2010年12月号
イベント・レポート
全国イノベーションコーディネータフォーラム2010
広がるコーディネータの役割を確認

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写真1 全国イノベーションコーディネータフォーラ
    ム2010

2010年11月29、30の両日、静岡県浜松市のアクトシティ浜松・コングレスセンターで「全国イノベーションコーディネータフォーラム2010」(科学技術振興機構=JST=主催)が開催された(写真1)。同フォーラムは、産学官連携に従事する全国のコーディネータが、課題や解決策を共有することでスキルを高め、イノベーション創出につなげることを目的にしている。全国から271人が参加した。産学官連携を取り巻く環境は大きく変化し、特に大学の産学連携部門では、持続可能なシステムの構築が求められるようになっている。このため参加者からは、必死に情報を収集し明日の産学官連携を模索する意気込みが感じられた。

主催者を代表し小原満穂JST理事が「コーディネータは日本だけが持っている制度。大学は外に向かってアピールしていかなければならないし、中小企業にとってはコーディネータがいなければ独創技術を事業に取り入れるのが難しい。コーディネータの役割は拡大しており、このフォーラムを通じて情報を共有するとともにコーディネータ同士の交流を図っていただきたい」と挨拶した。

文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官の増子宏氏が「今後の地域イノベーションについて」と題して基調講演を行った。増子氏は、日本の科学技術政策、地域科学技術振興施策、コーディネータ活動の強化に向けた取り組みなどを紹介。今後のコーディネータには、「科学技術システム改革に寄与(多くのシーズをスムーズに実用化につなぐ→イノベーションに発展させる→日本・世界の文化・経済・社会に貢献する)」「プロジェクトプロデューサー」「プロジェクトマネジャー」の3つの役割が期待されると述べた。また、地域の産学官連携の成果を上げるポイントとして、明確な目標に向かって施策ツールを総動員すること、産学官各セクターの「やる気」「本気」「熱意」を引き出すこと、三者が一体となった研究開発、知財、事業化の三位一体の戦略づくり、さらに、優れたシーズと企業との真のマッチング――を挙げた。

「総合プロデューサー」の役割

東京理科大学特命教授の塚本修氏(前・経済産業省地域経済産業審議官)が「日本は何で稼ぎ、何で雇用するのか――地域からのイノベーション戦略とコーディネータの役割――」と題して特別講演を行った。塚本氏は、地域の特性にあった多様な発展のパターンがあるとし、具体的に国際競争力拠点化、地域産業集積高度化、新地域基幹産業育成、観光交流発展化、地域生活課題解決の5つのモデルを提示した。今後、コーディネータは「地域イノベーションの総合プロデューサー」の役割を果たすべきだと述べた。


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写真2 パネルディスカッション

日程2日目の30日は財団法人浜松地域テクノポリス推進機構理事長の津田紘氏の特別講演「歴史は事実を物語り、事実は未来を創れる」と、パネルディスカッション「これからの産学官連携とコーディネータの役割」が行われた(写真2)。

津田氏は、地域に存在する多くの支援・推進機関の「見える化」が必要とし、具体的な改善策として「地域が力を出すワザはある」「行革・仕分けにより、税金の効率的・柔軟性ある運用を」「ビジョンを持って、イニシアチブを取るトップが必要」「“新産業創出”、“組織ネットワーク”など言葉が上滑りしているが、地域全体が一体感を持って進める“実態ある協業”いわゆるクロスカップリング(触媒)の機能が必要」の4点を指摘した。また、コーディネータの姿勢として、「地域の産業構造の違いを超えてこそ眼力が試される」とし、「関係者を満足させ、成果という“価値”をバックに堂々と報酬を得よう」と述べた。

コーディネータ表彰受賞者が活動を披露

このフォーラムの中で、JSTが昨年創設した「イノベーションコーディネータ表彰」の2010年度受賞者(第2回)の表彰式が行われた(同表彰の受賞者の記事を本号=2010年12月号=で特集)が、パネルディスカッションに、今回、イノベーションコーディネータ大賞・文部科学大臣賞を受賞した鈴木康之JSTイノベーションサテライト静岡科学技術コーディネータ、イノベーションコーディネータ賞・奨励賞を受賞した江上美芽東京女子医科大学先端生命医科学研究所客員教授/チーフ・メディカルイノベーションオフィサーが参加した。パネリストは、基調講演を行った浜松地域テクノポリス推進機構の津田理事長、株式会社GFN代表取締役の五味由紀子氏、小誌編集長登坂和洋を合わせた5人で、東京農工大学大学院技術経営研究科講師の藤井堅氏がモデレーターとなりディスカッションが行われた。

鈴木コーディネータと江上氏は、それぞれの活動の紹介とコーディネータの課題、イノベーション実現のための方策などについて提言。「活動の成果は進ちょく状況を含め説明されているか」「産学官連携活動は広く社会・住民から支持されているか」といった論点も加えて全員で討議。コーディネータの役割がますます重要になっていることを確認し合った。

(登坂 和洋:本誌編集長)

全国イノベーションコーディネータフォーラム2010
日時:2010年11月29日(月)~30日(火)
会場:アクトシティ浜松 コングレスセンター(静岡県・浜松市)
主催:独立行政法人 科学技術振興機構