2010年12月号
インタビュー
低炭素社会支えるシリコンカーバイド
デバイス実用化への道を切り開く
顔写真

松波 弘之 Profile
(まつなみ・ひろゆき)

京都大学 名誉教授/
独立行政法人 科学技術振興機構
JSTイノベーションプラザ京都 館長

聞き手:登坂 和洋 Profile



わが国でシリコンカーバイド(炭化ケイ素、SiC)製のパワーデバイス(電力制御変換用半導体、以下パワー半導体)ビジネスが動き始めた。ロームは4月下旬、日本企業として初めてSiCパワー半導体(ショットキーダイオード)の量産出荷を開始。三菱電機はSiCパワー半導体を搭載した初の製品としてエアコンを11月下旬に発売した。新電元工業は7月にSiCショットキーダイオードのサンプル出荷をスタートさせ、2011年夏ごろの量産を目指す。新日本無線も同様の計画を発表している。新日本製鐵はSiCウエハを事業化した。一方で、将来をにらみ官民を挙げての研究開発も熱を帯びている。

半導体というと、演算や記憶などの働きをするマイコン、メモリーなどのLSI(大規模集積回路)を思い浮かべるが、パワー半導体は電力を効率よく制御する働きをする。例えば、交流から直流への変換、電圧の上げ下げ、あるいは電流をきめ細かく整えたりする。目的は電力を効率よく使うこと、つまり省エネルギーだ。パワー半導体は低炭素社会に向けて、必要不可欠の電子部品なのである。

国内で生産されるルームエアコンはほぼ100%インバータ付きだが、このインバータにパワー半導体が使われている。パワー半導体はエアコン、冷蔵庫、洗濯機といった家電のほか、自動車(ハイブリッド車、電気自動車)、新エネルギー(太陽光発電、風力発電)、産業機器(ロボット、モーター制御)、鉄道などで使われている。将来はスマートグリッドの送変電での利用も視野に入っている。

パワー半導体の素材はシリコン(Si)である。しかし、Siパワー半導体は高い電圧に耐えられず、温度の上昇にも弱い。電力を変換するときのロスも大きい。性能は向上しているものの、Siの物性に起因する性能の限界に近づいている。

次世代のパワー半導体の材料として期待されているのがSiCだ。Siパワー半導体と比較すると、電力の損失を10分の1以下に抑えられる。高い電圧の耐圧性、耐熱性も優れている。熱に強いので、Si製ほど大がかりな冷却装置が必要ない。このため、機器を小型化、薄型化できるというメリットもある。

国内で各企業がSiCパワー半導体ビジネスの主導権を握ろうと躍起になっている。一方、世界に目を向けると、各国とも官民挙げてその研究開発に力を入れている。わが国では3つのプロジェクトが進んでいる。

SiCデバイスの第一人者が京都大学名誉教授の松波弘之(科学技術振興機構・JSTイノベーションプラザ京都館長)だ。京都大学在任中の1987年、高品質のSiCエピタキシャル結晶の製造方法を世界で初めて開発、1993、1995年には世界初の耐圧1,000 V以上のショットキーダイオードを製造するなど、20年かけて実用化への道を切り開いた。

(聞き手・本文構成:登坂和洋/本誌編集長)


1939年大阪府生まれ。64年京都大学工学研究科電子工学専攻修士課程修了、工学部助手。工学博士。71年同大学工学部助教授。76~77年米国ノースカロライナ州立大学客員准教授。83年京都大学工学部教授。96年同大学工学研究科教授。2003年同大学名誉教授、独立行政法人科学技術振興機構・JSTイノベーションプラザ京都館長。電子情報通信学会、IEEE(米国電気電子学会)、応用物理学会 フェロー。

高品質のSiCエピタキシャル結晶の製造方法を世界で初めて開発

SiCはダイヤモンドのように硬く、シリコンのような電気的特性を持っている。自然界に存在しない材料で、1892年、米国の科学者アチソンが発明し、耐火レンガや研磨材などに使われてきた。

半導体の材料としての可能性が注目され、各国で研究が始まったのが1950年代半ば。しかし、高品質の結晶を成長させる技術の研究開発が進まず、一方で1960年代にSi半導体の実用化のめどが立ったため、SiC研究が下火になり、1973年に実質的に終息した。

