2018年5月号
単発記事
高精度で耐久性に優れためっき技術の確立
顔写真

椎名 啓祐 Profile
(しいな・けいすけ)

株式会社コーア 代表取締役社長



目標は海外進出

株式会社コーア(以下「当社」)は1991(平成3)年より、切削とめっき一貫工場としてスタート。技術と信頼と創造を基本理念とし、世界に通用するオンリー・ワン企業が目標である。技術と開発力で「当社にしかできない」をモットーに、国内のみならずアジアを中心とした海外展開を目指している。

戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)の活用

現在、デジタルカメラや医療機器などに搭載される摺動(しゅうどう)部品などの耐久性を向上させるため、これら部品の表面に無電解ニッケルめっきや物理蒸着法(PVD)、無電解ニッケル−SiC(炭化ケイ素)複合めっき、硬質クロムめっきなどの処理が行われている。

しかし、これら従来の表面処理の特徴は一長一短である。特性を挙げると、例えば無電解ニッケルめっきは、PVDに比べ耐久性に劣る。PVDは耐久性に優れるが、アスペクト比の高い深穴への処理は困難である。無電解ニッケル−SiC複合めっきは、膜厚の均一性に優れアスペクト比の高い深穴への処理が可能で、PVDと同等の皮膜硬度である。しかし、膜厚制御が難しく、液寿命が短いといった問題があるほか、特定有害物質である鉛を安定剤として使用せねばならない。さらに、硬質クロムめっきは、低電部の付き回りが悪く膜厚精度が劣る。すなわち、従来の表面処理技術では、耐久性、膜厚精度、高アスペクト比の部品への対応、環境負荷といった昨今の川下製造事業者の要求を満たすことは難しい状況にある。このような摺動部品の表面処理に関して、無電解ニッケル−SiC複合めっき技術を基礎とし、摺動部品の高機能化を可能とする環境負荷低減・高耐久複合めっき技術の新規開発することを目的として、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)を活用する運びとなった。

図1 摺動部品の高機能化を実現


研究機関や大学との連携による取り組み

これまでも、大学などと共同研究の経験はある。その都度、新たな経験をしてきた。この度の共同研究は以前開発しためっき液に、さらにCNT(カーボンナノチューブ)を追加するという展開の開発であった。添加方法にも技術が必要であり、簡単なようで簡単ではないのが現実であった。めっき液中の粒子を均一に分散させ、めっき皮膜に粒子を均一に成膜させることは、大変困難であった。

関東学院大学材料・表面工学研究所からは、めっき液開発の主軸である、組成成分と調製法の確立、さらには熱処理方法の確立、評価試験方法の選択などの開発全般の指導を受けた。地方独立行政法人青森県産業技術センターは、評価方法の一つである表面観察に関するアドバイザーであった。ほかにも、材料物性の基本知識に関するアドバイスやめっき製品に関するアドバイスを受けた。また、事業化支援も大変重要であった。開発を認めてもらうためには、事務処理のハードルも高い。提出書類の作成方法や根拠資料の添付、あらゆることへの対応が必要となる。さまざまな協力で事業を完了することができた。3件の特許出願と、「あおもり産学官金連携イノベーションアワード2017」でイノベーション優秀賞を受賞できたのは、各機関との連携による取り組み結果だと思われる。これらの経験により、社内の基準がレベルアップすることができれば喜ばしいことである。

図2 事業体制


研究開発ノウハウの構築経緯と今後の展望

本事業を活用したことによる成果は「高精度で耐久性に優れためっき技術の確立」に加え、研究開発ノウハウの習得であったと思う。無電解ニッケル−SiC−CNTの複合めっき液を開発し、組成成分と調製法の確立、熱処理方法の確立、評価試験方法も習得できた。めっき液の開発自体大きな成果ではあるが、他のめっき液の開発に応用できるノウハウの習得は、今後のわれわれにとって大きな財産となった。

めっき液の組成成分と調製法の確立では、めっき後のめっき液中から減少した薬品の補給と調整の結果を基に補給を行った場合の共析率の確認、種類の異なるCNTでの比較検討、熱処理方法の条件設定まで行うことができた。また、めっき膜厚制御方法の確立により、高アスペクト比の深穴に対して安定した膜厚の均一性を実現できた。

図3 SiC/CNT添加によるめっき被膜状態

物理的にはめっき皮膜硬度評価に関して、マイクロビッカース硬度計を使用することにより、めっき皮膜と硬度の関係の明瞭化が可能となった。さらに摺動性と摩耗性は、ボールオンディスク型摺動性試験機、テーバー型摩耗試験機、往復型摺動摩耗試験機、荷重変動型摩擦摩耗試験機にて評価し、3D測定レーザー顕微鏡観察でめっき表面の粗さの測定、併せて金属顕微鏡で表面観察をした等、根拠評価を自社で行える強みも身に付けた。このことは、技術習得だけではなく理論の応用も十分に可能であり、さらなる付加価値めっきの開発につなげていけるのである。

今後は新たなめっき液開発も進め、当社の主力業務である部品加工とは異なる、消費者向けや異業種向けの業務用製品の開発や製造、販売も、近い将来手掛けていきたいと、目標として掲げている。