2014年9月号
単発記事
三重大学
県の政策と連動した地域産業界の海外展開支援
顔写真

西村 訓弘 Profile
(にしむら・のりひろ)

三重大学 副学長/
地域戦略センター長/
大学院医学系研究科 生命医科学専攻 教授

三重県と三重大学地域戦略センターが2年前に実施した調査で、台湾にも、国内外の大企業に技術・部品提供を行っている中堅企業が多く、三重県と類似していることが分かった。同大学は、双方のものづくり系企業が相互補完することで新たな製品を創造し、世界市場に展開できる可能性を県に提言。ここから三重の産学官と台湾の産学官との交流が始まった。

三重大学は、三重県内の唯一の国立大学であり、地域を熟知した総合大学として「地域が抱える根源的な課題を地域の自治体、産業界と共に解決する社会連携体制」の整備、強化を進めている。2011年度には、学長直轄の地域戦略センター(Regional Area Strategy Center:以下「RASC」)を設置し、RASCを「司令塔」とする「地域課題を解決する自治体向けの政策提言と政策実現に向けて本学が総力を挙げて取り組む体制(地域課題解決の三重方式)」を確立している*1。2013年度後半からは、「地域課題解決の三重方式」を深化させ、特に産学連携による効果を高めるために「地域自治体の産業振興政策と連動して行われる地域企業の活動を支援する機能」の強化を進めている。以下に、その具体的な事例として、地域企業による海外展開を県内の産学官が連携して切り開いている事例を紹介する。

三重県と台湾の産業連携の可能性

三重県地域に存在する中小企業の強みの一つとして、創業からの事業経験が長く、高い技術を持った中堅企業が多いことが挙げられる。三重県とRASCが2012年度に協力して実施した海外調査では、台湾にも技術力に優れ、国内外の大企業を相手に技術・部品提供を行っている中堅企業が多いことが明確となり、「ものづくり系の中堅企業」が集積している点で三重県と台湾の産業界が類似していることが浮き彫りとなった。このような両地域の背景分析を受け、RASCは「同じような経済環境下にある台湾と三重県の産業界が交流する必要性」を説き、「台湾と三重県のものづくり系企業がそれぞれ培ってきた技術基盤を相互補完することで新たな製品を創造し、世界市場に展開できる可能性」を三重県に提言した。

三重大学が三重県と連携して取り組んでいる台湾との産業間連携

台湾と三重県の産業界をつなぎ合わせるには、行政間の連携関係を構築すること、地域産業の特性を熟知したお互いの地域内大学(研究機関)の間の連携関係を構築することが有効である。台湾と三重県の産業連携では、ものづくり系の中堅企業がその主役となるが、それぞれの企業が持つネットワークには人的にも資金的にも限りがある。このため、それを補う意味でも、1)三重県と台湾の行政間で有効な関係(官官連携)が構築されていることが企業間連携を進める上での安心感と信頼感を与えることになり、2)企業連携のベストマッチの提案には両地域を代表する大学間(もしくは研究機関間)の連携(学学連携)が重要なプラットホームになり得る。このような両地域間の連携プラットホームを構築するために表1に示す取り組みを実施してきた。

表1 台湾と三重県の連携に向けた三重大学の取り組み

産学連携コンソーシアムによる台日産業連携推進オフィス(TJPO)訪問(2014年6月)

現在、台湾と三重県の地域間連携は次のステージへと移行している。三重大学では、本学が地域企業と行っている共同研究の中から、自治体の産業振興政策と連動させることで成長が期待できるものを抽出し、地域企業が抱える共通課題を行政、大学、企業が連携して解決し、成果の最大化を図ることに取り組んでいる。このような取り組みは、2段階の支援で実施しており、上位の支援では、地域企業が抱える共通課題を協力しながら解決する「共通課題の解決」を行い、並行して、共通課題の解決で得られる成果をおのおのの共同研究の実施に反映させる「個別課題の解決」を下層の支援としている。

このような2層構造の支援を、台湾と三重県の産業界の連携にも適応しており、三重大学が共同研究を行っている地域企業群との間で「産学連携コンソーシアム」を立ち上げ、「医学的根拠に基づく付加価値の高い新製品の創出」と「三重県が推進する地域間連携を活用した海外展開」を効果的に実現する産学官連携による「共通課題の解決」に取り組んでいる(図1)。

図1 地域自治体の政策と連動した産学連携活動による地域企業の海外展開支援

*1
地方大学が地域に必要な大学となるために 三重大学・地方大学シンクタンクの地域貢献(本誌2013年2月号)参照