2012年10月号
巻頭言
顔写真

長島 徹 Profile
(ながしま・とおる)

公益社団法人経済同友会 副代表幹事
2011年度もの・ことづくり委員会 委員長


世界でビジネスに勝つための“ことづくり”人材の育成を

日本の製造業は、グローバルな競争の中で非常に厳しい状況にある。これには大きく2 つの側面があり、1 つは、企業を取り巻く六重苦と言われる他国に比べてグローバル競争に不利な事業環境である。もう1 つは、「技術で勝って事業で負ける」と指摘される事業そのものの問題であり、ここではこの点に絞って述べたい。

どうすれば事業でも勝てるのだろうか。その解決策は、“ことづくり”とそのための人材育成(“ひとづくり”)にあると考えている。まず、“ことづくり”とは、これまでの製造者視点での“ものづくり(ビジネスの入口論)”とは反対のマーケット側からの視点で、ものづくり・品質づくり・ビジネスづくり(ビジネスモデル・シナリオ・戦略・企画・デザイン・サービス)を見直すことであり、ビジネスの出口論である。この“ことづくり”を担う人材に求められるのは、市場を理解し、顧客経験とビジネスモデルの双方をデザインできる能力である。また、俯瞰的な視点で、市場の変化に対して臨機応変かつスピード感を持った対応ができる能力も必要であり、人を巻き込むリーダーシップも求められる。

しかし、“ことづくり”人材の育成は、その必要性が会社全体で共有されていないことや、挑戦や異分子を認めようとしない風土が存在していること等のため、容易ではない。

そこで経営者は、企業の持続的な発展のために世界でビジネスに勝って利益を確保すると共に、将来への投資として“ことづくり”人材育成、すなわち“ひとづくり”に強くコミットするべきである。「“ことづくり”の資質がある人材については、本来の強みを活かした育成・活用をすることが会社にとっての最大の貢献である」との強いメッセージをトップ自らが発信し、社員の意識を変革しなければならない。さらに、人材育成方針を明示する必要がある。具体的には、第1 に、組織風土の改革を行い、“ことづくり”人材が育ちやすい環境を整えることである。何かに挑戦することのリスクよりも、何もしないことによって生じるリスクの方が大きいことを認識させる必要がある。第2 に、資質のある人材を選出する仕組みをつくることである。資質・特性に関する評価項目についても、できるかぎり定量化するべきである。第3 に、資質のある人材に「型(フレームワーク)」の徹底的な教育を行い、能力の底上げを行うことである。基礎的な知識を幅広く身に付け、「型」を徹底的に学ばせ、学んだ「型」の実践を通じて無意識に活用できるレベルまで高めさせることが必要である。

以上により、日本の製造業のグローバル競争力が向上することを期待したい。