2018年4月号
特集 - 指定難病に立ち向かう
難病入門 
難病と指定難病と障害、その違い

山口 泰博 Profile
(やまぐち・やすひろ)

特定非営利活動法人 川口市障害難病団体協議会 理事/本誌編集長


一般的に難病の患者数といえば「指定難病」の患者数で、難病患者数とは異なる。難病といったとき、単に名前のとおり「治りにくい病気」と範囲を勝手に判断してしまうという理解不足による場合が多い。ここでは難病とは、指定難病とは何なのか、さらに似ているようで異なる、難病と障害の違いを知ることで、対処のヒントも見えてくる。

患者数は18万人または人口の0.142%未満

厚生労働省は、「発症の機構が明らかでない」、「治療方法が確立していない」、「希少な疾病である」、「長期の療養が必要である」という要件を満たす疾患を「難病」と位置付けている。さらに難病のうち、「患者数がわが国で一定数(現在の基準18万人・人口の0.142%未満)に達しない」、「客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している」という要件を満たす疾患を「指定難病」と位置付け、重症患者には医療費の助成が行われている。

指定難病の要件を満たしているかは、厚労省に設置された厚生科学審議会・疾病対策部会の下部組織である「指定難病検討委員会」において、専門家によって判断される。「平成29年度第1回厚生科学審議会疾病対策部会」では、これまでに2015年1月実施分で110疾患、同年7月に196疾患、17年4月に24疾患、同年11月で1疾患が「指定難病」の要件を満たすと判断され331疾患の重症者には医療費の助成が行われる。

図1 障害者手帳に該当する難病患者の証し指定難病受給者証

難病政策の経緯

日本では1965年ごろから、下痢や腹痛が続いた後、足の感覚がなくなったりしびれたりする症状を訴える患者が現れた。目が見えにくくなったり、足が麻痺(まひ)して歩けなくなる人も多く原因不明の奇病と社会問題にもなった時期があった。スモン(亜急性脊髄視神経症)という病気だ。

55年ごろから確認され始めたスモンは、67~68年ごろに大量発病した。当初原因不明とされていたが、後の研究により整腸剤キノホルムによる薬害が原因と判明。それら一連の騒動が契機となり「難病」という言葉が世間に広がることになった。72年には政府によって難病対策要綱が策定され、難病は「原因不明、治療方針未確定であり、かつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病」、「経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に等しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」と定義されることになる。その対策は、「調査研究の推進」、「医療施設の整備」、「医療費の自己負担の解消」の三つが挙げられ、病因と病態の解明研究や診療整備、医療費の公費負担を目指した。

当初の調査研究の対象は、先のスモンに加えベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、再生不良性貧血、多発性硬化症、難治性肝炎の8疾患だったが、医療費助成の対象としてスタートしたのはスモン以下の四つである。

平成の難病大改革 3年で56から331疾患へ

その後、研究対象とする疾患数は増え続け、医療費助成の対象疾患は「診断基準が一応確立し、難治度や重症度が高く、患者数が比較的少ないために公費負担の方法を取らないと原因の究明、治療法の開発などに困難をきたす恐れのある疾患」として、56疾患が特定疾患治療研究事業(医療費助成事業)の対象となった。その後も対象患者数は増加の一途をたどり、2011年度では、対象患者数がおよそ78万人に激増。難治性疾患克服研究事業(研究費助成事業)の総予算が、およそ100億円にまで増額したが、特定疾患治療研究事業(医療費助成事業)予算はさらに必要となり、総計でおよそ400億円を超えた。難病医療費助成は、難病研究の4倍にも上った。

近年の国の財政悪化に伴って、この事業の実施主体である都道府県の超過負担も発生し問題が顕在化した。そのため、14年5月23日に、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律として「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が成立し、翌15年1月1日に施行。医療費における治療費の公費負担分は、都道府県と国の双方が半分ずつ負担することが明記され、56あった特定医療疾患は、指定難病と名を変え、疾患数も徐々に追加され3年間で18年3月現在、331疾患にまで拡大した。

難病と指定難病の違い

難病は二つに分類され、一つは漢字が意味するように、治療方法が確立されていない病気で、二つ目は厚生労働省が認可する指定難病を指す。

難病の定義 四つの条件が必要

①発病の機構が明らかでない

②治療方法が確立していない

③希少な疾病

④長期の療養を必要とするもの

指定難病の定義は四つに加えさらに2条件が加わる

難病法に基づき医療費助成の対象とする疾患が、新たに指定難病と呼ばれるようになった。

⑤患者数が一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと

⑥客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立していること


すなわち指定難病は、難病の中でも患者数が一定数を超えず、しかも客観的な診断基準がそろっていること、さらに重症度分類で一定程度以上であることが要件として必要となり、特定医療疾患と呼ばれることもある。