松波が研究を始めたのは世界的な研究熱が冷め始めた1968年だ。

松波 SiCは結晶作製が難しいものの、その優れた特性を産業界で生かしたいという気持ちからでした。結晶成長が難しいので、時間をかけて行える大学での研究に適していると考えました。その研究は、青色発光ダイオードのための液相エピタキシーと、電子デバイス応用を考えてSi基板上へSiCの気相エピタキシー、の2本立てで進めることにしました。

図1

図1 ステップ制御エピタキシーの概念

液相エピタキシー、青色発光ダイオードの研究開発に成功し、1980年代半ばにはその成果を使って三洋電機が青色発光ダイオードを商品化した。その後、気相エピタキシーの研究に集中的に取り組み、1987年、世界で初めて高品質のSiCエピタキシャル結晶を成長させる方法を開発した。「オフ基板(通常の基板に傾斜を付けてスライスした基板)」の上に成長させる方法で、「ステップ制御エピタキシー」と名付けた。

【ステップ制御エピタキシー】
SiCは原子の積層の仕方が複雑である。SiCの低指数面(0001)には広いテラスがあり、積層順はテラス表面で決まる。化学結合に2つの選択肢があるので、基板の積層順を再現するためには基板温度を十分高める必要がある。低指数面に傾斜を付けたオフ基板には数多くのステップが形成され、テラスは狭くなる。気相から到達した原子(分子)は狭いテラス上を動き回り、表面エネルギーの低いステップに吸着する。結晶成長はこのステップ端から始まるので化学結合が一義的に決まる。これが、比較的低温で基板の複雑な積層順を引き継ぐ理由である(図1)。

松波 いろいろ苦労して「ステップ制御エピタキシー」を開発した時には、68年からSiCの研究を始めて既に20年近く経っていたんです。この「ステップ制御エピタキシー」はブレークスルーのような気がしたので、一緒にやりませんかと幾つかの企業に声を掛けたんです。しかし、87年当時、日本経済はまだまだ右肩上がり、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代で、Siの半導体産業が飛躍的に伸びていましたから、「次の世代のことなんて考えられないよ」ということでした。材料開発だけでなく、プロセスとデバイスを見せなければ駄目だなと思いました。

図2

図2 高耐圧ショットキーダイオードの特性

これまでの研究成果を元に、松波らは1993年、高周波に適した1 kV耐圧のショットキーダイオードを6H-SiCで試作した。続いて、パワー半導体として4H-SiC結晶多形が適していることを示し、1995年には1.75 kV耐圧で低損失の4H-SiCショットキーダイオードを提示した(図2)。

国外では、SiC研究に先行して取り組んだのはドイツのシーメンス社。90年代前半から研究を進めていた。同社から分離独立したインフィニオン社が2001年に、1993、95年の松波らの研究成果を元に、初めてSiCダイオードを市場に送りだした。

インフィニオン社で研究開発およびプロジェクトマネージャーとしてそれまで11年間 SiCデバイスに携ってきたDr.Roland Ruppは2002年春、松波の文部科学大臣賞受賞に際して、文部科学省に推薦文を送った。その中で、「私の仕事は松波教授とそのグループによって達成された基礎科学的な成果に依っている」として幾つか例を挙げている。2つを引いてみる。

【ドイツ・インフィニオン社のDr.Roland Ruppの手紙から】
1987年、彼(松波)は、(世界で初めて)オフ基板SiC面上への「ステップ制御エピタキシー」を報告した。この新しい方法により、初めて、エピタキシャル成長温度を数百度下げることができ、1,500 ℃で行えるようになった。今日、研究や製造に使うSiCエピタキシャル成長装置は、すべてこの科学的ブレークスルーを基本としている。成長温度を下げることは、製造プロセスを安くし、不純物濃度を低くできる。このことは、すべてのデバイスの耐圧を高くすることの前提条件である。ここ、インフィニオン社では、SiCショットキーダイオードの製造に「ステップ制御エピタキシャル成長」を使っている。
1993、95年に松波は、耐圧1,000 V以上のショットキーダイオードを世界で初めて報告した。それが引き金となり、多くの場所で、これらの新しいユニポーラデバイスによって達成できるパワーサプライシステムの利点が研究されるようになった。もちろん、インフィニオン社においても。加えて、4H-SiC結晶多形がこの応用に適していることを示唆した。事実、今日、この結晶多形が、商品化されたダイオードで使われている。

