2011年1月号
単発記事
「やりにくければ、やりやすくしよう」でできた「学術指導」の仕組み
顔写真

高橋 富男 Profile
(たかはし・とみお)

東北大学 高度イノベーション
博士人財育成センター 副センター長、
インターン推進室長

大学の産学連携の柱は共同研究、受託研究、奨学寄付金という3つの制度。国立大学が法人化し、知財に関する細かな定めが設けられた当時、技術指導、コンサルティングなど、3つの制度に適合しない社会貢献をどう位置付けるかという問題があった。東北大学は「学術指導」という仕組みを新設した。

新しいことをやるには制約が多過ぎる

平成16年4月からの国立大学法人化に伴い、大学知財の扱いと利益相反問題が大きくクローズアップされることとなった。個人帰属であった発明が一夜にして機関帰属となり、それまでは、なんとなく奨学寄付金で処理されてきた教員と企業との関係が、就業規則、職務発明規程、利益相反マネジメント綱領など、次々と制定される「決まり」によって細かく定められることになった。産学連携を熱心に推進してきた教員にとって、動きが取れなくなる事態も発生し、教員たちと知的財産部との間で大きな問題になった。  

当然のことながら、これらの規定類が「これをしてはいけない」「こうしなければいけない」式のルールであり、それまで自由で伸び伸びとやってきたことにきつい箍(たが)をはめられることになったためである。  

「やりやすい仕組みをつくろう」で生まれた新しい仕組み

産学連携の仕組みとして、「共同研究」「受託研究」「奨学寄付金」と3つの制度があった。教員が行った発明は「職務発明」とされ、その知的財産は「機関帰属」になったわけだが、技術指導、コンサルティングなど、これら3つの制度に適合しない産学連携もあり、その対価をどう扱うかという新しい問題が浮上した。このため、東北大学は、教員がやりやすい社会貢献の仕組みの検討を始めた。教員の研究・教育のための時間と透明性を確保するという視点もあった。  

当時聞こえてきた声として、「技術指導は兼業届けが必要で、教育・研究との時間配分に苦慮」「教え子が尋ねてきた際に技術的な議論がやりにくい。秘密保持の点や発明創出につながると処理が面倒」などであった。また、「大学は敷居が高く、気軽に相談に行きにくい」といった企業等からの声もあった。  

   

そこで、図1に示したように、手続きが簡単で、兼業ではなく本務で指導が可能な仕組みとして「学術指導」をつくり、平成17年度から運用を開始した(図2)。  

図1

図1 「学術指導」の概要



図2

図2 「学術指導」の仕組み

 

教員の皆さんからの評価も高く、表1のように件数、金額共に増加傾向が見られる。また、このシステムを利用している教員数も、当初は21人であったが、平成20年度は53人と倍増している。組織的連携での技術交流や、文系教員による地域イノベーション指導などにも利用されている。  

 

表1 「学術指導」の推移

図1
 

また、他大学でも、和歌山大学、東京工業大学、東京農工大学などが採用し実施されている。  

新しいことを始めると、従来からの仕組みだけでは処理しにくい事態も出てくることが多く、ふさわしい仕組みをつくることが必要となってくる。前例が無いなど、既存のルールに無理やり適合させて処理しようとする傾向が多いが、産学連携など大学の研究成果を社会で利活用することによりイノベーション創出につなげようとすれば、「制約」から「促進支援」へ転換して、まず「やりやすい仕組みづくり」を進めることが肝要である。