2010年11月号
編集後記

近年、口蹄疫のように想定外な事態の発生や、商店街のシャッター通り化、医療の地域格差など多くの問題課題が山積している。これらへの対応は単独では難しく、各分野の専門家や関係者による目的・目標を共有する連携によって達成されるものである。自治体や地域から目標方針が提示され、それに向かって産学官が連携してシステム構築や改革を推進することにより、深刻な事態発生を回避できるのではなかろうか。地方分権が叫ばれている今日こそ、産学官金連携の出番であると言える。特に、「金」はクライアントを通しての課題収集とテーマ提起をする最適機関であろう。これまでの「待ちの姿勢」から脱却して、課題解決をしたいところがリーダーシップをとるべきである。

(編集委員長・高橋 富男)

J.F.ケネディが尊敬する日本人として挙げた「上杉鷹山」は有名であるが、備中松山藩の漢学者「山田方谷」はそれほど知られていない。方谷は、藩の借金10万両を7年で完済するとともに、年間2万石弱の藩の実収入を20万石に匹敵するまでに立て直した。その手法は、自らの「理財論」を核に、藩に節約を迫る一方、当時の成長産業である砂鉄からの備中鍬、タバコ、茶、柚餅など地元特産品の開発に投資し、生産者の利益を重視する政策を実行した。また、日本最古の庶民学校「閑谷学校」を再建し藩士以外の領民の教育にも力を注いだ。

目先の現象にとらわれず、中長期投資と人材育成を重視していく方谷の姿勢は、現在にも十分通じるところである。

(編集委員・藤川 昇)

鈴木章・北海道大学名誉教授と根岸英一・米パデュー大学特別教授ら3人が受賞する今年のノーベル化学賞。報道のなかで面白かったのは、鈴木氏らの同賞獲得を目指して展開してきた北海道大学のPR作戦が奏功したというもの。クロスカップリングの意義、産業界・社会への貢献、鈴木氏らの功績を知ってもらうため、国内外で多くの国際会議を開催。同賞候補者の推薦依頼が来そうな大物学者らも講師に招き、理解者を増やしてきたという。これで思い出したのは、2002年に同物理学賞を受賞した小柴昌俊氏らのグループが、論文発表の時期と発表の方法をめぐり外国の研究グループと熾烈な駆け引きをしたという新聞記事だ。「栄誉」には、そういう闘いの一面もあるのかなと思う。

(編集長・登坂 和洋)