2015年11月号
研究者リレーエッセイ
京大桂キャンパスを軸に産学官連携が進展
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平尾 一之 Profile
(ひらお・かずゆき)

京都大学大学院工学研究科 教授、ナノテクノロジーハブ拠点長


活発化する京都大学を中心にした産学官連携

図1の地図に示されているように、京都大学(以下「京大」)桂キャンパスは、京都駅から五条通りを経由して、西の方に位置している。この5th Avenueと呼ばれる通りに沿って、いろいろな中小ベンチャー企業があり、また、その周辺には株式会社村田製作所や株式会社堀場製作所、ローム株式会社、オムロン株式会社、株式会社島津製作所、日本電産株式会社(Nidec)、京セラ株式会社など、ベンチャー企業として創業したエレクトロニクスデバイスやセンサー関連の大企業が立地している。さらに数千人規模の研究者が集う京都リサーチパーク(KRP)もある。京大吉田キャンパスに比べて産学官連携を行うにはずいぶん恵まれていることになる。

図1 京都ハイテクベンチャーマップ

さらに、京大桂キャンパスに隣接して京大イノベーションパークができ、その敷地内に中小企業基盤整備機構が設置した京大桂ベンチャープラザ(VP)北館と南館や京大工学研究科イノベーションプラザもあり、多くの企業や国家プロジェクトの活動拠点となっている。まさに京大の研究室と入居ベンチャー企業が共同研究をするのにふさわしい場所となっている。また、京都市は京都市イノベーションセンター(図2)を開設し、先端加工分野でのプラットフォームを整備し、先端機器の利用をオープン化している。産学官連携を一層推進する目的で座学や実習の講座、セミナーなども頻繁に行い、人材育成にも注力している。

図2 京都市イノベーションセンター概要

図2に示すように、桂ベンチャープラザ内にはたくさんの優良ベンチャー企業が入居している。たとえば水素燃料電池や希土類磁石、テラヘルツなどを扱った企業など、非常に注目されている企業もいろいろある。私も京都市イノベーションセンター長として、これらの活動を、ホームページを作るなどして広く紹介している。

一方、京大本体も学内研究設備の共有化による先端微細加工の教育や研究拠点整備を推進してきている。特に京大吉田キャンパス内にある京大ナノテクノロジーハブ拠点ではオープンイノベーションプラットフォーム事業を展開している。ここでは、学内に限らず、学外や中小ベンチャー企業から大企業まで、すべての研究者や技術者に等しく共用設備の利用環境を提供している。本拠点は京大と共同研究契約を結ぶことなく共用設備を利用いただけるといった革新的なものである。図3に示すように、多くの最新の微細加工装置や微細構造解析装置を共用に供している。この事業の詳しい内容(利用方法、装置の仕様、利用料金など)についてはURL(http://www.mnhub.cpier.kyoto-u.ac.jp/)をご参照いただきたい。

図3 ナノテクノロジーハブ拠点

大学を「つながり」を生む場に

産学官連携の話に戻る。一昔前までの産学官連携では、大学側が「こういう面白いものを見つけました」と発表すると、興味を持った企業の人が研究員を連れて訪問してくるのではあるが、その話を聞いて帰るだけで、その後はほとんど共同研究には進展せず、もし実用化になりそうな技術であればその技術を持ち帰り、自分のところでやるというスタンスの企業が多々あった。私がそこで常に感じていたのは、「大学内あるいは街の中にオープンなイノベーションプラットフォームを形成し、常時、産学官がそこに集まって長期間にわたって実用化に向けた議論をしていかないと駄目だ」ということであった。おかげさまで京大では先端微細加工の分野で整備が進んできたと感じている。

皆が共通して使える装置を整備したプラットフォーム拠点がこれからもさまざまな分野でつくられていくことが私の希望である。そうした活動が技術の伝承をしていく上でも大切であろう。つまり、大学が産学官連携の場所を提供して「つながり」を産むことも重要と考えている。

比叡山の高僧、最澄の言葉「依身(えしん)より依所(えしょ)」を思い出す。

次回の執筆者は、東京大学大学院工学系研究科 教授 北森武彦氏です。