これまで、日本のオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の定義は、患者数5万人以下と1993年の薬事法(現薬機法)でうたわれていたことから、難病といえば、何となくではあるが5万人以下という考え方があった。しかし難病法に人口の約0.1%程度とされたことでその患者数も明確に定義された。

指定難病は、対象となる患者が少なくマーケットが小さいことから、開発メリットがないなど、治療法の研究や創薬分野での製薬会社からは敬遠されてきた。しかし、国が総合的な難病対策を実施することによって、初めて希少難病の治療法の開発にも光が当てられることになった。

表1 患者数が多い指定難病上位50疾患


指定難病受給者証を持つ者の総計が患者数

医療費の助成対象疾患でも、軽傷から中等症の中で医療費の公的負担を得られない(指定難病受給者証を持っていない)患者は、厳密にいえば指定難病に含まれない。この患者数は、指定難病受給者証を持つ者の総数で、医師にそう言われたとか、医療費の公費負担を得られるステージであっても申請していなければその数は含まれない。また指定難病受給者証は待っていても得られるものでなく、指定医療機関指定医師の診断と住民票のある都道府県が認定して、自発的に申請して初めて受けられる。

2016年度末現在の指定難病患者総数は、986,071人(平成28年度衛生行政報告例)に上る。最少は患者数1人のシュワルツ・ヤンペル症候群、ペリー症候群、有馬症候群、アペール症候群、鰓耳腎症候群、第14番染色体父親性ダイソミー症候群、高チロシン血症1型、乳幼児肝巨大血管腫から、上は潰瘍性大腸炎167,872人、パーキンソン病127,347人、全身性エリテマトーデス63,792人だ。

18年1月1日現在の総人口概算値は、1億2659万人だから、潰瘍性大腸炎とパーキンソン病は、総人口の0.1%を超えて、今では希少とはいえずポピュラーな病気という考え方もあるので、指定難病からの除外も近い。つまり、約30万人弱の指定難病患者がごっそり減ることになるわけだ。

56から年々増やし331疾患という数字だけを捉えると、そんなに増やして医療費の公費負担の財布はパンクしないのかと思われるかもしれないが、そもそも増えた分の患者数は一つ一つの疾患に対する患者数の数人から数百人程度で、本当の意味で希少なのだ。その代わり上位2疾患が減ることで医療負担が軽減されるというからくりを知っておくべきである。また新規に加わった疾患もあればこれまで指定難病だったが除外された疾患もある。

指定難病と障害の違いと社会制度

海外には難病と障害という概念はなく、このような区分けは日本独特だ。そのため、難病と障害は何が違うのかという声をよく聞く。根底にあるのは、同じハンディキャップがあるにもかかわらず障害の多くは社会的保護政策や公共的に優遇され、指定難病にはほとんどないことへの不満からである。その答えは簡単で、それぞれの法律が異なるからである。

指定難病は、難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)にのっとり、障害は障害者基本法をベースに、障害者雇用促進法、障害者福祉法、障害者自立支援法、発達障害者支援法、 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律、身体障害者補助犬法、障害者の雇用の促進等に関する法律など障害の種類や年齢や目的に応じ実にきめ細かく保護政策が決められている。列挙した障害に関する法律はこれでも一部にすぎない。

指定難病の社会制度は大きく分ければ以下三つ。

1)指定難病受給者証

医療費の受給者証を申請し受理されると、生活保護世帯から、世帯収入の金額に応じ、月額医療費の上限が、0から30,000円となること。

2)難開金(難治性疾患患者雇用開発助成金)

難病患者を雇用することで、雇用主に対し6カ月ごとに2~3回にわたって助成金を得られ、支給対象期中に対象労働者に対して支払った賃金に助成率を乗じた額を支給される。拘束力や罰則もなく、中には社会的ポーズをとるために最高でも1年から1年半だけ雇用し、助成金を得た後、雇用を継続しない事業者もいる。手続きの「難解」さと煩雑さと事業者にとってのメリットが少ない、または障害者を雇用した方がメリットがあるなどの理由からかあまり浸透していない。

