2018年3月号
視点

産学連携にかかる広報

知的財産(知財)業務と並行して、昨年度より産学連携の広報業務を担うことになった。広報業務は経験もなく重荷に感じたが、ここでやらなければ一生やらないだろうと思い、腹をくくった。まずは所属する機関のウェブサイトに着手したのだが、更新されていない情報が満載であり、リニューアルは苦難の道となることが容易に分かった。その道程は割愛するが、約3カ月を要しリニューアルに至った。

ウェブサイトを運営する中で、最近、業務上のメリットが感じられるようになった。1点目は、共同研究や知財取り扱いに関する学内外からの問い合せに対して、URLを示せばご理解いただける機会が増え、コーディネータの業務負担を軽減できたことである。また、掲載情報が共通認識となり得るため、コーディネータから情報を出す際のばらつきを抑えることにもつながった。2点目は、アクセス解析を行うことにより、どこの国・地域の人が何に興味を持っているのか把握できるようになったことである。地方大学の産学連携機関のウェブサイトにたどり着いた目的を垣間見ることができ、どこに重点を置くべきかのヒントになっている。

産学連携人材を確保し難い地方大学こそ、ウェブを使った広報戦略を率先して検討する必要があるように思う。

(大西由香 静岡大学 イノベーション社会連携推進機構 知的財産管理室
室長、准教授)

独自ファンドから戦略が垣間見える?

大学等が行う学術研究を事業化するための資金的な支援としてギャップファンド(GF)と呼ばれる施策がある。その名の通り基礎研究、製品開発、事業化、産業化といったフェーズ間のギャップを埋めるための資金を指す。いわゆる競争的資金の中にも広義のGFと呼べる制度は存在するが、米国などでは特に基礎研究と製品開発の間を埋めるために比較的少額の資金を研究者に配分するもので、大学の自己資金に財団などからの出捐(しゅつえん)を加えて運用するものを指すことが多い。なお、昨今では大学系のベンチャーファンドが話題に上ることも多いが、GFは投資収益ではなく技術移転の促進を主な目的とする点で異なっている。

近年では日本においてもGFを運用している大学は珍しくないし、大都市以外に立地する中・小規模大学においては産学連携と地域連携の境界領域を対象とする支援策を持つ大学もある。こうした大学独自のファンドは組織戦略が垣間見えるという意味において非常に興味深い活動である。一方、幾つかの既存調査がなされてはいるものの組織外からは実態が見えにくい活動でもある。有効性の高い取り組みを共有する情報源や機会が増えることに期待したい。

(前波晴彦 鳥取大学 地域価値創造研究教育機構 准教授)

編集後記

新年度に小誌が担うべき記事の方向性が、外部の有識者を交え議論される。その大きな特色は三つだろう。一つ目はSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)。国連総会で採択された気候変動や水保全、環境対策など17のグローバル目標と169のターゲットにも留意する必要がある。科学技術、ビジネス、社会イノベーションによる価値創造には、このテーマが重要となりそうだ。二つ目として、組織的産学連携はますます求められそうだ。これは大学組織と企業組織という構図と、大学が分野別ではなくその壁を超えた組織力でという意味も込められている。そして三つ目に、近づく東京オリンピック・パラリンピックを契機とした取り組みだ。

(本誌編集長 山口 泰博)