松波 われわれがつくったSiCショットキーダイオード用結晶の表面はものすごくきれいで、素晴らしいものでした。高耐圧のSiCデバイスをつくったというので、パワーデバイスの世界では大きな話題になり、Siの人たちは慌てたようです。それで再度企業に提案したら、今度は、「研究開発をやりたいけど、バブルがはじけて、とてもそういうお金は会社から出ない」と断わられました。しかし、ドイツのシーメンス系のインフィニオン社は静かに潜行して研究開発を進め、2001年に商品を出してしまったんです。それまでに私どもがやっていた研究の成果が、インフィニオン社のお手本になっている。残念ながら、パワーデバイスから見ても、日本の90年代は失われた10年そのものです。

SiのIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が今日のパワーデバイスの主役ですが、これは日本がものすごく強いんです、三菱電機、日立、東芝などが。シーメンスは日本に押さえられている。向こうは、パワーモジュールというシステムとして売るんですけれども、そのデバイスを日本から買うのは戦略的に具合が悪い。そういうことでそこを何とかクリアしようと考えた。しかし、Siでは負けるから、次の世代のことを考えるというのが92年の彼らのデシジョンですね。右肩上がりの成長を続けていた日本は次の時代のことを余り考えず、そのうちばたっと倒れてしまったということでしょう。

産業化を目標に長い間SiCの研究を続けてこられたのは、一歩一歩進んでいるという感覚があったからです。振り返ってみると、5、6年に1度エポックメーキングなことをやっているんですね。第1に、青色発光ダイオードの開発です。これは三洋電機が商品化しました。第2に、80年代の初めに、シリコンの上にシリコンカーバイド(3C-SiC)がつくれるようにしました。われわれのこの成功を見て、米国のNASA(航空宇宙局)の研究所が研究を再開しました。これがオフィス・オブ・ネ-バルリサーチを刺激しました。米国では、そこからSiC研究に資金をどんどん投入し始めました。第3に、「ステップ制御エピタキシャル成長」の発明、これは、SiCが戦略材料パワー半導体としての道を進むきっかけです。

科学研究費に支えられ

表1 SiC関連科学研究費

表2

松波 私の研究は、主に科学研究費に支えられ、これに加えて、受託研究、奨学寄付金などを使わせてもらいました。当時は、JSTの研究費は特例を除いて、大学の研究者は受けることができなかったように記憶しています。材料の研究には、毎年10,000千円程度の材料・消耗品が必要です。したがって、科学研究費申請のシーズンには必死で申請書を仕上げました。手書きからワープロ、PCへと変遷しましたが、手書きのころは、ゼロックスコピーもなく、部数を必要とする場合は、提出用3部でも大変でした。当初は、ブームの去った分野の研究と言うことで、研究は講座費で賄いました。1970年、助教授のころ、SiC関連の研究で一般研究Aの採択を得ました(代表研究者は田中教授)。高周波発振器やガス系の装置をそろえることができ、手作りの反応炉で気相成長を始めました。「ステップ制御エピタキシー」法の確立後は、手元に結晶成長装置を持っていることの強みで、欲しい構造や伝導性制御が容易にでき、先取りのできる研究に大きく役立ちました。このころから科学研究費の採択を受け、1997年には、「特別推進研究」の推薦を受けました。SiC関連で受けた科学研究費を表1に示します。幾つもの国家プロジェクトは企業向けで、大学の研究支援には縁遠いものでした。