3)見舞金(難病疾患療養費補助金制度)

一部の市区町村では、3カ月や半年ごとに、数千円から1万円ほどの見舞金が支給されていたが、難病法改正で指定難病数が増えていることなどから廃止を決めた自治体も多い。

一方、障害者への理解と優遇は指定難病と比べても幅広く浸透する。

障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)では、障害者雇用率制度が設けられ、常用労働者数が45.5人以上(2021年度からは43.5人以上)の一般企業は、その常用労働者数の法定雇用率2.2%以上の障害者を雇用しなければならない。以下は、事業主ごとの法定雇用率の推移と今後を示した。

表2 平成30年4月1日からの法定雇用率


近年では、特例子会社を設立し積極的に障害者採用に前向きな姿勢が見られるようになった。特例子会社とは、事業主が障害者雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、要件を満たしていると厚生労働大臣の認定を受けた場合、この子会社の労働者を親会社の労働者と見なし親会社が雇用する労働者数に加えることができる制度だ。

障害者に対する社会的制度や配慮の一部は下記のとおり。

・障害者年金、特別障害者手当・特別児童扶養手当・障害児福祉手当、所得税、住民税、自動車税、自動車運転免許取得費補助など

・障害者枠採用、点字・点字ブロック、補助犬

・公共運賃(鉄道、バス、タクシ-、航空会社、有料道路など)、公共施設(美術館、博物館、動物園など)の割引

・NHK放送受信料減免、携帯電話会社の割引

・障害者用トイレ、障害者優先席、パラリンピック

・補装具等の交付、修理(車いす、義肢、装具その他)

・タバコ販売優先営業権


など多数。

障害の分類と難病との関係

障害者といえばどんなイメージを浮かべるだろうか。車いす、手や足、目や耳が不自由。精神的な障害、一般的にはこの程度の理解ではないだろうか。

障害は大きく分類することで分かりやすくなる。身体障害、知的障害、精神障害の三つに大別され、身体障害は、①目、②耳、③言葉、④手足・からだ、そして⑤心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこう、直腸・小腸・エイズなどの内部と障害の場所や部位ごとに五つに分類される。

図2 障害の分類

内部障害は、外見から分かりにくくその存在すら知られていないことが多い。

2012年10月から東京都と都営地下鉄が中心となって、ヘルプマーク活動を推進した。ヘルプマークの配布や優先席へのステッカー標示などで内部障害や難病を含め、義足や人工関節使用者、内部障害や難病患者、妊娠初期など外見から分からなくても援助や配慮を必要としている人が、配慮を必要としていることを知ってもらえるよう、援助を受けやすくなるように作成したものだ。それまで、各都道府県はばらばらにマークを決めていたが、それでは越境するたびに使えなくなると不便さが疑問視されていた。しかしヘルプマーク運動は全国へ波及し、複数の都道府県でもヘルプマークを活用する動きが広がっている。

また、数年前から電車の優先席を示すシートにお年寄り、体の不自由な方、乳幼児をお連れの方、妊娠している方に加え「内部障害のある方」と表記が増えるなど、少しずつだが難病と内部障害への啓蒙(けいもう)も広がりつつある。

図3 難病と指定難病と障害の関係性

当事者と非当事者の関係性

難病や障害は、乳幼児期にかかるものを除けば、「なぜ俺が、私が」となる。誰にでも等しく訪れるかもしれない問題だ。しかし人というのはその立場にならなければ理解するのは困難で、その近親者であっても同じだ。一般的には、外見で分かればあえて当事者と接近しないようにする。もし外見で分かりにくい当事者が「難病患者です」「障害者です」というと、ほぼ全ての人が、瞬時に真顔になり一瞬の間をもって、言葉を探し対処の仕方を巡らせる。対応の仕方が分からないことがほとんどだが、一歩間違えれば“炎上”するかもしれないとの恐れからくるからかもしれない。インターネットが広がった今、言葉を間違えれば瞬く間に攻撃される。行き過ぎた攻撃は別として、そのような活動家の方たちの努力によって、法整備も進んできたのも確かだ。当事者や団体では過剰反応が非当事者との距離を引き離し、社会的弱者不要論といった考え方があることも事実だろう。

先に書いてきた、難病と指定難病、そして障害の基本的分類を少しだけ知ることで、当事者と非当事者との距離が今以上に縮まることで、よりよい社会へと変わるのではないだろうか。