2010年12月号
連載3  - 東北テクノアーチ 12年の歩み
(中)
発明の評価・活用と権利化支援
顔写真

井硲 弘 Profile
(いさこ・ひろし)

株式会社東北テクノアーチ
代表取締役社長


国立大学法人化に伴って東北大学に知的財産部ができた当時の、技術移転機関の東北テクノアーチと大学の関係などを紹介する。

前号において、東北テクノアーチ(TTA)は技術移転に特化した活動を実施してきていることを紹介した。当初は個人帰属の発明を取り扱っていたが、平成16年度の国立大学法人化とともに発明が機関帰属となり、かつ東北大学に知的財産部が設置されたことから、TTAは機関帰属発明に関しては、東北大学から業務委託を受けて取り扱うこととなった。

東北大学知財部との業務分担

平成16年4月、東北大学に知的財産部が設置された。国立大学法人化に伴うもので、その前年に東北大学知的財産本部整備事業準備委員会が設置、開催され、TTAもメンバーとして参加していた。そこで、知財部とTTAとの業務分担について協議するとともに、職務発明取り扱いに関する諸ルールの検討・作成などについても全面的に協力し、平成16年4月からの発明の機関帰属化に備えていた。

TTAは、発明の評価業務(権利化の可能性および市場性)、活用および権利化支援業務を担当し、東北大学から業務委託を受けることになるとみていた。

また、職務発明として多くの発明届出があると予想し、TTAは急きょスタッフを増強して、その要請に応えるべく準備完了していた。

しかし、平成16年4月に新たに就任された知財部長と室長は、これまで検討されてきた方針とは異なり、電子出願により届出のあった発明は原則100%出願する方式とするなど、知的財産の取り扱いについて独自の方針で進め始めたのである。

全数出願では発明の評価も原則不要となることから、TTAに対する評価依頼件数が極端に少なくなり、このままでは活動ができない状況に追い込まれ、その改善を再三東北大学に申し入れる事態となった。

平成16年7月、この問題についてようやく東北大学とTTAの話し合いが始まった。そして、全数出願を取りやめるとともに、当初検討していた業務分担に沿ってTTAは職務発明を取り扱うこととなった。以後、TTAは発明の評価、活用および権利化支援業務を担当することで今日に及んでいる。

東北地域各大学との関係では、個人帰属時代には各大学から発明を受け、TTAで評価の上、活用が図れる見込みのあるものを譲り受けて活動していた。機関帰属変更に伴い、各大学は内部でその取り扱いを協議し、その間、特許に関する活動が中断していた。帰属の取り扱いなどが決定された後は、逐次各大学からの依頼によりTTAとの間で業務委託契約を結び、特に発明の活用についてTTAが技術移転活動を実施してきている。

若手人材の採用とバイオ案件への注力

技術移転活動を成功させるためには、まずは人であるが、経営面からみると、最大の課題はその人件費である。

TTAは創業以来技術移転スタッフとして、地元企業から出向者を、また発明協会から特許流通アドバイザーを派遣していただいてきた。

技術移転の業務を遂行するには、優秀な技術移転スタッフが必要であるが、その業務は標準化されにくく、個人の能力をOJTによる研さんを積むこととで向上させることとなり、そのためには少なくとも5~8年の経験が必要と思われる。企業から優秀な出向者を派遣いただいても、2~3年で出向元の事情により交替することとなっていたので、早く自前の社員を、それもこの困難な技術移転の業務を遂行するため、自分で考えながら積極的に行動できる若手を採用したいと考えていた。

TTAでは、ここ2、3年の間にようやくこのような若手社員を採用することができるようになり、その育成に努めているところである。

一方、平成16年4月に、発明が機関帰属になってからは、特にバイオ関係の発明の届出が増加し、その中からは魅力的な発明も増加しつつある。

そこでバイオ関連シーズを積極的に技術移転するため、バイオに関する素養を持った若手人材を募集・採用するとともに、昨年7月に東北大学医学部のご協力の下、よりバイオ関連のシーズ発掘のため医学部内にTTA分室を設置し、スタッフを常駐させている。このため、医学部教官からの相談なども増加しつつある。

シーズ紹介アプローチの多様化
写真1

写真1 BIO2010(米国・シカゴ)

シーズ紹介は、潜在的なライセンス候補に対して直接アプローチすることを基本としているが、効率的なアプローチ方法として、表1に示すように昨年から国内外の展示会への出展を増やしている。特にバイオ関連シーズに関しては、市場の大きな米国へのアプローチのため昨年はアトランタ、今年はシカゴで開催されたバイオの展示会(写真1)に出展した。その結果、一部契約の締結に至っている案件も出始めている。

表1 シーズ紹介アプローチ

表1
写真2

写真2 BioJapan2010

また、国内ではBioJapan2010に出展、弊社スタッフが案件紹介をして好評であった(写真2)。

米国のバイオ展示会では、積極的にシーズを求めている企業が多く、意思決定ができるクラスの人が来場しているとの感想を持った。

なお、グローバル市場への技術移転をするためには、図1に示すような事項を組織としても技術移転スタッフとしてもこなす必要がある。特に海外の相手とのレスポンスは、外国と日本との時差を有効に使うなどEメールあるいは電話会議など英語を駆使した交渉となる。

図1

図1 global対応