2011年1月号
特集  - 大学特許の活用戦略
大学の国際的な技術移転を加速する知財仲介者の役割

山本 光良 Profile
(やまもと・みつよし)

Japan Technology Group, Inc.
東京支社代表、マーケティング・ディレクター


米国を拠点とする日系唯一の技術移転会社、Japan Technology Group, Inc.(JTG)は、日本の大学とも提携して、その国際的な産学連携活動の支援をしている。そのビジネスの理念、役割を紹介する。

日本発の技術を世界へ!

Japan Technology Group, Inc.(JTG)は国際特許事務所の知財ビジネス部門として2003年に米国ペンシルバニア州フィラデルフィアで設立された。創業以来、「日本発の技術の価値を高め世界に送り出すこと」「日本と諸外国の間にある見えないコミュニケーション障壁を壊し、人的交流を図り、技術移転を促進すること」をミッションに活動している。これまでに、北海道大学、名古屋大学、奈良先端科学技術大学院大学、早稲田大学、東京理科大学など数多くの日本の大学と提携して、国際的な産学連携活動の支援をしている。

さらに定期的に米国東海岸で開催する日本の大学の最新技術を紹介する技術発表会も、昨年までで12回を数える。我々は、米国を拠点とする日系唯一の技術移転会社として、日本の大学の国際的な産学連携、技術移転の発展に貢献したいと考えている。

オープン・イノベーションに触れる

創業時は、日本では知財ビジネスという言葉もまだ一般的ではなく、JTGは日本の技術にアクセスしようとする欧米企業の代理人として活動することからスタートした。それはジョンソン&ジョンソン社、ファイザー社、ジェネラルミルズ社などグローバル企業の依頼を受け、彼らの技術ニーズに基づいて日本の大学や研究機関が持つ技術を探すという活動だった。このときの我々の役割は、企業の技術ニーズを聞き、それにあった技術を探し、その両者をつなぐことだった。

これらのグローバル企業は、我々のような知財仲介者を活用して、戦略的かつ効率的に必要な技術を探すという、オープン・イノベーション指向のアプローチをすでに実践していた。この経験を通して、「ニーズ指向」「スピード指向」「コネクト&デベロップ」というオープン・イノベーションの根幹となる考え方を学んだことが、JTGの事業コンセプトの確立につながったのである。


JTGの最大の特長は次に挙げる3つで、これらが強みである。

1. ニーズ・ドリブンである

JTGの技術移転活動は、グローバル企業の最新技術ニーズをいち早く入手することからスタートすること、つまり「ニーズ・ドリブン(ニーズ指向)」であることを特長としている。創業してから3年余りの活動の中心は、欧米を中心としたグローバル企業との関係構築だった。目的は、彼らの技術ニーズをいち早く知ることができるポジションを確立すること。それは、電子メールや電話でコンタクトすればすぐに答えてもらえるような人間関係をキーパーソンと築き、さらに、企業がニーズを開示しやすくするシステムを構築することである。

この結果、独自のデータベースシステムには、欧米を中心としたグローバル企業から発信された技術ニーズが常時800件超登録されており、いつでも最新の情報を日本の大学や企業に発信することができ、さらに、有望な技術シーズとのマッチングに活用している。

2. ネットワークを最大限に活用する

JTGはニーズを聞けるポジションの確立を目指した活動を通して、今では日本からではリーチが困難なグローバル企業、欧米のベンチャー企業、さらに主要な研究機関、大学、政府機関など、技術移転に関連するキーパーソン2,000名以上のネットワークを築くことに成功した。さらに、これらの独自ネットワークだけでなく、欧米の技術移転企業とのアライアンスにより、グローバルに広がる技術移転ネットワークは日々増殖を続けている。

3. 高度な専門性と国際性を提供する

国際的な知財の活用を実践するためには、知財における豊富な経験と高度な専門性が要求される。JTGが、特許事務所を母体として弁理士と弁護士が率いるという、米国の知財ビジネス企業の典型的な経営形態をとっているのはその要求に応えるためである。マーケティング、事業開発などのビジネス分野に豊富な経験と実績を持った国際技術移転のエキスパートが実務を担当し、日米特許弁護士、弁理士をはじめとする知財、国際法務の専門家がその活動をバックアップするという強固な専門性に基づくサービスを提供している。

さらに、米国フィラデルフィア本社、東京支社併せて総勢40名のグループ・スタッフは全員が日英バイリンガルであり、日本からのコミュニケーションはすべて日本語で対応できることも大きな強みだ。

なぜ米国では大学の技術移転が成功しているのか

大学の技術移転の成果に関しては、日米間で大きな格差があると言われている。過去4年間、米国の大学のライセンス収入トップを記録し、1年間のライセンス収入が200億円を超えるというニューヨーク大学の技術移転部門の責任者にその成功の秘訣(ひけつ)を聞く機会があった。その答えは、「情報」「人材」「お金」である。そして何より重要なのは、技術移転を成功に導く要素として挙げられた「情報」「人材」「お金」の3つの要素はいずれも大学の外にあり、それらを有効に活用できるネットワークを持つことが大学の技術移転部門の役割だということ。これが、たった16名というスタッフで上場企業並みのライセンス収入を稼ぎだす秘密だった。米国ではこれら3つの要素を提供し、大学の技術移転を支える専門家のネットワークが確立しており、そのネットワークを提供する知財仲介者がビジネスとして成り立っている。

今ある課題を解決する

日本の大学の特許に関する課題として、特許戦略の弱さが挙げられる。大学の特許は、重要技術への資金集中が行えないこと、知財ライセンス戦略に対する専門性が欠如している等の理由から、多くの場合、優秀な技術であったとしても1件しか特許出願がされず、さらに、特許出願しただけで、知財の取得に連動した適切な技術移転活動が実施されていないため、知財のバリューが不十分なケースがままある。

その結果、企業が求める知財と大学がつくり出す知財、そして知財を基に企業が考える事業化と大学が考える事業化のそれぞれの間にギャップが存在している。そして、そのギャップを埋めるために必要な機能を提供する仕組みがないことが、日本の大学の技術移転が大きく進展しない原因であると考える。

この状況を打破する為には、早期に、知財の専門性・ビジネス感覚・国際感覚・グローバルなネットワークを有する第三者として、我々のような民間の知財仲介者が、必要な資金と専門性を基に大学の知財管理、技術移転活動に関与する必要があると考えている。


JTGはこれからの10年間を見据えて、出願から特許ポートフォリオの構築、ニーズ指向に基づく技術移転活動、さらに、知財ファンドなどを活用した必要な資金の提供まで含めた、国際的な知財仲介者として総合的なサービスを提供していきたいと考えている。