ない。山梨県を主要な営業基盤とする当行は、これまで企業の資金ニーズに応えることにより地域経済に貢献してきたが、真の意味で「地域を元気にする」役割をしっかりと果たしてきたかというと、やや不十分な面もあった。

そこで当行では、従来からのビジネスモデルを一歩進め、「地域活性化」を積極的に推進する体制を構築し、それを実現するための手法の1つとして「産学官金の連携」を新たなビジネスモデルと位置付けた。

従前、大学の研究成果は、地域の中小企業等にあまり周知されていない状況が一般的であった。しかし、地元の山梨大学は、独立行政法人化を機に、地域経済発展のため地域企業や地方公共団体等との連携を進めるなど、地域との連携に積極的な姿勢へと転換した。

当行では、こうした産学官金の連携を進めていく上で、山梨大学と当行が協調し、地域企業や地方公共団体等とのコーディネート役を担い、「産学官金」による地域経済活性化のための仕組みづくりが必要であると考え、平成17年7月に山梨大学と「包括的業務連携協定」を締結した。この協定を機に、山梨大学との連携による地域活性化諸施策を具現化している。

「山梨大学発“ビジネスチャンス”直行便!」の発刊

これまで、地域の中小企業等は「大学にどのような教授がいて、何の研究をしているのか。どのような研究成果が出ているのか」ということについて知る機会が少なかった。

また、中小企業にとって、技術的な悩みの解決を図るためには多大な時間と資金を要するため、事業計画そのものを変更せざるを得ないケースも数多くあった。

一方、大学側も独立行政法人化により、自ら研究に充てる資金の確保に努めなければならなくなってきた。

このような環境の中で、当行は、大学や教授の研究内容をより多くの中小企業等に知っていただき、民間での活用方法を提案することは、双方にとって大きなメリットになるものと考え、山梨大学の教授とその研究内容を広く伝えるツールとして、「山梨大学発“ビジネスチャンス”直行便!」を作成してはどうかと大学に提案し、発刊することとなった。

写真1

写真1 山梨大学発“ビジネスチャンス”直行便!

「山梨大学発“ビジネスチャンス”直行便!」は、当行の本部行員が直接大学教授と面談し、「研究の内容」「どのような分野で活用できるのか」「企業との連携の可能性」といった視点で取材を行い、それを専門家以外の誰にでも理解できるような内容にかみ砕いて、平易にまとめたレポートである。

平成18年6月の創刊以来、現在までに37号発刊し、当行の営業基盤である山梨県内および西東京地区の製造業者をはじめ、新事業創出や経営革新に意欲のある中小企業者約2,000先に、専用ファイルとともに配付している(写真1)。

「山梨大学発“ビジネスチャンス”直行便!」をきっかけに、企業からは「これから新事業・研究開発に取り組むにあたり、この研究成果をベースとしたビジネス展開を考えているので教授を紹介してほしい」「大学の研究内容をもっと教えてほしい」といった話が当行に寄せられるようになり、企業と大学とを橋渡しする有効なツールとして活用されている。また、当行行員にとっても技術的な知識を蓄えることで、企業分析における「目利き力」を養うツールにもなっている。

山梨中銀経営支援コーディネートサービス

中小企業等が抱える経営課題や悩みは高度化・多様化しており、お客さまのニーズに対して当行単独で解決策を提案し対応することが難しい案件も増えている。そこで、当行と地域の支援機関等が連携することで、質の高いきめ細かなソリューションを提供できるのではないかと考え、平成18年1月に「山梨中銀経営支援コーディネートサービス」の取り扱いを開始した(図1)。

図1

図1 山梨中銀経営支援コーディネートサービス

本サービスにより、地域や分野ごとに窓口が異なる外部機関等の支援メニューを、当行が総合窓口となりワンストップで提供することで、「お客さまの利便性向上」と「実効性の高い経営サポート」につながっている。

本サービスの連携先の1つに山梨大学があり、技術面での相談を中心に、これまでに100件近い案件を対応してきた。これらのうちの幾つかは、山梨大学と共同研究契約や技術指導契約を締結するなど、事業化に向けた具体的な動きも出始めており、この中から世界に通用する新しい技術や製品が誕生することを期待している。

また、本年7月には、山梨学院大学、山梨学院短期大学とも「包括的業務連携協定」を締結し、本サービスの連携先として両大学が加わった。

山梨大学は工学部や医学部が中心であり、ものづくりや技術といった、いわゆるハード面における課題解決の支援を得意としている。一方、山梨学院大学および山梨学院短期大学の強みは、経営や商業、マーケティング、法律など、いわゆるソフト面での専門知識であり、これらの分野における課題解決の支援に力を発揮している。

産学官金連携の理想的な姿として、本サービスの枠組みの中で、地域の中小企業等が、山梨大学との共同研究により新製品・新技術を開発し、それらの製品・技術について、山梨学院大学の専門知識である経営論やマーケティング手法を取り入れながら、販売戦略を展開していくといったビジネスモデルを構築していきたいと考えている。