2016年12月号
特集 - 外国人留学生のキャリア支援
合同企業説明会「グローバルジョブフェア」で留学生の就職活動を支援

川上 尚恵 Profile
(かわかみ・なおえ)

神戸大学 国際教育総合センター 講師


朴 鍾祐 Profile
(ぱく・ちょんう)

神戸大学 国際教育総合センター 留学生教育部門 教授


留学形態の多様化

神戸大学(以下「本学」)では、2016年5月1日現在、1,196人の留学生を85の国と地域から受け入れている。内訳は、正規学生904人(学部生103人、大学院生801人)、非正規学生292人(学部生131人、大学院生161人)となっている。近年は協定校の拡大により交換留学生の数が増加傾向で、2008年度の69人から2014年度は130人と急増した。一方、学位を取得する正規学生も増えつつあり、英語コースやダブルディグリー*1など、就学形態が多様化してきている。神戸大学国際教育総合センター(以下「当センター」)では、留学形態や留学生のニーズの多様化を踏まえ、日本語の授業の提供をはじめ、就学支援、地域交流支援などをきめ細かく行っている。

留学生に対する就職支援開始の経緯と概要

本学には、日本での就職希望者を調査した正確な数字はないが、近年では140から150人の就職希望者がおり、これに2015年度卒業・修了留学生の日本国内の就職者数67人を合わせると約4割の就職率となる。今後、就職希望者に向けた支援はさらに充実させる余地がある。現在、当センターでは、総合日本語コースにビジネス日本語科目を設けており、ビジネスの場面で必要とされる日本語能力の向上を目指した講義を提供している。また、約10年前から合同企業説明会「グローバルジョブフェア」を開催し、留学生の就職活動支援の中心を担ってきた(写真1)。それには、次のような経緯がある。

写真1  グローバルジョブフェア


2002年より、外国人の卒業・修了留学生(以下「卒業留学生」)との交流を図る「留学生ホームカミングデイ」を年に1回開催。2007年には、在学留学生と卒業留学生を結ぶきっかけとして、日本で働くことをテーマに、卒業留学生の勤務している企業10社が参加し、好評を得た。そこから「就職」を独立したテーマで取り上げ、2008年には「グローバルキャリアセミナー」(2015年より「グローバルジョブフェア」と改称)を開催することとなった。このような経緯から、留学生のニーズをくみ、全学のキャリアセンター主導ではなく、当センターの前身である留学生センター*2と留学生課*3が協力した合同企業説明会「グローバルジョブフェア」を開催することになった。

グローバルジョブフェアについて

グローバルジョブフェアでは、留学生採用を希望する企業がブースを設けており、留学生は企業担当者から直接話を聞くことで企業への理解を深めることができる。ことしは4月27日に開催し、30の企業、5団体に対し、本学の留学生106人が参加した(写真2)。

写真2 2016年度グローバルジョブフェアブース


今回は参加企業の拡大を目指し、例年参加する企業以外に、本学の卒業留学生の採用実績がある企業や、本学のキャリアサポートセンターおよび一般社団法人神戸大学工学振興会(KTC)と連携する企業に向けて積極的に案内を行った。その結果、新規の参加企業が半分程度を占めるまでに増えた。

一方で「フェアの開催時期が遅い」という声や、留学生の採用や社内での外国人社員の活用の見直しを行うといった理由から、例年参加していた企業の多くがグローバルジョブフェア参加に消極的でもあった。留学生の就職活動が日本人学生と比較して遅めになっていたり、特にここ数年は就職活動開始の時期が頻繁に変更されるため、スケジュールに合わせた適切な就職支援が難しくなっている。

留学生採用・外国人社員活用の見直し理由を挙げた企業は、これまでもグローバルジョブフェアに積極的に参加し、実際に留学生採用の実績があったが、さらに戦略的に採用を見直すという方針を設けたようである。早くから留学生採用に動いてきた企業は試行的時期を終え、さらなる効果的な採用に向け、見直しが始まっていると思われる。

教育的介入

グローバルジョブフェアは、企業と留学生がじかに顔を合わせ、特徴や働き方、ニーズを知ることができるが、複数の企業と留学生が一堂に会するため、個別のマッチングとは異なり、きめ細かな対応は難しい。また、日本での就職を希望し、グローバルジョブフェアに来る留学生の中には、日本の就職活動について理解不足の者もいる。日本企業についても、世界的あるいは自国での知名度の高い企業を知っているのみで、具体的な活動や業務についてほとんど知らないという者もいる。留学生が自身の長所や長期的なキャリアを見据えながら、日本の企業文化を理解し、就職活動に臨む姿勢を築くためには、留学生の人的成長を促す教育的介入を行うことが必要である。そこで当センターでは、グローバルジョブフェアを効果的に活用し、留学生の就職につなげるため、就活スケジュールに合わせた教育的介入を意図した取り組みを実施している。それが「グローバルキャリアセミナー」と題した3回のセミナーの開催である。