近年の研究費の支援について感じていることを述べたく思います。多額の研究費が支援されていますが、ほとんどの研究費は競争的資金であり、ピアレビュー(peer review)によって採択が決められています。「科学の神髄を追求する」あるいは「自分の考えを実用に展開しようと努力する」など、研究者の真底から出る提案を採択することが期待されます。これにピアレビューが適しているかどうかは考えものだと思っています。複数の査読者が良と判断するものは、先が見えています。トランスフォーマティブ・リサーチ(transformative research)が期待されています。「大化けする研究」とでも訳すのでしょう。研究費総額の一部でよいので、査読者の評価の分かれた研究課題の採択法を考えるべきと思います。今日・明日の課題は実業界が実施し、国の施策は明後日の課題を支援する姿勢であろうと思います。明々後日の課題をどのように発掘していくかが大変重要だと思います。

「ステップ制御エピタキシー」を含むSiC関連の基本的な研究成果は、ほとんどが京都大学から発信したもので、関連論文数は250件を超え、引用件数は5,500件を超えています。結晶成長装置を持って研究を進めたことが大きく寄与しています。希望する構造や伝導性、不純物濃度などが短時間で実現でき、それが研究の早取りを達成するのに役立ちました。多くの若者がこの研究に取り組んでくれたのも、京都大学のこの分野における進展の大きな要素です。

米国におけるクリー(CREE)社の設立

松波は以下の4つで産業界と大きくかかわった。いわゆる「産学連携」である。

1. 米国・クリー社の設立のきっかけ
2. ドイツ・インフィニオン社におけるSiCショットキーダイオード
3. ローム社におけるショットキーダイオードの市販(京都大学・ローム・東京エレクトロンによる高品質エピ装置)
4. 三菱電機、日立製作所、富士電機、パナソニック、住友電気工業などの企業と、研究者の受け入れや受託研究(間接的にもろもろの支援)

ドイツのインフィニオン社とのかかわりは既に述べた通りだが、米国のクリー社は1991年にSiCウエハの販売を始めている。

松波 私は1976、77年にノースカロライナ州立大学へ客員准教授として行っていました。そこのセミナーで、京都大学での成果の幾つかを紹介しました。そのときに、カリフォルニアのバークレーを出た材料科学のデイビス教授(SiCを核融合炉の壁材料として研究経験あり)が、将来の研究費を取得するためにSiCのエレクトロニクス応用について教えて欲しいと言ってきたんです。私は、ブレークスルーの1つは結晶の成長法であり、デバイスとしても1歩進んだがまだ満足はしていないという趣旨のことを話しました。彼はこれにヒントを得て、結晶成長からスタートすればデバイスとしてうまくいくかも知れないと考え、研究を頑張ろうということになったようです。その後、京都大学に2、3週間滞在し、結晶成長の基礎を修得して帰りました。1981年から8年間にわたって、オフィス・オブ・ネーバルリサーチから多額の研究費を支援してもらいました。この研究費で育ったポスドクら5人が87年に設立した会社がクリー社です。現在、2,000人以上の規模と聞いています。

ロームのショットキーダイオードの市販/京都大学・ローム・東京エレクトロンによる高品質エピ装置

ロームは、90年代後半からSiCの研究開発を目指し、京都大学に研究員を送るなど接点を持ち始めた。国内において、いち早くショットキーダイオードを開発し、独自の技術を基に、2010年に市販に至っている。2004年ごろからは、デバイスには高品質エピタキシャル成長装置の開発が最重要であるとの認識から、東京エレクトロン(TEL)と組み、京都大学のエピタキシャル成長技術を取り込んで開発を続け、先端を行く装置を完成させてTELから販売を始めている。京都発の企業で独自の戦略を持ち、MOSFET(金属/酸化膜/半導体 電界効果トランジスタ)開発では、京都大学との共同で究極の構造と言えるトレンチMOSFETで世界最高の性能を示すなど、先端を進んでいる。

国のプロジェクト

わが国でSiCおよびそのデバイスの研究開発に国の資金が投じられたのは1994-2000年の「燃焼等制御システム開発」地域重要プロジェクト(近畿通産局:当時)が最初だ。

松波 材料だけでは企業がこっちを向かないので、やむを得ず大学でプロセスをやり、デバイスを提示したというのが、1993、95年に高周波に適したSiCショットキーダイオードを試作した背景でした。そこからみんなが、特に国内企業がこっちを向き出しました。しかし、個々の企業で開発を進めるのは予算面でなかなか難しいので、戦略材料の観点からも国として何とか考えなきゃいかんと思い、当時の電子技術総合研究所(電総研)に相談をしたんです。しかし、80年代の半ば以降、米国から日本に対して「基礎技術ただ乗り論」という批判が続いていたため、材料とかデバイスというものを掲げて国のプロジェクトが組めないということでした。幸いなことに近畿地方の通産局(現経済産業局)が、これはむしろ先行きのことを考えたら必要だと言って、地域重要プロジェクトとして細々とスタートをしてくれたのです。

現在、以下の3つの国のプロジェクトが展開されている。

「次世代パワーエレクトロニクス技術開発(グリーンITプロジェクト)」(2009-2012、NEDO)
最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)「低炭素社会創成へ向けたSiC革新パワーエレクトロニクスの研究開発」(2009-2013、日本学術振興会)
「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」(2010-2014、経済産業省)

図3

図3 SiC技術進展のロードマップ

図3に3つのプロジェクトのロードマップを示す。

松波 昨年度から動いている「グリーンITプロジェクト」で何をやっているかというと、1つ目は太陽光電池の直流を交流に変えるインバータ、これは三菱電機です。2つ目は、データセンターのサーバの電源がものすごくエネルギーロスをしているので、そこを低消費電力にしようということで日立製作所が取り組んでいます。さらに、つくばの産業技術総合研究所(産総研)の要素技術開発があります。当面の技術開発をテーマとするこのグリーンITプロジェクトを第1世代とすると、新材料パワー半導体プロジェクトは第2世代です。ウエハでは6インチ、デバイスでは高耐圧(3~5kV)が目標です。産業界・大学を含め、25グループが関与し、産総研を中心に進められています。そして、京都大学の木本恒暢教授を中心とした最先端研究開発(FIRST)プログラムが第3世代です。第3世代では、産業界の技術を支える大学群の基盤・基礎研究、100μm厚さの高品質結晶開発、デバイスはスマートグリッドなど電力インフラ用の超高耐圧(10 kV以上)を目指しています。FIRSTプログラムでは共同提案者として協力しています。これに加え、第2世代の研究開発プログラムの立ち上げに協力しました。

今春、SiCに関連する日本の企業と大学などが幅広く結集するための枠組みとして「SiCアライアンス」が発足した。材料ベンダーから自動車など最終ユーザーまで参加し、当面、SiC基板の大口径化を目指す。松波が会長を務めている。

松波 ファイナンスソースが違うとどうしても別々の活動になりがちなので、こういう連携の意義があるのではないかと思います。SiCにかかわる第1、第2、第3世代の人たち、川上から川下まで幅広く入っていただく。企業中心の開発は対処療法とかパッチワークになっているので、大学の先生たちに学理的裏付けをつけてもらうのが私の希望です。

今後、SiCデバイスが果たす役割と課題

松波 SiCのデバイス開発の仕事は、エネルギーや環境負荷低減に関するものですから、特許を押さえて一企業とだけで実行できるものではありません。そのため、幾つもの国家プロジェクトの立ち上げに関与して、国レベルでの展開を図ろうとしました。アメリカ、ヨーロッパが先行していますが、今年から始まったわが国の国家プロジェクトはAll Japanで取り組むもので、川上、川下が一体となって、新時代パワー半導体技術を発展させたいと思っています。課題はオープンイノベーションの難しさですが、それを克服したく思っています。これが、競争力を強めた日本の新規産業として発展してくれれば、雇用促進にもつながるでしょう。低損失SiCパワーシステムを用いて電力の有効利用を図り省エネルギーを達成し、環境負荷低減、低炭素社会創成に役立たせたく思います。自動車の将来は電気自動車への流れを止められず、低炭素化社会創成に欠かせません。SiCパワー半導体の応用として大きなマス(mass)が見えていて、戦略的に大変重要です。しかし、現在、SiCパワー半導体は高価であり、すぐには採用が困難です。手近なところでの活用を経て、目標に近づくべく、第2世代の研究開発が開始されたと言ってよいでしょう。戦略と戦術を考える姿勢を確立したく思っています。