2015年度の実施に即して、各セミナーの内容を具体的に見てみると、1回目の「就職準備のための基礎知識を学ぶ」(6月5日)では、スタートアップ講座として、留学生に向けた日本国内の就職活動の基礎に始まり、本学のキャリアアドバイザーにより、留学生からの相談事例から日本での就職活動に留意することを具体的に学んだ。2回目の「日本企業が求める人材を学ぶ」(12月4日)では、業界研究とそれぞれの企業が求める人材像を学ぶという目的を持ち、業界研究についての講義の後、5社の企業からそれぞれの業界の特徴と求める人材像について話をしていただいた。3回目の「就職活動のための実践を学ぶ」(1月29日)では、内定を取った先輩留学生の体験談を聞くことと、応募書類の書き方と面接の受け方を学ぶといった実践性が高い内容とした。

以上のようなセミナーを通して、就職活動のスケジュールに合わせ、各時期において必要な知識と実践力を養成するよう努めている。そして最終段階として、実際に複数の企業とじかに話ができるグローバルジョブフェアへとつなげている。このような教育的介入をすることにより、グローバルジョブフェアを「説明会」以上のマッチングの場としても活用することを意識している。

キャリアセンターとの連携

本学には、就職に関する活動をする部署として、全学のキャリアセンターがあり、そこでは日本人学生の就職支援と併せて、当センターと協力し、留学生支援も行っている。このキャリアセンターの東京オフィスが2013年に留学生の就職情報をメールで配信する「ヘルプデスク」を開設した。これは登録している留学生に企業の採用情報を配信するもので、約70人が登録している。また、キャリアセンターと連携している神戸大学生活協同組合では、2015年度より就活専用アプリ「神大就活ナビ」の運用を開始しており、留学生にも広く利用されている。

全学的横断の協力体制で

グローバルキャリアセミナーからジョブフェアへと続く流れは、教育的効果を考えた一連の就職支援だが、実際には、参加する留学生は流動的であり、セミナー1回のみの参加者やジョブフェアのみの参加者も見受けられ、想定した効果が得られないという課題があった。そこで、2016年度からグローバルキャリアセミナーを発展的に解消し、10月からの後期において隔週計8回の講座を登録制で実施することとした。内容は、これまでのセミナーで扱ったものに加え、企業で働く外国人社員の体験談を聞くことや、実践的な活動を多く取り入れることにした。

大学における留学生就職支援の課題として、経済産業省の「アジア人財資金構想」では四つの課題を挙げているが、その中の一つに学内関係部署との連携不足がある**1。国内の大学を見渡すと、留学生教育を行うセンターや、学部・大学院、キャリアセンターにおいて、留学生に対する就職支援をそれぞれが行っている、あるいは日本人学生に対する支援と同様の支援で完結している場合が多くある。本学も同じような状況であるが、当センターでは、2015年度に留学生就職支援を行っている部署に広くヒアリング調査を行い、支援の現状を把握し、当センターが行う留学生就職支援活動への参加と協力体制の構築について意見交換を行った。今後は、全学的横断で協力体制を整え、個々の留学生の状況に合ったきめ細かい支援を行っていくことを目指している。

●参考文献

**1
アジア人財資金構想プロジェクトサポートセンター. “教育機関のための外国人留学生就職支援ガイド”. 経済産業省.
http://www.meti.go.jp/policy/asia_jinzai_shikin/supportguide.pdf. (accessed 2016-12-15).

*1
中央教育審議会大学分科会大学のグローバル化に関するワーキング・グループでは、ダブル・ディグリー・プログラムを、「複数の連携する大学間において、各大学が開設した同じ学位レベルの教育プログラムを、学生が修了し、各大学の卒業要件を満たした際に、各大学がそれぞれ当該学生に対し学位を授与するもの。」と定義している。(文部科学省HP中央教育審議会大学分科会大学のグローバル化に関するワーキング・グループ「我が国の大学と外国の大学間におけるジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリー等国際共同学位プログラム構築に関するガイドライン」)(平成26年11月14日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/03/23/1353908.pdf

*2
2016年4月に国際教育総合センターに改組

*3
2015年4月に国際交流課に改組